昔のビデオを掘り起こすと言う事 中継延長編
-
ミオヂ
2006年06月10日 00:18 visibility992
昔はよかったなぁなんて言葉は好きではない。
カープに関しては別だけど・・・。
でも、ちょっとだけ昔の話を。
最近,ヒマな時にやってる事は部屋にはびこるVHSテープの整理。
中身を早送りでチェックして、いらないものは中のテープをハサミで切って、燃えないゴミに。
これは!と思う映像があったらあとでHDレコーダーに落とし、DVDに焼く。
前回はあの名ドキュメント「江夏の21球」が発掘された。
で、またラベルのついてないVHSを再生して「おお!これは!」な映像が出てきた。
「最後のストライク 炎のストッパー津田恒美・愛と死を見つめた直球人生」
を感動の内に見終わったと思ったら、その後に出てきたのは、ヒゲとサングラスの沢田研二!
日本映画の代表的なカルト・ムービー「太陽を盗んだ男」(1979年)
のテレビ録りであった。
なんで、あとからこんなモノが出てくるんだ?、しかも話の中盤から? ということは「太陽」の上から「最後のストライク」を録画したのか?だとすれば、私はなんてミスをしてるんだか。
しかし、久しぶりに観る大好きな作品、思わず見入る。
ちなみにこの映画、阪神の太陽とは何の関係もない。
この映画は、当時人気絶頂、「ザ・ベストテン」の広島からの中継で市民球場をバックに「ダーリング」を歌ったこともある ジュリー、沢田研二がほんっとにやる気の無い中学の理科の先生役。
しかし、ある事件をきっかけに水谷豊の警官からピストルを奪うわ,東海村からプルトニウムを盗むわ、それを元にサラ金で借りた金を使って、アパートの一室で自家製の原爆を作ってしまうわ、やりたい放題。かなりヤバい設定の映画だ。
こう書くと野球関係なさそうだが、前半部分で野球が重要なファクターになっている。
緻密に淡々と描かれる、原爆製造のスリリングな過程の中、 ジュリーが放射能物質をオーブンにかけ、待ち時間にビールを飲みながら、テレビをつけるのだが、そこに映ったのはまごうことなく今は無き後楽園球場の「巨人ー広島戦」ピッチャーは江夏だ!巨人のチャンスというとこでバッターは今日3安打の平田。しかしここで中継は9時になったのでおしまい。ジュリーは乱暴に足でスイッチを切る。
その後ジュリーは自らを9番と名乗り原爆で警察と国家を脅迫。あの中継がよっぽどムカついたのか、最初の要求は
「 今,巨人ー大洋テレビでやってるでしょ?とても9時までに終わりそうにないから、最後まで見せて♪」
あ、そこのお若い人、「そんなのスカパー入ればいいじゃん」って思ってるな?
未熟者め!!荒川道場で真剣の素振り1000本を命ずる。
当時は野球中継は絶対に9時までに終わっていた。延長なんて無い。スカパー?テレビってのは地上波以外あり得ない!映像つきで結果を報道するのはプロ野球ニュースだけ。1979年とはそんな時代。その時代にこの要求は観客に笑いながら「確かに重要!」と思わせるものだった。
ちなみに中継アナウンスに「加藤初」とか「中塚」の名前が聞こえる。
警察,政府高官が中継延長にてんやわんやの中、交渉役の刑事、菅原文太 が中継を観ながら「急がないと,あと10分で中継が終わりますよ」と言うと,政府高官から
「君!自分が観たいんじゃないの?」と突っ込まれて、「イヤー・・」と頭をかくシーンがやたらオカシイ。
政府の必死の努力で、試合中継は延長。延長と同時に王の逆転ホームラン。喜んで踊りまくるジュリー。
と、ここで思い出した。
80年代後半の大学時代、もう野球中継延長が当たり前の時代、この映画の事を友人と話していたら
「この映画オモロいけど、最初の要求がイヤ。俺、野球キライ!それに野球の延長で深夜のビデオ録画どれだけ、途中からになったか!お前もそんなことあるだろ?」
と言われたのだ。 一理あるかなとも思ったが、野球ファンとして、そいつの気持ちはよくわからなかったので
「いや、大多数の人間が、えっ?て思う要求として絶妙じゃないの!」と答えておいた。
友人は「わからん奴だな」って目をしていた。
話を戻そう。
と、まぁ野球がこんな風に使われているんである。残念ながらいつのどの試合の映像が使われているのかはよくわからない。その後,9番の要求は「ローリングストーンズを来日させろ」「5億円よこせ」などになり、さらに死ぬほど面白いのだが、このあと野球はほとんど関係ない。例外として、警察に追われてる!と思った9番が全力疾走するシーンのバックがおそらく神宮球場。その後に出てくる西田敏行に爆笑。
で、「最後のストライク」の感動もどこへやら、9番と警察の息詰る頭脳戦、日本でここまでよくやったカーチェイス、カワイイ池上季実子、不死身の刑事、文太、などの無茶苦茶な面白さに釘付けの私。
そして、いよいよクライマックス、武道館近くのビルの屋上、9番と文太の大激闘! いくら撃たれても死なない文太が9番を羽交い締めにして絶叫!
「いくぞぉぉぉぉぉ、きゅうぅぅぅぅぅばぁぁ」・・・プチッ。
ええ?途中で録画が切れている!
そ、そうか、わかった。なんで「太陽」の上から「最後のストライク」を録画したのか。
このテープは野球中継の延長で 途中録画が切れたテープだったんで、「もったいないから上から録ってしまおう」って事になったんだ。だから「太陽」が途中から出てきたのか。
なんと言う皮肉。
野球中継の延長を要求する映画が、よりによって野球中継の延長によって、一番いいとこで切れてるなんてー。
ならば、今からレンタル屋へ!ああっもう真夜中だ!開いてない!
そして、大学時代の友人よ。あれから18年経って、お前の気持ちがほんっとうによく分かったよ。
野球中継のあほー ーーーー!!
ちなみにこの映画の監督、長谷川和彦は広島出身。日本を代表するカルト監督として、今なおファンが多い。そしてエッセイや評論などでカープファンを公言しているエラい人でもある。これ以降30年近く映画を撮ってないのが玉にキズだが・・・。
- 事務局に通報しました。
chat コメント 件