巨人の2軍ウォッチャー必読!「若い力を伸ばす読売巨人軍の補強と育成力」(大森剛)-その1

スカウトとしては坂本を発掘し,現在は,巨人の育成部ディレクターという肩書きの大森さんの本というので購入しました.巨人の2軍選手に興味があって,舎人さん茶柱さんのレポートを楽しみにしている人にとっては必読の本だと思います.また,最近の巨人のスカウティングや育成能力に注目している人にとっても面白い本だと思います.

タイトルには「補強と育成力」とありますが,話の内容はほとんど「育成」の話です.「補強」は,毎年優勝することが期待されている巨人にあっては,「補強と育成の両方が必要」というニュアンスで出てくるだけです.

 大森さんは,ドラ1で巨人に入ったものの,あまり活躍できずに引退し,その後フロントに入った人で,経歴としては,MLBのアスレチックスの名物GM:ビリービーンに似ている人ですね.この本の中でも,自分の現役時代の失敗を頭において,選手へ期待と愛情を注ぐ姿が描かれています.

前半はスカウト時代の話が主です.現在の巨人のスカウティングの方法が詳しく書かれています.MLBへ研修にいって学んだことも考慮して,現在は,選手の能力のすべてが数値化されていること,それには,闘争心や積極性といった性格に関することも含まれていること,選手の絞り込みの段階では複数のスカウトが一人の選手をみて,評価を客観化しようとしていること等が書かれています.他方,この数値評価に重点をおきつつも,「数値で見えない部分」も重要視していること,第1印象が非常に重要なこと,その例として高校1年の時の坂本に惚れ込んだ時のことを上げています.また,坂本との比較例として,自分が選手の時,当時の長嶋監督に,「君はね,シルエットがね,ちょっとピンと来ないんだよ.」と言われたことをあげています.このときは,この「シルエット」の意味がよくわからなかったけれど,スカウトをするようになってわかるようになったとも書いています.

 この坂本の話は,清武さんがGM時代にインタビューでも同様の事を言っていました.「私は,すべてを数値化して評価したいのだが,それだと(アマチュア時代の)坂本の評価は高くない.大森は,「あれほど楽しそうに練習する選手はいない」と言って僕らを説得した・・」というような趣旨だったと思います.この本の中でも,「シルエットがいい」とか「雰囲気がいい」とかスカウト会議で主張してもなかなか理解されず,最後は「(お前の)クビがかかっているぞ!」とまで言われて,「大丈夫です」と答えて,ようやく,(当時の高校生内野手評価NO1の)堂上選手の外れ1位として坂本が認められたとのことでした.

 その坂本が,高卒1年目の2007年のシーズンの終盤に1軍にあげられ,中日との首位攻防戦で延長戦で代打に出て,ポテンヒットながら決勝打を放って(それが,坂本のプロ初安打初打点)となり,その後の彼の方向が決まりました.他方,大森さんは,プロ1年目でサヨナラのチャンスに代打で打席にたち,左中間へすばらしい当たりを放ったものの,外野手に好捕されてヒーローになり損ねました.あれが抜けていたら自分の人生は変わっていただろうと大森さんは書いています(私も,この場面はテレビで生で見ていたから覚えています.大森さんにとっては運命の分かれ目でしたね.)
 坂本と自分を比較して,「あそこでポテンヒットを打てるのも坂本の天性の華,スターの素養だ」と書いています.この心境に到るまで,大森さんは悩み抜いたと思いますけどね・・・

 さて,現在の巨人のスカウティングは,選手の能力をすべて数値化して行われているが,それだけではなく,+αについても考慮はされている.将来は,その「+α」についても数値化しようとしているというのが,この本の前半部分の概要のように思えました.長くなったので,続きは後日と言うことで・・
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