
見えなかった相馬サッカーの片鱗
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上胡桃
2011年03月08日 01:28 visibility97
2-0、相手のシュートは3本という完勝の結果とは裏腹に、試合後はがっかりした気分がぬぐえなかった。ケンゴとノボリの両ウイングによるワイドなサイド攻撃を期待していたが、ほとんど機能しなかったからである。1点目は、矢嶋のスーパーな個人技によるもの。戦術は関係ない。2点目は、トップ下の位置にいたケンゴから、DFの背後へ抜け出したノボリへのタテのスルーパスである。両ウイングがタテの関係になっていたことからも分かるように、相馬監督はワイドなサイド攻撃を指向していないのかもしれない(今どき本当?)。
それにしても腑に落ちなかったのは、ケンゴのポジショニングである(中村俊輔のポジショニングと同じく、凡人には理解不能なのかもしれないが)。サイドに張ってボールを待つ、という欧州サッカーのセオリーとは対照的に、中に入ったりポジションチェンジをしたり(ノボリ、柴崎、稲本と)を繰り返した。ケンゴが動くたび、周りの選手もポジションを変えなければならない。それは、ケンゴの思いつきでなくチーム戦術なのかもしれないが、無用な混乱を引き起こす原因にしか見えなかった。
象徴的だったのは、右サイドに回ったケンゴが中に入り、右サイドがぽっかりあいたときだ。サイドバックの田中がスペースを埋めるために中途半端に上がり、少しの間3バックになった。あれは何だったのだろう。恐ろしく危険な状態に見えたのは、私だけだろうか。
それ以外のシーンでも、両チームとも片方のサイドに偏ったダンゴ状態のサッカーになることが多く、「これがJ1か?」と思わずにいられなかった。山形がおつきあいしてくれなかったら、何度も決定的なピンチを招いていただろう。
ジュニーニョはよく左サイドに張る。黒津はしばしば右サイドに張る。田坂やヴィトールは両サイドの裏を駆け上がる。そこにケンゴや稲本からロングパスが通ると、ビッグチャンスが生まれる。昨シーズンまで何度も繰り返されたシーンである。そういうサイドをワイドに使うサッカーは見ていて楽しい。大げさに言えば、美しさを感じる。
それが山形戦ではほとんど見られなかった。理由は明白だ。4-2-「2」-2の「2」がワイドでなく中に入り、タワー型の4-2-2-2になったからである。2-2-2という塊が、ときに右ときに左と揺れた。そんなフォーメーションでサイド攻撃を仕掛けるには、空いている方のサイドバックがオーバーラップしなければならない。実際、小宮山はよく走ったと思う。
エルゴラを含めてスポーツ紙は相馬サッカーの片鱗が見えたとか、おおむね好意的だが、私には何がしたいのかさっぱり分からなかった。「人とボールが連動して前に動く」って一体何のことだ。誰かそれを分かりやすく説明してほしい。城福監督のムービングサッカーとどう違うのか。誰も理解できないまま、あうんの呼吸でのみ成立するようなら、いきなりJ2落ちするかもしれない。
今の陣容で試したいフォーメーションは、4-2-3-1。1は矢嶋で、3の真ん中に山瀬、両サイドにノボリと楠神(または田坂)。2はケンゴと稲本(または柴崎)。ノボリと楠神のどちらかは、常に思い切って両サイドに張らせる。矢嶋は、その反対のサイドに流れる。そうして相手のサイドバックを押さえ込んで中を空け、ケンゴのパスに山瀬とウィングの1人が真ん中に切れ込む。
これでうまくいくか分からないが、これぐらいの具体性で、相馬監督が目指すサッカーを解説してほしい(エルゴラのいしかわじゅんは「人とボールが連動して前に動く」と言っているが、納得して書いているのか?)。
少なくとも山形戦では、相馬サッカーの片鱗は見えなかったし、それが何なのかどのスポーツ紙も具体的に書いてない。勝ったのに不安が増した一戦だった。マリノス戦はどうなるか!?
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