イップス

田口壮選手は僕が尊敬するプロ野球選手の一人です。

関西学院大学時代は名ショートとして鳴らした田口選手でしたが、オリックスに入団して間もなくイップスにかかってしまい、送球ができなくなってしまったことがあるそうです。

そして田口選手はアメリカに野球留学してからイップスを克服するきっかけを掴み、帰国後外野へのコンバートを経て名選手に成長されたことは皆様が知っておられる通りであります。

イップスは心理的な作用が起こしてしまう現象だと理解していいと思います。

今日もちょっと非野球ネタになりますが、お付き合い頂いてよろしいでしょうか………。


専門的な勉強をしたことがないので間違ったことを書けば恐縮だが…「場面緘黙症」という心の状態を持ちながら生きておられる人がおられるそうだ。

僕の友人にも、「場面緘黙症」と生きておられるのではないかという方がおられる。

彼は、幼い頃に叔父さんが家に遊びに来られた時のやりとりが原因で、知らない人や苦手な人と話すこと、そして大勢の人の前で話すことができなくなってしまったと打ち明けてくれた。

彼は物静かで天体写真を撮るのが得意な優しい人だった。

彼の書く文章は論理性が高く、かつ美しい。

彼の撮る写真や、書いた文章を見て、僕は彼の感受性の半分でも自分にあれば…と何度も思った。

しかし「場面緘黙症」と思われる状態を持っておられるため、高校にも通えず、大検合格を経て入学された大学も中退してしまった。

彼は鋭過ぎる感受性とともに人より傷つきやすい心を持って生まれてきたのかも知れない。

と、すれば叔父さんとの一件がなくても「場面緘黙症」を持つことになったかも知れない。

しかし、彼のような優しくて才能溢れる人が、限られた人としか話せないという状態ゆえに苦しみを感じているのだとしたら残念の至りである。

さて、今度は自分のことを書くが、僕は最近、心の状態が良いのか、今までになく昔のことを冷静に振り返れるようになっていると思う。

おそらくこの約一年は成人してから一番気持ちが安定していると思う。

一昨日、図書館から自宅に帰る時、突然ある記憶が頭の中に浮かんで来た。

おそらく僕はその記憶を抑圧していたのだろう。

その記憶とは、未熟な僕が「社会人デビュー」をさせて頂いた前の職場での出来事だった。

僕は前の職場で、人間関係の躓きからある時期に心身の調子を崩し、入院することまで経験した。

もちろん一番の原因は僕の未熟さ、至なさにある。

しかし、何故人間関係があんなにこじれたのか自分でも分かっていなかった。

その躓きの始まった出来事を鮮明に思い出したのだ。

それは、仕事の移動で車を運転している時だった。

後ろの座席に職場の先輩職員が二人乗っておられた。

お二人とも女性だった。

僕ら三人は雑談をしていたのだが、話題がある職員さんのことになった。

僕らの話の話題に登った職員さん(仮にKさんとしておこう)は僕と年齢が近い女性だった。

Kさんは明るくてハキハキした気持ちのいい方だった。

こういう書き方はどうかとも思うが、女優の香里奈さんに雰囲気が似ていた。

しかしKさんは急な事情が生じ、突然退職することになっていた。

僕は正直、新しく職場に入った時からKさんに淡い憧れを抱いていた。

Kさんを意識し過ぎて、偶然Kさんと二人きりになってしまった時、緊張のあまり僕は何を話していいのか分からなくなり気まずくなったこともあった。

苦い思い出だ。

そんなことが車を運転していた僕の頭の中に過った。

僕は話題を変えたくなって後ろの先輩職員さんに早口でこう言った。

「Kさん、真面目で手本になるような人でしたね」

次の瞬間、後ろの先輩職員のお二人がプッと吹き出されたのが聞こえた…ように僕は感じた。

本当に僕のことを笑われたのかどうかは今では分からない。

でも僕は、自分のKさんへの淡い思いが先輩職員のお二人にばれてしまったんじゃないかという思いでたちまち頭が一杯になってしまった。

それから…僕はそのお二人の先輩職員と話す時の態度や緊張の具合が変わってしまったと思う。

いや、変わってしまったことをはっきり覚えている。

そうなると、そのお二人とはあまり話したくなくなる(本当に自分勝手な思いだけど)。

お二人にもその微妙な気持ちが伝わる。

こうしてできた僅かな隙間が、やがて時間を追うごとにはっきりした溝になり、仕事での失敗の度に広がって、いつしかお互いに顔を合わすことさえストレスになるようになって行った…。

結局、原因は全て僕だった。

本当に先輩お二人には申し訳なかった。

しかし、人間とは些細なことで躓き、運命さえも左右してしまう事態を自分で招いてしまう脆さを持っていることを忘れてはならないのではないか。

僕は愚かな人間だ。

僕と同じような失敗をする人はあまりいないかもしれない。

しかし、もし周りに急に対人関係がおかしくなってしまった人がいたとしたら…案外かつての僕と同じような事態にはまり込んでいる人なのではないだろうか。

そういう人がいたら、それが可能であるなら、ゆっくり話を聞いてあげて欲しいと思う。

立ち直るきっかけを作る手助けをしてあげて欲しいと思う…。


………結構な長文になりすみません。

これ、元々はラボーラと違う別のところに僕が書いた文章です。

僕は皆さんの書いて下さる非野球ネタに結構考えるヒントを頂くことがあります。

先日初めて僕も完全な非野球ネタを書きました。

ありがたいことに、それでも読んで頂けたので、最近野球以外のことで少しマジに考えたことをまた書かせて頂きました。

次からは野球ネタに戻ります。

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