芝居シリーズ vol.8 −最も思い出深い公演−


大学時代、社会人劇団合わせて20数公演のオリジナル芝居を
やってきた。最も印象に残っている公演は今から10数年程前、
戦後50年の年にやった『海のない島』という芝居だ。

戦時中の沖縄を舞台とした芝居で、僕は特攻隊の青年役だった。

米軍艦隊で真っ黒に覆い尽くされた沖縄の青い海を取り戻そう
と特攻隊員は来る日も来る日も徳之島の飛行場から飛び立つ。
隊員たちが滑走路に投げ捨てていった別れの花束はいつしか
実を結び、小さな花畑となって今でも残っている。。。

100人も入らないような小さな芝居小屋でうったその芝居の
ラストシーンは、観客からの啜り泣き、嗚咽で一杯になった。

気持ちの入った芝居ができている時は、悲しいシーンでも
決して悲しんでいる演技をしていないし、泣こうともしていない。

「もう、これで最後です。わたくしはこの徳之島から飛び立ちます・・・」

コックピットの中から別れの花束をかざし、最後の台詞を言い
ながら、僕は決して泣くもんか、泣くもんかと歯を食いしばって
いた。それでも次から次から止めどない涙が頬を伝わっていた。


その公演を打ち上げてから2ヶ月程経ったある日、いつもの
ようにどこかの居酒屋で飲んでいたときのことである。
向こうの方で飲んでいた女の子が、僕と目を合わせたとたんに
何故か急に泣き出した。
どうしたんだろうかと思い返してみても全く見覚えのない子だ。
その子は僕のところに寄って来ると、こう言った。

「この間のお芝居、観ました。すごく良かったです!感動しました!!」

その感動が蘇っての涙だったとのことだが、まさに役者冥利に尽きる出来事だった。
































 

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