第59球 もう1つのドラマ(草野球)

昨日の日記で、もう1つ感動のドラマがあったと書いたが、
私がそう思っているだけで、大した話で無いかも。
 
昨日の早朝野球の試合で劇的なサヨナラヒットを放ったチームメイトの
なかじーさんの話です。
※これまでの私の日記でも何回か登場している。以前の日記で書いた話も出てくる。
 
私となかじーさんとの出会いは、かれこれ10年程前になる。
私が今も、通っているテニススクールで、なかじーさんと会い、なかじーさんが
マスターを務める喫茶店に通うようになったことが、きっかけである。
当時、私はまだ独身で毎週仕事が忙しく、休日出勤する前にいつも、その喫茶店で
サンドイッチとコーヒーを飲食していた。
(なかじーさんは、今は別の仕事をしているので喫茶店はやっていない)
 
当時から共通の趣味であるテニスの腕前を競い合っていて、
まだ、私の方が全然テニスの腕前が上だった当時から私のことをいろいろな人に
「テニスのライバルです」と紹介していた。
(私は全くライバルとは思ってなかったが・・・笑)
 
ちなみに、なかじーさんは私より7つ程、年上です。
テニスは、最初は若さに勝る私の方が圧倒的に分がよかったのですが、最近は
フットサル、水泳、ランニングなどいろいろなスポーツを精力的にこなす、
なかじーさんの基礎体力に圧倒されて、殆ど互角になっています。
 
実は、この時、なかじーさんの店でパートで働いていた、おばさんが今の私の義理の母、
つまり、うちの家内のおかあさんになります。
義母にも多分、最初は「テニスのライバルです」と紹介されたと思います。
という訳で、なかじーさんは、私の結婚とも深い関係があります。
 
そんな、なかじーさんが昨年末、私とテニスのシングルスでプレーした後、
居酒屋でポツリと言った。
 
「○○君さあ、野球とかやってみないか?」

「野球ですか?オレやったことないっすよ。」(困惑して)


「オレだって経験無かったけど、今年から始めたんだよ。」(へえー)

「どうして、オレなんか誘うんですか?」(野球未経験者ですよ)

「人数が足りなくて、監督自ら外野守ったりしてんだよ。」(しみじみ)

私は、そのとき、まだ見ぬ60歳前後の監督さんの、かなり貫禄が
付いてしまった体型を想像した。
(結果的には想像した通りだったことが、後で判明するが・・・)
 
「それで、その試合はどうなったんですか?」(興味しんしん)
 
「ダメだよ。全部、\(~o~)/(万歳)で頭を抜かれちゃって、ボロボロ。」
 
それを考えれば、野球未経験者の自分でも試合に出るだけで役に立てるかも知れない。
守備は出来るか分からないが、走れるだけでも監督さんよりもマシだろう。
しかも、なかじーさんも野球未経験だし、仲間が欲しいのかも知れない。
 
「分かりました。やってみます。」
 
私自身、早起きは苦にならないので参加に支障は無かった。
また、早朝は家族にも迷惑は掛からない時間帯。
後は、未経験の野球についていけるかどうか。
こうして私の40の手習いとしての草野球キャリアが始まった。
 
話はなかじーさんに戻る。
なかじーさんは、昨年からチームに参加し、初心者ながらテニス経験者としての
意外性のあるバッティングセンスを存分に発揮し、結構いい場面でヒットを放って
チームに貢献したらしい。監督さん曰く、
 
「あいつ、打ち方はあんまり綺麗じゃないけど、何故かヒットが出るんだよなあ。」
 
なかじーさんは、普段はセカンドを守っているが、守備や走塁は決してうまい訳ではない。
(野球初心者の私が言うのも変だが・・・)
セカンド方向に打球が飛んだ時は、まるでライトの私の所に飛んできたように
ハラハラしてしまう。
なかじーさんは、今シーズン、走塁面での大チョンボや守備でのエラーをしながらも、
たまに試合に出場していた。
しかし、バッティングの調子があまり上がらず、最近は打率の低下を気にしていた。
新加入の私がポンポンと調子良くヒットを量産するのを尻目にスランプに陥ってしまっていた。
 
うちのチームは基本的には、試合しかやらない。(今年の練習はシーズン前の2回だけ)
練習を行わない為、我々初心者は、どうしても守備練習やバッティング練習が不足がち。
このため、私となかじーさんの初心者2人で毎週土曜日の朝、自主トレをしようと決めた。
自主トレの詳しい内容は、過去の日記にも書いているが、キャッチボールに始まり、
どちらかが打撃投手となり、もう1人が軽くバッティングをする程度の練習。
 
初心者同士の練習の為、投球も定まらず、時々バッターにぶつけたり、植え込みの茂みに
転がったボールを2人で泥だらけになりながら探したりして最初は満足な練習が出来なかった。
しかし、自主トレを何回か重ねるにつれ、なかじーさんの友人も参加するようになり、
3人で徐々に練習内容を工夫してマシな練習になってきた。
 
そして前回の試合の内容をお互いに反省したりもする。
 
なかじーさんが走塁ミスをやってしまった次の自主トレで、私も気付いた点をアドバイス。
 
「アウトカウントとか、点差とかをきちんと認識して走塁しないとダメですよ。」
「どの塁に誰がいるかとか、よく見て下さいね。」
「2アウトの時は打ったらゴーですよ。」
 
ある日、自主トレの中で、なかじーさんは、打撃フォームを変えようと決心したらしい。
初心者なのでどんなスタンスがどのような長所短所があるのか分からなかったが、
スランプから脱出する為に、阪神の赤星選手を真似て極端なオープンスタンスの構えから
インパクトの瞬間にスクエアに戻すような構えで打撃練習を始めた。
 
「これ結構、いけるかも知れないなあ。今度の試合これで試してみるよ。」
 
次の試合、なかじーさんは途中交代で、1打席だけ新フォームで打ったらしいが結果は出ず。
次の自主トレの時に私に聞いてきた。
 
「俺の新フォームさあ、誰かベンチで何か言ってなかった?」
 
私自身、迂闊にも、なかじーさんが新フォームで打ったことに全く気付かなかった。
ベンチでも話題にならなかった。
 
「さあ、特に、誰も何も言って無かったですけど。」
 
「そうかあ。」(寂しそうに)
 
そして、迎えた昨日の試合、みんなの注目はコージ苑さんの息子さんのデビュー。
初回、軽快なフィールディングで上々のデビューを飾った息子さんの感想を2人で話した。
 
「いや、さすがに上手いねえ。」
 
「そうですね。セカンドとは大違いですね。」(私も一言多い!)
 
その後、なかじーさんは手痛いトンネルをやらかしてしまい、チームの失点に繋がった。
しかし、ファーストベースカバーで際どいアウトを取り、みんなを驚かせたりもしていた。
 
「よくファーストのベースカバー入りましたね。」
 
「何か、知らない間に入ってたよ。」(照れながら)
 
そして昨日の日記でも書いたように2点ビハインドで迎えた最終回裏の攻撃。
コージ苑さんの息子さんが2点タイムリー2ベースで同点とし、2死2塁。
打席は、この日バッティング好調で2打数2安打のなかじーさん。
私は、なかじーさんの打席を3塁コーチャーズボックスから静かに見守っていた。
 
そして・・・チームみんなの希望を乗せた打球は、レフト線へ落ちた。
 
2塁ランナーがホームイン。サヨナラだ! \(^o^)/
メガネ越しに見る、ホームベース付近に集まるみんなの姿が、何かでにじんで見えにくい。
チームメイトは、ヒーローのなかじーさんを放置して、ホームベースで歓喜のハイタッチ!
しばらくしてから、誰かが言った。
 
「あれ、そういえば、打のヒーローは?」
 
見ると、なかじーさんが何事も無かったかのように少しハニカミながら、セカンド方向から首を
ひねりつつ戻ってきた。
(なかじーさんのことだから、サヨナラって気付いていないのかな・・・いや、さすがにそれは無いか)
 
この試合で3安打のなかじーさんは試合前の9−2で打率.222から12−5で打率.417となった。
(私は試合前24−9で打率.375から27−9で打率.333となり、なかじーさんに抜かれた。)
 
帰り際に、なかじーさんがポツリと言った。
 
「○○君、バッティングって難しいよなあ。何でライトを狙ったのに、レフトに飛んだんだろう?」


 
なかじーさん、明日も自主トレ頑張りましょうネ。次の試合も頼みますヨ。赤星打法で・・・
神様は努力する人のことをきっと見てますヨ!


 
(雨垂れ石を穿つ:小さな力でも根気よく続ければ成功することの喩え) 



(終)

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