★盗塁のテクニック〜part2〜★

  • 鷹乃廉
    2009年05月26日 23:53 visibility1934

第4回
★盗塁のテクニック〜part2〜★
前回の続きで盗塁に必要な3つの要素について解説したいと思います。

盗塁を成功させるには、基本的な足の速さよりも重要な3つの要素があります。スタート・スピード・スライディングの3つです。
高校野球甲子園大会などでは走者が出ると50m走のタイムを情報として実況する場面がありますが、盗塁をするうえでは参考にならないことがあります。
理由として、50m走の速さよりも先に挙げた3つの要素の方が重要だからです。1つづつ考察してみます。

「スタート」
ピストルを鳴らし、走者全員のスタートのタイミングがほぼ一定している50m走に対し、投手は盗塁を許さないために投球動作に入るタイミングをずらしたり、牽制球を行います。このような投手との駆け引きを見極めて、モーションを盗み最高のスタートを切る技術が盗塁には必要です。50m走で素晴らしいタイムを持つにも関わらず、盗塁の成功率が低い選手は特にこのスタートが苦手な場合が多いと思われます。

「スピード」
ここでのスピードは勿論基本的な足の速さのスピードも含まれますが、それ以上に素早くトップスピードにする早さのスピードが問われます。50mのタイムが素晴らしくても、30mを過ぎた辺りからスピードが伸びてタイムを稼いでいるとしたら、走行距離が30mにも満たない盗塁に関しては宝の持ち腐れとなってしまいます。その為スタートした直後にいかに素早くトップスピードに乗せられるかが重要となります。

「スライディング」
50m走では全速力でゴールを駆け抜けますが、盗塁の場合はベースを追い越してしまうとオーバーランとなってしまい、その状況でタッチされればアウトとなってしまいます。この為、ベース付近まではスピードを落とさないまま、ベース直前で急ブレーキを掛ける事が出来るスライディング技術が必要となります。このスライディングをするタイミングが早すぎるとベースに到達する前に無駄なブレーキが掛かる時間が長くなってしまい、遅すぎるとベースで止まりきれずにオーバーランや足の怪我をする恐れがあります。また、スライディングそのものが下手だとタイミングに関係なく無駄なブレーキが掛かってしまいます。その為、いかにベース到達まではブレーキが掛からず、かつベースからオーバーしないスライディングが行えるかが重要となります。
プロ野球選手など、盗塁の上手い選手はベース直前までもの凄いスピードで走り、スライディング中もスピードがほとんど落ちていない事がわかります。

以上3つの要素を挙げましたが、私が最も重要だと思うのはスタートのタイミングだと思います。
単純に比較することは難しいですが50m走のタイムを目安にすると、50mを7秒で走る選手は1秒間におよそ7m進むことになります。
ということは、仮にいつもより0.5秒早くスタートを切ることができたなら約3.5m早く塁に到着することになります。
もし投手のモーションを完全に盗んで投球を始める1秒前に走り出すことができたなら、7mのハンデを得るわけです。これだけのハンデがあればどんなに足が遅い選手でも悠々と盗塁成功させることが可能です。

実際は7mも優位に立つ必要はなく、せいぜい4〜5m(秒数にして0.5〜0.7秒)もあれば十分です。なにせ5m手前タッチアウトをセーフにできるのですから、いかにスタートが重要かご理解頂けたと思います。

ではどうのようにしたらスタートを良くすることができるか?
1つ目は投手のクセを見つけること。
2つ目は球腫を知ること。
3つ目はスタートを切りやすいリードと構えをすること。
の3つです。

1:投手のクセをみつける


無くて七癖と言うように投手には、いろいろなクセがあると思います。


例としては、肩の上がり具合、グローブの位置+動き、軸足の動き、腕の動き、顔の動き、目の動き・・・等いろいろあります。
具体的には、1塁に牽制する場合のみ3塁を見ながらセットポジションに入るとか、キャッチャーからのサインに頷かないときは牽制とかです。これはキャッチャーから牽制のサインが出ている時に多いクセだと思います。

キャッチャーから牽制のサインが出ていなく、投手の判断で牽制を投げるタイプでは、牽制を投げるまでの時間と、投球するときの時間を数えるとクセが見つかることが多いです。
例として、投球するときはセットしてから4秒後に投げるが、牽制の時はセットから2秒以内に投げる。こんな投手ならセットから3秒以上経てば牽制がない事がわかり、格段にスタートが切りやすくなります。

その他よくある投手のクセとして、長い時間セットして(5秒以上)緩い牽制球を投げる又はプレートを外すだけの牽制(偽投など)をした次は、セットして1・2・3のタイミングで投球する。
変化球で投球するとき(特に落ちるボール)は何度も走者を眼で見るようにしてから投げるなど。

2:球腫を知ること
球腫を知る方法は2つあります。キャッチャーの配球を記憶することと、投手のボールの握りを確認する事です。
配球の予測は試合後半になってくるとデータとして集めやすいです。特に変化球を多用したがる捕手がいたら配球を覚えてしまいましょう。捕手によっては、「2ストライク後は1球外して変化球」など数パターンしか配球の組み立てがなかったりする場合があります。

投手がグローブの外で握り替えをするタイプの場合、チャンスです。スライダーなのかカーブなのか別に何の変化球か知る必要はありません。「ストレートの握りではない」を知ることが重要です。牽制で変化球は投げませんよね?1塁に鋭いスライダーで牽制する投手には出会ったことがありませんし、守備側に何のメリットもありません。1塁手が捕りづらいだけです。

3:スタートを切りやすいリードと構えをすること
第2回『リードのテクニック』で紹介しました大きなリードを取るときの構え方を応用します。まだ御覧になっていない方は先にお読みになることをお勧めします。
盗塁するときは右足のつま先を進塁方向に開いて構えます。体が全体的に斜めに向きますので、上半身は投手に向くようやや捻ります。この時右肩を下げ気味にすると上半身だけ帰塁方向に向くので、相手を錯覚させることができます。
盗塁が目的なので重心は進塁方向に、下半身はいつでもスタートできる準備をしておくことです。
慣れてくればずいぶん腰の回転が速くなり、スムーズにスタートを切ることができると思います。


盗塁の成功率を上げたいのならば常に相手バッテリーを観察する事です。味方走者が出たときは特にです。その他、情報が少ないと感じたら大きなリードをとって牽制を多く投げさせましょう。クセが見えてくるはずです。

最後に、盗塁を成功させるには気持が重要です。盗塁という作戦に失敗はつきものです。なので思い切りよくスタートすること。中途半端な気持で牽制にも対応しつつ、盗塁しようと思っていると良いスタートは切れません。
足が遅いと思っている、盗塁が苦手だと思っている選手ほど良いスタートを切る必要があります。
盗塁失敗も牽制でランダウンプレイも同じだと思いましょう。むしろ思い切りよく走りだした方が相手は焦ってミスをするかもしれません。

盗塁について2回にわたってまとめてみました。いかがだったでしょうか?次回は『走者のルール』の予定です。
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最後まで読んで頂きありがとうございました。ここでは走者に必要な技術や知識について扱いたいと思います。御意見・御要望がありましたら、お気軽にコメントやメッセージをお書き下さい。
可能な範囲で最大限期待に添えるようにしたいと思います。

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