
★白球、天を衝く 第1球〜始まり〜★
-
-
鷹乃廉
2009年06月18日 21:01 visibility160
「白球、天を衝く」著者・鷹乃廉
空高く 夢遥かなり 甲子園
唯一の道は 嶮しく 遠く
________________________________________
四月になったばかり、入学式が終り見知らぬ学生が詰め込まれた教室で、未だ決断できずにいた。中学は陸上部で県大会でも常に上位だった。中・長距離の選手として数えきれない賞状やトロフィーを頂いてきた。数多の高校から陸上部員としてスカウトされたし、事実高校で陸上を続けてもインターハイ出場する自身はあった。
しかし、これら全ての誘いを断り、県下で有数の進学校である明法西園寺高等学校に進学した。
理由は一つ、ただ野球がしたかったから。中学では野球部がなく、野球をする環境もなかった。
なぜ陸上部に入ったのかと尋ねられれば、
「高校野球をするための下準備です」
と即答する。
だが、明法西園寺高校野球部の実態は自分の憶測とかけ離れていた。部活勧誘の冊子が新入生に配られるのだが、その冊子が真実を記しているとすると、生半可な覚悟で『硬式野球部』に入部してはいけないらしい。苛酷さ熾烈さに関しては他の部と比較にならない。
ここにきて天秤が揺れている。初心者歓迎、服装も髪型も比較的自由な『軟式』で高校三年間という青春を謳歌するか。中学で野球部でなかった者が通用するかどうかもわからない、毎日自分を追い込み遥か彼方の地を目指す日々を過ごす『硬式』に入部するか。
もし、『硬式』に入るのなら今日から練習に参加しなければならない。とりあえず見学などという甘い考えの新入生はお断りだそうだ。
クラスの皆が自己紹介をするのも上の空で、どちらに入部するかだけを考えていた。どちらにせよ陸上を続ける選択肢はない。過去の栄光は総て中学に置いてきた。
そう、置いてきたのだった。陸上の推薦を断ったときから答えは決まっていた。
入学式が終り、担任からの挨拶だけで午前中が終り本格的な授業が始まるのは明日からだ。
授業が終わると同時に入部届けに硬式野球部と書き込み慣れない廊下を歩いてゆく。教員室まで辿り着くとなんとも解りやすい光景が広がっていた。坊主の厳めしい顔つきの先輩方が数人陣を組んでおり、その中心に顧問らしき教員がいた。その脇に硬式野球部受付と書かれた机と列ができていた。
どうやら自分以外にも入部希望者がかなりいるようだ。一列にならばされているが大体二十人前後であろうか。入部届けを提出するときに顧問の先生に聞かれた。
「硬式でいいの?こっちで間違いないんだね」
間違いありませんと宣言すると、新入生は全員そのまま練習場に案内された。
・・・続く
第2球〜合宿所〜
________________________________________
おはようございます。こんにちわ。こんばんわ。
鷹乃廉です♪
ふと高校時代を思い出して何か書きたくなったので始めることにしました。
タイトルやストーリーを一緒に考えてくださった皆様ありがとうございました。
評価が一定以上になったら続きを書き、10日以内に一定数に満たなかった場合は打ち切りにしようかなぁと考えていたり・・・いなかったり。
不定期更新ですが、これからもよろしくお願いします。
鷹乃廉
- favorite19 chat3 visibility160
- 事務局に通報しました。
chat コメント 件