コーチのためにスポーツ心理学

  • LEE
    2011年05月05日 16:36 visibility6615

それは、選手の技術力を向上させたり、人間的に成長をサポートするためには、選手一人ひとりをひととして理解することは不可欠である。また、スキールが上達していくメカニズムについての正しい知識を得ることも必要だろう。さらに、指導についての考えかたや指導行動を理解することも大切である。スポーツ心理学はそれらのことを成し遂げるための多くの示唆をあたえてくれるだろう。

コーチは;

1-選手理解の心理
2-技能向上の心理
3-指導行動の心理

を把握する必要がある。コーチにとって選手の動きを観察することは重要な仕事の一つである。選手の何が問題なのか直感だけに頼るのでなく、十分に吟味して観察することが求められるのである。 ■直感的な判断は正しいか?
コーチにとって経験に基づいた勘や直感、指導する上では大事なものである。しかし、いつもそれだけにたよってはいけない。時にはしっかりと分析してみることが必要である。運動・スキルを獲得していく過程は複雑である。同じような練習がすべての人にとって効果的であるとは限らない。また、自分の経験や感覚は大切であるが、必ずしもそれが指導している選手に対してそのまま適用できるとは限らない。運動の学習に関する研究では、経験的に正しいと思われていたことと逆の結果を示すものがある。
■コーチの役割
コーチの役割を果たすためには、これまでの自分のサッカーの経験や知識だけでは十分ではない。様々な学問の知見を指導に活かしていかなければならない。選手に知恵を授けるのと同じように、指導者も良い指導者になるための知恵を獲得することに努力しなければならない。

心理学的な知見を指導に活かす。
経験だけでなく、知識を広め、知恵を獲得することが大切。


■パーソナリティー(Personality)
パーソナリティーは人格あるいは性格と訳されているが、心理学的では、「各個人の特有な、比較的安定した、一貫している行動傾向」などと定義されている。基本的に短期間ではあまり変化せず、変化する場合でも、長期にわたって徐々に変容していく「心理特性(psychological trait)] であるとみなされており、状態におうじて変化する。心理状態(psychological state) と区別すべき概念である。
現在パーソナリティーはいくつかの因子(特性)によって構成されており、各々の因子
における傾向の組み合わせ(プロファイル)によって個人を理解する「特性論」が中心となっている。
パーソナリティーを構成する因子の数や内容は、背景とする理論によって異なっている。

●12因子 性格検査
①抑うつ性 ②回帰性傾向 ③劣等感 ④神経質 ⑤客観性のなさ ⑥協調性のなさ ⑦愛想のなさ(攻撃性) ⑧一般活動性 ⑨のんきさ ⑩思考的外向 ⑪ 支配性⑫社会的外向

●主要5因子性格検査
①外向性 ②協調性 ③勤勉性 ④情緒安定性 ⑤知性
■パーソナリティーとスポーツパフォーマンスに影響する割合は;
パーソナリティー要因として10%~15%といわれている(R.Cox)
ちなみに;
●環境要因        10~15%
●人と環境の相互作用 10~15%
●その他の要因     55~70%   になる。
近年のスポーツ心理学研究では、スポーツパフォーマンスに影響する、あるいは、スポーツ行動に影響するのは一般的なパーソナリティーではなく、より具体的 な個別の心理変数であるとかんがえられており、下記に示すような変数に焦点が当てられている。
●自尊感情;(Self-esteem,)自尊心、自己に対する一般的な評価
●自信;(Self Confidence),有能感、(Perceived Competence),自己効力感(Self-efficacy),いわゆる自信に関する概念
●不安;(anxiety),特性不安、状態不安、
★従来よりスポーツパーフォーマンスへの影響が非常に大きいと考えられてきた変数
●自己意識;Self consciousness),公的自己意識、私的自己意識、他者の存在の影響を考える際に重要
●目標志向性;Goal orientation,課題思考、自我志向、運動の上達や動機付けに影響



自尊感情

スポーツ行動との関係の一例となる自尊感情、自尊心ともいう。自尊感情は、自己にたいする評価と定義される。特定の領域でのポジティブな自己評価である「自信」の上位概念であり、一般的、総合的な自己評価を指している。選手のオンザピッチだけでなくオフザピッチにおける人間成長を考える際に重要な概念である。比較的安定した変化しにくい特性と考えられていますが、変化させるためには関連する変化しやすい要因を操作する方法が提案されている。
心理学者K.R.Foxによれば、自尊感情を高めるには身体的自己価値観や身体的受容を高める必要があり、また、そのためにはスポーツ有能感や身体的強さを増加させる必要がある。さらに、スポーツ有能感は得点効力感やシュート能力の向上によって生じるサッカー有能感の向上に伴って高まっていくと考えられている。このように、自尊感情は個々のプレイにおける具体的な「できる」という感覚を高めていくことによって、向上させることができる。なお、自尊感情の向上は競技にたいする動機付けを導き出すとも考えられている。


個性理解の促進やスポーツ指導において注意を向けておくべき心理的概念にスタイルがある。認知スタイルおよび学習スタイルとは、刺激や情報を処理したり、環境とかかわる祭の個人特有なやり方のことである。スポーツ関係者に関心を持たれている代表的なものとして場依存型と場独立型がある。
場依存型は、場、(状況)や文脈の影響を受けやすいタイプであり、正確で素早い知覚が混雑な傾向がある。
場独立型は、場(状況)お影響をあまり受けず、認識対象を正確に素早く知覚することができる。
一般に、発達とともに場依存から場独立へと変化していくと言われており、少年者では場依存型が多くなっている。少年者の指導においてはコーンやビブスの色 を背景に埋もれないように明るい色にすることを進められている。 スポーツ関係者に関心が持たれている認知スタイルにはまた、熟慮型、衝動型がある。
熟慮型は;問題に対し時間をかけて充分に検討して上で答えるスタイルであり、反応は遅いが正確性に優れている。
衝動型は;最初に正しいと判断したことを性急に答える傾向があり、反応は速いが正確性には欠けていると言うことができる。
一般に、発達に伴って熟慮型が増加すると言われている。この熟慮型-衝動型は、類似した図形群の中から同一の図形を素早く選択するという作業を行う熟知図形 マッチング検査などで測定することができる。


学習スタイル

効果的な指導を行うためには、選手の学習スタイルを理解しておく必要がある。下記のように学習スタイルを4種類に分けて、それぞれにてきした指導方法を提案されている ①目で見て、読んで理解することを好むので、ボードなどに重要な事項を要約して書き出すこと。 ②言葉ではなく図や絵で理解するのが得意なので、図に描いて説明する。 ③話を聞いて理解するスタイルなので、言葉で説明するのがよい。 ④実際にやってみることで理解を深めていくので、身体を使って実技させてみる。


代表的な発達段階論

■ピアジェの認知的発達段階論;

■エリクソンの心理社会的発達段階論;

■コールバックの道徳的発達段階論;

■ハヴェイガーストの発達課題論;


■ピアジェの認知的発達段階論;
認知機能や思考の発達を以下の4段階に区分して考えています。
1-感覚運動期(~2歳);身体で直接感じたり、運動をすることによって、対象を認知する。この時期の終わり頃には、対象の永続性(見えなくなっても物体は存在するという認識)が成立する。
2-前操作期(2~7歳);行偽の内面化が生じ、「ごっこ遊び」できるようになる。思考は自己中心的(自分の視点からみ、ものを見る)であり、保存(一定数量の物体は、外観が変わっても、一定のままであるという認識)や可逆性(操作を逆に戻して思考すること)は、まだ充分に成立していない。
3-具体的操作期(7~12歳);具体的な事項を扱う場合に、論理的な操作を行うことができる。
4-形式的操作期(12歳~);仮説を用いた論理的思考や抽象的思考が行えるようになる。

■エリクソンの心理社会的発達段階論;
一生涯を8段階に分け、各段階で生じる「心理的危機」を克服することにより、自我が成長していくと考えたエリクソンの理論は、一生涯にわたる発達を対象としていることから「生涯発達理論」、あるいは「ライフサイクル理論」とも呼ばれている。






段階
 心理的危機


乳児期(~1歳)



早期幼児期(1~3歳)



幼児期(3~6歳)



児童期(6~12歳)



青年期(12~20歳)



成人初期(20~40/45歳)



壮年期(40/45~65歳ごろ)



老年期(65歳ごろ~)

自己の有能性の認知

各発達段階で以下のような特徴がある。
■児童初期(3~6歳);
実際に目に見える形で達成できているかどうかによって、自己の有能性を認知する。
両親やコーチのいうことに基づいて有能性の判断する。
努力と能力を区別しない。すなわち「私はたくさん練習したので上手だ」という考え方をする。
■児童中後期(7~12歳);
パーフォマンスの質を判断する能力は直線的に向上する。
有能性の判断に対する親の影響が減少していく。一方で、仲間やコーチの影響が増大していく。
自己の有能性に判断に仲間との比較を用い始める(12歳ごろまでに、最も重要な情報源となる。)
この時期の後半で能力と努力を区別し始める。
■青年期(13歳~18歳);
有能性の判断は自己比較・自己決定的基準(自分がどれだけ上達したか)に基づうようになる。


各年代における特徴

■6歳以下;
抽象的、論理的な思考ではなく、自分自身の動きや感覚によって物事を考える時期である。自から動き、触れながら考える時期
集中力は長く続かないので、長時間にわたる連続的な活動(練習)は避けるべきである。
大事なのは遊びである。遊びをト通じて、運動機能だけでなく、知的側面や社会性の発達の基礎もできあがる。
■8歳以下; プレゴールデンエイジ
小学校生活が始まり、それまでと生活環境が大きく変化する時期である。
運動すること自体に歓びを感じ、知識や様々な能力も、何の疑問も持たずに身に付けていくことができる。「無頓着の時期」ともいう)。
自己中心性を脱却し、徐々に相手の立場を理解できるようになるが、その一方で大人への依存度はまた高い。
この時期は「プレゴールデンエイジともよばれ、後にト訪れるゴールデンエイジをより実り豊かなものにするために、重要な時期と位置付けられている。
■10歳以下; プレゴールデンエイジ
思考、認知能力が体格的に発達し始める時期である。それに伴い、言葉を適切に用いた指導の効果が高まってくる。
仲間とグループを組んで行動することを好む時期であり、「ギャングエイジ(徒党期)と呼ばれる。
ゴールデンエイジに向けてのスタート(ゴーデンエイジの初期にあたり)、スキル・コーディネーションを習得するのに最適の時期である。
■12歳以下; ゴールデンエイジ
仲間と集団活動が進化していく。ゴルデンエイジと呼ばれており「即座の習得」が可能になる時期である。サッカーに必要なあらゆるスキルの獲得に最適な時期である。



 

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