親愛なるロベルト・エンドーさんへ

  • ミオヂ
    2006年07月02日 20:19 visibility82

朝、目が覚めたらW杯でブラジルが負けていた。

えー負けたかーと思っていたら,昔知り合いだった日系ブラジル人の事を思い出した。

今頃,悲嘆にくれておるだろうなぁ、ロベルト・エンドーさん。

エンドーさんは野球選手やサッカー選手ではなく有名人でもない。2000年頃、私の会社によく来ていたアメリカのソフトハウスの極東担当だった人だ。日本語は私よりうまかったかもしれない。

で、さすがにブラジル人なんで、仕事の合間に私とサッカーの話で 仲良くなったのだが、

話してるうちに日本の野球にも詳しい事が分かってきたのである。

信じようが信じまいが、この男は実在する!!

 

いきなり、ノムさん率いる阪神の事を聞かれた時はビビったもんだ。

私が「でもね、野村さんで勝ってても喜ばない阪神ファンもいるんだ、野村さんは阪神にしてみれば,外様だからね」と説明すると

「トザマ・・・って何ですか?」 と聞かれてどう説明したらいいのか私を迷わせたり

元ブラジル代表のロマーリオの事を「こいつはね,日本で言うと清原みたいな奴よ!とても性格悪いの」と、とてもブラジル人とは思えない日本野球通っぷり。

 

何故彼は、こんなに日本野球に詳しくなったのか。 ほどなく理由は分かった。

彼は日本マンガのコレクターだったのだ。日本語を勉強したのも、マンガが読みたかったからだそうだ。

「水島新司、たくさん持ってますよ、あぶさん、ドカベン、全部持ってます」 と実に嬉しそうに語ってくれるのであった。なるほど、日本野球に詳しくなる訳だ。

 

そんな彼のエピソードで一番驚いた・・いやある意味感動してしまったのは 以下のお話。

エンドーさんが住んでいたリオデジャネイロには日本のマンガが売るほど入ってこないらしい。なので日本マンガを扱うマニア向けショップは日本マンガの貸本屋になっているのだそうだ。

彼が,そこで借りて熱心に読んでいたマンガは、あだち充の「タッチ」。

しかしその貸本屋には「タッチ」の最終巻が無かったそうなのだ。

エンドーさんが「最終巻はないの?」と聞いたら、

店員さんが 「俺も読みたいんだよ・・・」と悲しく答えたと言う。

エンドーさんは私に「何年間もタッチのおしまいは、私にとって謎だった」と熱く語った。

その後彼はアメリカで就職し、日本を訪れる機会を得る。

日本での初仕事を終えた彼が、とった行動は言うまでもないだろう。すぐに近くの本屋のコミックスコーナーに駆け込み、 タッチの最終巻と感激のご対面。

「すぐホテルに帰って読みました。ホントーにウレシカッタですよ」 話してくれるエンドーさんの顔はほんっとうに嬉しそうだった。

 

その笑顔を見ながら私は「この男は・・・なんと地球の裏側まで「タッチ」の最終巻を読みにきたのか!!」「しかも大半のブラジル人は興味も持たない「野球マンガ」を読みに!!」と、いい知れぬ感動に包まれていた。

恐るべしはマニアの執念。いや、私も似たような趣味だから分かりすぎるくらい分かるのであった。

 

しかし、彼の発言は私にとって問題もあった。日本野球に詳しすぎるってのも困ったもんで

「ミオジさん、どこのチームのファンですか?」

「私は広島の生まれだからね、もちろんカープだよ」

「おー、カープですか!地味ですね!!」

ブラジル人が地味って言うなぁー!!!

もう一丁

マンガの話をしていて、私が、まずは海外では知られないだろうマニアックなマンガの話をしたところ、エンドーさんは へぇーと感心しながら

「ミオジさん、案外ヲタクね!!」

・・・エンドーさん、あの時、あなたは私をけなしたの?それともほめてたの?いや、外れちゃいませんけどね・・・ヲタってのは。

 

その後、エンドーさんは日本に来ると、私とサッカー、野球、マンガの話をしつつ、2002年に会社を辞めて、ブラジルへ帰った。なので今の私とは繋がりは、まったくない。

あの時ほめたか,けなしたか知りたいので、これ読んでたらエンドーさん、コメントかメール下さい・・・読んでる訳無いけど・・・元気ですか?

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