今やリーグを代表する救援左腕に成長した山口鉄也はファーム時代どんな投手だったか?

  • 舎人
    2012年06月07日 06:02 visibility2159
先日のソフトバンク戦で開幕からの連続無失点記録が途絶えた山口ですが、そんなショックを微塵も感じさせず、昨日の試合では1イニングを無失点に抑えていました。今やリーグを、いや日本球界を代表する救援左腕に成長した感があります。今までは風神の異名の通り、スライダーが武器だった山口ですが、今年はシュートを多投して成功しているとか。昨年まででも素晴らしい活躍だったのに、さらに進化を遂げているようです。

この山口は2005年のドラフト入団です。同期には3人のサウスポーが入団しました。1人は高校生ドラフト1位の辻内、もう1人は本ドラフト6位の深田です。山口はというとテストで入団したということもあってその年から導入された育成ドラフトの方での入団でした。つまりはこの3人の中で、最も期待をされていなかった投手という事です。しかし、現在の彼らの立ち位置は全く逆になってしまいました。辻内はプロ入り7年目になるというのに、いまだ一軍のマウンドに立つ事ができず伸び悩んでします。深田に至ってはファームでローテーションを任される事が精一杯で一軍では通用せず、2010年限りで現役を引退してしまいました。プロ入り前の彼らの実力や評価はそのドラフトでの順位の通りだったのでしょう。しかし、何時この立ち位置は変わったのか?プロ入りしていきなり変わったのか?変わったとしたら何時なのか?そんな事を私の当時の記録から考えてみました。

私はルーキーの山口を4試合ほど観戦しているようです。山口は当時はまだ育成選手で、この記録の通り、コントロールの悪い凡庸な投手だった感じです。それでもこの年防御率は1.61を記録し、秋季キャンプで支配下入りの話が上がったりしていましたが、どこかケガをしたか何かでそれを見送られてしまったようでした。確かに成長は認められつつあったのでしょうが、すぐに支配化入りさせるほどの投手ではなかったと思われたのです。同期で入団した辻内はハワイのリーグで150キロを連発して話題になっていたり、深田はMLBとの親善試合でメジャーの2冠王ライアン・ハワードから三振を奪って注目されていました。おそらくこの時点では山口も辻内も深田もほとんど差がなかったのではないかと思います。



2006年6月13日 イースタンリーグ対ヤクルト(in戸田球場)

七回裏ニ死一三塁から登板
代打野口:見逃し三振
七回裏終了



2006年8月27日 イースタンリーグ対日本ハム(in鎌ヶ谷球場)

九回裏
工藤:センター前ヒット(B)
陽:ライト前ヒット(SB)
無死一二塁
代打尾崎:四球(BSBBF)
無死満塁
川島:見逃し三振(FSB)
鵜久森:空振り三振(SKF)
代打駒居:ショートゴロ(S) 
三者残塁、無失点



2006年9月4日 イースタンリーグ対湘南(in平塚球場)

七回裏
田中充:空振り三振(内角ストレート、SK) 
河野:四球(外角に惜しくも外れる、BBSB)
北川:ライトフライ(インローストレート、BF) 
西崎:サードゴロ(初球インハイストレート) 
一塁ランナー残塁、無失点



2006年9月23日 イースタンリーグ対インボイス(inジャイアンツ球場)

七回表
宮崎:ストレートの四球(128キロB、125キロB、133キロB、139キロB、アウトロー134キロ)
高波の打席で宮崎が盗塁
無死二塁
高波:カウント1-2から空振り三振(136キロF、116B、125S、インロー126キロ)
貝塚:初球投ゴロ(138キロ)
後藤武の打席で山口が暴投
二死三塁 
後藤武:カウント2-1からセカンドゴロ(122キロB、129キロB、129キロS、外角140キロ)
サードランナー残塁、七回表終了、無失点、MAX140キロ



山口が劇的に変化を遂げていたのは2年目の2007年のシーズンからだったと思います。支配下登録第1号を松本哲也に先を越され、相当悔しい思いをしたことでしょうが、心に期すものがあったのだと思います。一冬超えた山口は何か凄みを感じされる投手に変わっていました。何が一番変わったのかというと球速が5キロ以上アップしているのです。「あれあれ、山口はこんな投手だったっけ!?」そんな戸惑いの中レポをした覚えがあります。ルーキーの頃の山口はどちらかと言うとスライダーやチェンジアップを駆使する変化球投手のイメージが強かった感じでした。それが、いつの間にか140キロ台をどんどん叩き出す本格派に進化していたのです。おそらく小谷コーチの下で相当鍛錬を積み、1から投球を見つめ直した結果なのでしょう。



2007年3月3日 春季教育リーグ対インボイス(in西武第二球場)

五回裏
江藤ショートゴロ
貝塚一塁ゴロ
原投ゴロ 
三者凡退、五回終了、無失点

六回裏
野田:ショートゴロ
大崎:四球(カウント2-3から) 
黒田の打席で大崎が盗塁死
黒田:レフト前ヒット(アウトハイストレート)
高木:見逃し三振(内角変化球) 
六回裏終了、無失点

七回裏
内田:セカンドゴロ
松坂:大きなレフトフライ 
江藤の代打柴田:見逃し三球三振(内角変化球) 
三者凡退、無失点

3イニングを投げ被安打1、与四球1、奪三振2、無失点



2007年3月10日 春季教育リーグ対楽天(inジャイアンツ球場)※楽天主催

一回裏
中島:ショートゴロ(外角129キロ)
枡田:バットを折りながもレフト前ヒット(外角138キロ)
鷹野:右中間エンタイトル二塁打(高め120キロ) 
一死二三塁
山下:ショートゴロ
枡田が本塁封殺
二死一三塁
横川:ライト線タイムリー二塁打(インハイ126キロ)、0対1
憲史:セカンドゴロ(高め138キロ) 
ニ者残塁、一回裏終了

二回裏
河田:一塁ゴロ(内角116キロ)
山崎隆:サードゴロ(真ん中126キロ)、 
西村:見逃し三振(三球、インロー138キロ) 
三者凡退、二回裏終了

三回裏
中島:捕ゴロ(真ん中119キロ)
枡田:肩に痛くない死球(カーブのすっぽ抜け?) 
鷹野:ライト前ヒット(外角137キロ)
一死一三塁
山下:空振り三振(アウトハイ129キロ)
横川:空振り三振(アウトロー131キロ)  
ニ者残塁、三回裏終了

先発をして3イニングを投げ被安打4、与死球1、奪三振3、失点1、MAX141キロ、ストレートの平均球速138キロ



2007年3月27日 イースタンリーグ対ロッテ(inロッテ浦和球場)

七回裏
神戸:空振り三振
佐藤:セカンドゴロ
青松:ショートゴロ 
三者凡退、七回裏終了、無失点

八回裏
金澤の代打新里:サードゴロ
細谷:センター前ヒット
田中雅:投ゴロ併殺打(強烈な打球、山口好フィールディング!) 
八回裏終了、無失点

九回裏
堀:空振り三振(カウント0-3からよく立て直す)
ワトソン:セカンドゴロ
南:空振り三振
三者凡退、九回裏終了、無失点

3イニングを投げ被安打1、与四球0、奪三振2、無失点



2007年4月4日 イースタンリーグ対グッドウイル(inジャイアンツ球場)

七回表二死満塁から登板
柴田:カウント1-3からショートゴロ 
七回表終了

八回表
高木浩:投ゴロ(外角146キロ)
代打黒田:サードエラー出塁(高いバウンドの打球を円谷が合わせられず)
松坂:フルカウントから四球
一死一二塁
黒瀬:ショートゴロ併殺打(内角143キロ) 
八回表終了、無失点

1回//3イニングを投げ被安打0、与四球0、奪三振0、無失点

山口はエラーと四球でピンチを招きましたが強気の投球で無失点。 
今日はやたらと速い球速が出ていました。MAXは146km、ストレートらしき平均球速は141〜142km



2007年4月11日 イースタンリーグ対日本ハム(inジャイアンツ球場)

八回表、捕手星
代打尾崎:レフトフライ(真ん中スライダー)
渡部:投ゴロ(インロー141キロ)
駒居:ショート内野安打(高め143キロ)
陽:投ゴロ(真ん中140キロ)
駒居残塁、八回表終了、無失点



2007年6月19日 イースタンリーグ対湘南(in横須賀球場)

六回裏
秦:空振り三振
木村:空振り三振(インスラ)
河野:ショートゴロ
三者凡退、六回裏終了、無失点

七回裏
ミツルの代打:西崎レフトフライ
呉本:空振り三振(低め変化球)
内藤の代打:斉藤いい当たりのサードゴロ
三者凡退、七回裏終了、無失点

2イニングを投げパーフェクト!奪三振3



山口は2軍での好投が認められ、4月の末ついに支配下登録されます。山口と辻内や深田の立ち位置が変わったのは、彼らが2年目の4月、山口が支配下登録された事で決定的になったのだと思います。支配下登録に続いて一軍初登板&初勝利と山口の成功は続きます。そして2008年の新人王、2009年の最多ホールドとその後の山口の活躍は留まるところを知りません。

私は入団前と入団後でここまで評価が上がった選手を他に知りません。本当にすごいといつも感心しています。山口の成功の理由を考えると、強靭な体力の持ち主であり、そのポテンシャルを余す事なく発揮できるだけの投球スタイルを確立できた事にあると思います。単身渡米し、ただがむしゃらに投げていただけの“投げ屋”が、巨人に入団し、小谷コーチらに師事してテクニカルな部分を習得し、始めて“投手”になったのだと思います。ただ、それ以上に山口という投手を説明しなければばらないことは、窮地に追い込まれた時の突破力です。開き直りが素晴らしい。それはこの入団したばかりの2006年や2007年の記録からも伝わってきます。どうやらそういった胆力がその後の山口の成長を促し、今の成功につながっている気がすると私は思います。

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