昨日１つ仕込んでおいたので。

どういうのが色眼鏡であるのかということを説明したいと思います。

昨日の日記でバレンタインの発言を取り上げました、該当部分だけもう一度取り上げたいと思います。

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この現状に日本球界はどうか。「日本のメディアは中継のためにＭＬＢに５０億円も払っている。本当ならこのお金は日本球界の資金力を高めるものになるべき。こんなクレージーな状況は改善するべきだ」とバッサリ。
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これには全く持って同感だというのは先の日記でも書いたとおりです。同感という評価を押された方も結構いらっしゃるようです。
ここでもう１つの出来事について、記事を引用してみます。今年の７月に行われたオーナー会議についての報道です。


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トップ選手の海外流出に対し、各オーナーは想像以上に危機感を募らせていた。会議では、米大リーグ（ＭＬＢ）中継するＮＨＫに対する不満の声が上がり、改善を求める意見が相次いだという。
オリックスの宮内オーナーは「非常に不愉快に思っている。もっと日本の野球を取り上げるべきだ」と語気を強めた。イチロー（マリナーズ）はオリックス出身。宮内オーナーは「うちから出た選手だが、１打席目からずっと（中継を）流しているのがニュースなのか」と首をかしげた。
中日の白井オーナーが「日本人選手の動向を優遇しすぎ」と注文をつけたように、実はＮＨＫに対する不満は以前から球界内にくすぶっていた。宮内オーナーによると、今年１月に日本プロ野球組織を代表して根来コミッショナー代行がＭＬＢ中継の再検討をＮＨＫ側に申し入れたという。
この日議論されたドラフト制度改革でも、新人選手の契約金はメジャーへの流出を避けるため最高標準額とは別の特別ルールを設けるべきだ、との意見が出された。
しかし、海外流出阻止の策を講じるより、日本球界の再生に向けた努力が優先事項ではないだろうか。ＮＨＫを非難するのは本末転倒であり、筋違いだ。

[ 共同通信社 2007年7月18日 20:55 ]
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12球団オーナー「メジャー報道自粛して」
プロ野球のオーナー会議が１８日、都内のホテルで行われ、ＮＨＫに対し、中継を含めた大リーグ報道の自粛を求める異例の申し入れをする方針を固めた。議長を務める日本ハム大社啓二オーナーは会議後の会見で「大リーグ報道が多すぎはしないかという意見が出た。ＮＨＫにどうしろ、というのではなく、日本球界を盛り上げてくださいということ」と説明した。具体的にどのような申し入れをするかについて、今後は実行委員会で検討していく。

ＮＨＫの大リーグ報道については、１月のオーナー会議でソフトバンク孫オーナーが「非常に偏りがある」と問題視する発言をしていた。お願い…というより強い姿勢を強調するオーナーもいた。オリックス宮内オーナーは「もっと強く言うべきと申し上げた。日本のプロ野球は苦労して選手を育ててきたのに、メジャー数名の選手ばかりを取り上げるのは極めて異常で不愉快だ。公共放送なんだから。イチローはうちから出た選手だけど、１打席目から流しっ放しはいかがなものか。ニュース性はあるのか」と厳しく指摘していた。

根来コミッショナー代行は「各オーナーは人気選手の流出を含め危機感を持っておられる。その一環として出た話でしょう」。長谷川コミッショナー事務局長も「報道を減らしてではなく、日本球界も大切にしてくれということです」と各オーナーの本心を代弁するように説明。どうも八つ当たりのような印象は否めない。【飯島智則】

［2007年7月19日9時34分　ニッカンスポーツ］
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どうです、結局どうするべきなのかという点を見れば全く同じことを言っているでしょう。
にもかかわらずバレンタインが言ったら「バッサリ切り捨てた提言」で、宮内オーナーが言ったら「本末転倒」で「筋違い」で「八つ当たり」、これが色眼鏡です。

このニュース見ませんでしたか？それを見たときに「またオーナーのアホどもが馬鹿げたことを言っている」なんて思っていませんでしたか。
そんなアナタ、踊らされていますよ。
オーナーの発言を聞いたときに、NHKの存在理由とは何であったかとか、何を原資としているのか、日本全体のスポーツ文化の発展という観点で見たときにそのNHKの姿勢はどうあるべきなのか、そんな視野が決定的なまでに上記の文章には欠けています。

ただ、この記事を読んだ読者がそういう視点に気づかずに「馬鹿げている」と思ってしまうのは、ある程度はしょうがない部分も有ります。意図してかどうかは本人のみぞ知る事ですが報道の記事構成にそれを招く問題がありますから。
報道とは何よりも“事実のみ”をしっかりと伝える事が求められるのですが、最後に「筋違い」だとか「八つ当たりのような印象」とか自分の感想を付け加えることで、読者の思考の誘導を行っています。それに気づかずに乗せられちゃっていたかもしれません。

まったく記者様というのはどれほどえらいのでしょうか。
報道の中にわざわざ一個人の考え、しかも大局が全く見えていない程度の低い考えを付け加えて“「事実を伝える」という報道の本分”を汚すほど偉いのだと思い込んででもいるのでしょうかねぇ。わかってやっているのかそれともわからずにやっているのか。
もし自覚が無いのだとすれば、オーナーの発言を聞くときに、「自分の球団の利益だけを考えている老害ども」というような決め付けが記者のなかにあって、彼らが言い出すのはそういうことばかりなのだと思い込んで、つまり色眼鏡をつけて接しているわけですから、ある意味こういう報道にしかならないのは当然です。
ただ自覚が無いだけだとは限りません、上記のようなことを自覚した上で報道の大原則を踏みにじって、自分たちにとって都合がいいように仕立て上げている可能性も有ります。つまりしらばっくれてやっている。
例えばスポーツ紙などからすれば、イエロージャーナリズムという概念があるように、出来るだけ自己を目立たせたいですから、センショーナルであることのほうを優先するのが人情というものです。
そして平易な何の癖も無い文章よりも批判的な文章である方が目に付きやすい、面白いと思ってしまいやすいというのは人間の性ですから（だから私もこういう文章なんですがｗ）、そういう人間の心理を利用しているとみなすことも出来ます。
どっちにしろ、救いがない（笑）

別にスポーツに限った話ではないのですが最近の報道はこういうのが多すぎというかこれが通常仕様になってしまっています。
本来の報道とは事実は事実だけを書くべき、それに対して記者の意見をつけたいのであれば別建ての署名記事で書くべき、その当然のことが出来ていないのが日本のメディアです。
一般に「メディア・リテラシー」（IT用語辞典、e-words）と呼ばれる事ですが、これはスポーツ報道に限らずこれから社会を生きていくうえで非常に大事なことです。
色眼鏡というのは気づかぬうちに掛けています、自覚した上でかかっているものでは有りません。色眼鏡で物事を見ていることのほうが自然な状態です。だから色眼鏡をかけずに物事を見るにはそのための心がけが必要だし、自覚して行動しなければいけません。

ただオーナー側に苦言を呈するとすれば、「日本球界を大事にして欲しい」というあまりに素直な言い方をしている点です、こんなバカ正直にある必要はありません。
「自分たちの利益のために」みたいな心情が透けて見えればどうしても人というのは批判的に解釈します、それが人の心情というものです。
例えばJリーグが実態はどうあれ理念では「豊かなスポーツ文化の振興及び国民の心身の健全な発達への寄与 」を掲げることで、公共団体からの支援を引き出しやすかったり、広告主がただ広告を出すのではなく社会貢献のためにやっていると言えるように出来たりしている、こういうのが利口というものです。これがプロ野球には絶対的に欠けている。「建前」がなさ過ぎるんですよ。
最初に上記の報道を見たときにも感じたんですが（その時期は休んでいたので日記は書きませんでしたが）、バカ正直に自分たちの欲望を出すなって意味では十分批判に値します。
ここで、「日本のスポーツ界全体のためにMLBに支払っている放映権料を国内スポーツに回して欲しい。現在のように野球によって日本のスポーツ界全体が本来得るべきのお金が国外へ流出しているのは野球に携わるものとして他のスポーツに顔向けが出来ない、情けない」ぐらい言えばいいんですよ。
プロ野球からすれば、最善はMLBの中継が全部NPBの中継に変わることですが、ただ単純にMLBの露出度が下がるだけでもプラスなんですから。MLB中継が減ったとしてNPBの中継が全く増えないわけも無いでしょうし。
上記の報道機関の記事の書き方と同じです。情報というのは加工して出てくるのが当たり前です、加工があったとしてそれが見抜けないヤツが悪いんです。
そういう加工を全くといっていいほど出来ていないのがプロ野球だし、うまくやっているのがＪリーグであり、MLBです。ここは今のプロ野球が絶対に変えていかなければいけないところです。

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