ミスタータイガースを考える

  • 虎男
    2017年09月10日 12:08 visibility1245

鳥谷敬選手がついに2000本安打を達成した。私も正直嬉しい。しかも阪神タイガースの「生え抜き選手」では2人目の快挙だ。しかも、次の日の試合には2001本目となるサヨナラヒットを放った。ヒーローインタビューで本人のコメントをなんとか引き出したいと言うアナウンサーの努力もむなしく、アナウンサーの質問ばかりが力が入りまくって、鳥谷本人のコメントの落ち着き払い過ぎて面白味の無いアンサーには「これぞ、鳥谷」と言った感が満載だった。

 

さて、昨日てっちゃんから「鳥谷はこれだけの偉業を達成したのにミスタータイガースの称号はもらえないんですよね。」と言う深くて重いコメントをいただいた。私は、「快挙達成」のお祝いムードが先でそんなこ考えてもいなかった。そこで「ミスタータイガース」と言われる人たちを並べてみると、まずは「猛虎」と呼ばれて相応しい「藤村富美男」46本のホームランを「物干し竿」と言われる長いバットで叩き出し、守備ではショーマンシップをファンに見せつけるだけのパフォーマンスの限りを尽くした「巨人の長嶋以前の大スター」が初代ミスタータイガースと誰もが言う。その初代ミスターが引退試合を行ったマウンドに上がったのが「ザトペック・村山実」だ。巨人の契約金200万円を蹴って、50万の阪神へ行き、長嶋を何とか抑えて打倒巨人を果たすことに心血を注いだ熱血漢が二代目ミスターであることは誰もが疑わない。激情がほとばしる彼のパフォーマンスに浪速の「ど根性」が折り重なり、東京の長嶋の向こうを張ったことで、千両役者となったのが彼だ。その次にミスターと言いたいのが他球団を渡り歩いてしまった2人。江夏豊と田淵幸一だろう。「一匹狼」と言うあだ名がぴったりだった江夏は村山に対しての長嶋のライバル対決と同様に、「江夏対王」のエースとホームラン王の一騎打ちで試合を盛り上げた立役者だ。彼の剛速球を見て、私は一気に阪神ファンになった。まあ、父が16代目の江戸っ子で「天邪鬼」だったから「巨人は江戸っ子の粋な野球ができない。川上なんか田舎者」なんて平気でべらんめえ調でテレビに向かって大声で吠えていたのをいまだに記憶している。その江夏が出てきた1967年が私が小学校へ上がった年でもあり、その年から逆算すると「阪神ファンになって50年」と言うのが今年2017年と言うことになる。

 

江夏がタイガースを出るまで私の投手のアイドルであり、そして打者では大型の田淵幸一だった。田淵の入団が昭和44年で、それ以降、江夏と田淵は「黄金バッテリー」と呼ばれてタイガースファンに愛されたのだが、その頃の阪神球団は「読売にくっついていればくいっぱぐれは無い。」と言う姿勢がありありで、私より上の世代の阪神ファンなら「リメンバー1973」と言うのが合言葉で、読売憎しの代名詞になっていたわけで、シーズンの最終戦の甲子園での巨人戦。阪神が勝っても、巨人が勝ってもいずれの勝者が「リーグの覇者」となる「覇権をかけた大一番」に9対0で阪神は負けるのである。あの時の最後の打者カークランドの空振り三振をいまだに覚えている。悔しいを通り越していた。あれから44年の歳月が流れた。そして、江夏は南海の4選手との交換トレード(阪神側は望月外野手も添えていた)で虎生活に終止符を打つ。その後、田淵も入団2年目で広島の外木場からくらった耳へ直撃したデッドボールのせいで長距離マラソンが出来なくなったあおりで太ってしまい、次期監督に据える予定だったドン・ブレイザーのチーム編成上の構想外の選手としてリストアップされ、西武にトレードをされてしまう。その後は田淵に代わって雑草のごとく無名の高卒新人からスターダムにかけあがった掛布雅之が「ミスター」の称号を得て以来、誰もこれを脅かすような存在がいないまま掛布は33歳と言う若さで引退をしていくのだった。

 

鳥谷敬がミスターになれないとしたら、何が足りないのか?むしろ、ここはタイガースファンの凝り固まった「猛虎のイメージ」を追いかけすぎているきらいがあるように感じる。「猛々しく、相手チームの選手も一目置いて、ファンの期待に必ず応えてくれる。」そんな選手は今どきの細かく1プレー1プレーの癖やデータを分析、解析して丸裸にされての野球をやっている中で「出てくるわけが無い」と思われている。一人で試合を決めるような印象的な一打がめぐりあわせのように回って来る「太陽の光」のような選手が今後出て来る可能性がどれだけ低いか。そんな「想像でしか存在しないような選手を夢見ているファン」が多すぎるのではないだろうか。そんな存在感が大ありな選手を次期ミスタータイガースとして待ち焦がれているとしたら、ファンたちもそのハードルを下げないと永遠にそんな選手は出てこない。それならば、2000本を達成して、今後阪神タイガース史上、最多安打を打つ予定の鳥谷選手が、子の称号を持つのは非常に理にかなっているのではないだろうか。私はそう思うのだが・・・。

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