もっと一緒にいたかった

１９７６年８月６日生まれの彼女。

初めて出会ったのは、テニス部だった。
私が１４２センチ。
彼女が１３９センチ。

マイペースで、無口で、たまにとんでもなく爆弾発言をする。
部内で浮いてるように見えた彼女。
いつもハラハラして見てた。
一緒にいなきゃ、って思ってた。


今思うと笑っちゃうけど、守ってるつもりで、守られてた。
一緒にいて、すごく居心地が良かった。
安心してた。


裏切りとか、仲良しグループとか、そういうのとは無縁。
気がつけば、いつも一緒だった。


思えば、中高６年、同じクラスになったのは１回だけだったなぁ。
でも、なぜかいつもお弁当、一緒に食べてた。


卒業してから久しぶりに会ったら、
卒業式では私より小さかったはずなのに、目線が上になってた。

「ハタチでまだ背が伸びてるなんて、宇宙人じゃないのぉ？」
「ちがうもんっ、だって、血、青くないもんっ！」


卒業しても、OGとしてテニス部の合宿一緒に行ったなぁ。
クールで不愛想かと思えば、
顧問の先生に泣きながらケンカ売ってたな（笑）
一緒になって、泣きながらケンカに乗ったけど（笑）


科目は違うけど、教育実習も同じだったなぁ。
後輩の無礼な態度にカチンとキレた私に、
同じようにキレて、一緒に後輩シメたな（笑）


みんなで集まる会合もいつも一緒だったけど、
２人きりでいたことが多い気がする。


２人で高速バス乗って、スキーに行ったなぁ。
ゲレンデではぐれて、私が必死にリフト乗ったり、滑り降りたり、
リフト見上げながら滑っているのに、

あいつめ、一人食堂でカレー食べてたなっ。
私は、遭難用チョコレートだけだったんじゃっ！



クールで不愛想、ときどきアンニュイ。
でも、ほんとは熱い。
負けず嫌いで頑固。



会社までチャリ通。
Tシャツに汗がこぼれ落ちないように、首からタオル巻きながら・・・って（笑）
田吾作かっ。


写真の顔は、いつも同じ表情。

「なんで、いつも目、見開いてるの？」
「だって、目が大きい方が可愛いじゃん。」

・・・さいでっか。


フットサルを2〜3回やっただけで、
趣味：テニス、フットサル

って書けるそのいさぎよさ。



7年勤めた会社もやめて、
公認会計士を目指していたな。


けーにんこーかいし？
公認、会計士！（−−メ


毎度、間違える私に、優しく突っ込んでくれてたな。
おかげで、ちゃんと言えるようになったけど。


公認会計士へのみちのりを、
ドラゴンボールの球集めに例えて、話してくれたな。

なるほど。

今でもよくわかってないけどね（笑）


すごく勉強家。
とても努力家。
１次は受かったって言ってたもんなぁ。


で。付け焼刃の微分積分、私に習いに来てたっけ。
私も必死に勉強したっけ。
で。勝手に我が家のダイニングが図書館がわりになったっけ。



30歳になって、盲腸になって、
痛みを我慢しすぎて、
腹膜炎になっただなんて、笑えないよ。


手術痕、消えた？

って聞いたら、コレ、と、Tシャツめくって見せてくれた、そこはテニスコート。

クールで不愛想、ときどきアンニュイ。
そして、大胆。
我慢強くて、意思が固くて、頑固。



こんな、表面的な付き合いのやりとりだけだって、書ききれないよ。
いくら時間があったって、言い尽くせないよ。


もっともっと、会話の内容や、
もっともっと、会話しない内容や、

そばにいるだけで感じ取れること、いっぱいいっぱいあった。
そばにいるだけで尊敬できること、学べること、参考になること、いっぱいあった。

今だって、命題を置いて行った。




２００９年４月９日午前４時４分。彼女が死んだ。



盲腸＋腹膜炎の手術をしたときに、虫垂がんが見つかっていたなんて。

２年近くも、誰にも、家族にも打ち明けていなかったなんて。

２月の頭には、最悪余命１か月と言われてたって。

それでも、意識がなくなった４月８日の前日まで、
体力落ちるといけないからって、院内散歩してたって。


クールで不愛想、ときどきアンニュイ。
でも、ほんとは熱い。
負けず嫌いで頑固。
そして、とことん我慢強い。



痛い、辛い。
言ったからってどうなる？
どうもならない。
言っても仕方のないことなら、言わない。
弱音は絶対吐かない。


どこまで男前や。


アンタの生きざまはかっこよかった。
潔さも立派。
貫き通した意思も、憧れる。


でも、
もっと、一緒に遊びたかったんだ。
もっと、会って喋りたかったんだ。
もっと、一緒にいたかったんだ。
ずっと、一緒にいられると思ってたんだ。
いるのが、当たり前だと思ってたんだ。



明日。
明後日。
明々後日。

彼女の体が、ココにあるかぎり、３日間。
最後の最後の３日間。
最後の対話をしてこよう。


みんなと、田崎の話を、いつまでもいつまでも、していたい。