故 畑田国男さんの「兄弟型分類学」(2)長男(第一子)の選手について
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舎人
2011年02月14日 05:19 visibility4506
兄弟型についての話の2回目をします。今日は長男(第一子)の選手についての話です。
前回、選手時代の原辰徳のことを長男であるがためにチャンスに弱いという話をしましたが、畑田さんは長男は名監督になると書いています。V9の川上哲治も阪急黄金時代の上田監督もイチローを見出した仰木監督も長男なのだそうです。何やかんや言われながらも在籍7年で優勝4回、日本一2回、WBCも優勝に導いた原辰徳は選手時代よりも監督になってからの方が輝きを増しているのかもしれません。
兄弟型A(第一子)の男は「君臨型」の名監督になる
長男とは小さいころから「お兄ちゃんなんだから、ちょっとぐらいガマンしなさい」「お兄ちゃんなんだから、弟や妹の面倒をみてやりなさい」と、兄弟型Aの男は、ガマンや人様の世話を強いられて大きくなった。周りの人間をリードして、引っ張ってゆくことに慣れているのだ。
その上、「頭を使うから、フットワークは重いけれど、大きなチョンボは起こさない。決してバカはやらないが、ナインたちの重鎮として、その存在感は圧倒的に大きい。
現役時代の実績はさほどでなくとも、またグランドでの動きにはさほどの輝きはなくとも、マネージャーとしてその才を発揮するのが、兄弟型Aの男の特長である。
兄弟型A(第一子)の監督はズバリ長期安定型なのだそうです。この畑田さんの説が当たっているとすれば、原監督はこの先しばらく監督を続けることでしょう。
畑田さんの兄弟型分類では兄弟型A(第一子)の特徴を次のように説明しています。
兄弟型Aの選手は優等生である
兄弟型Aは、両親にしてみれば「天から授かった初めての子」だ。両親はこの子を、理想に燃えて周囲の期待通り育てようとする。家にとっての跡取りだから、無理なチャレンジをさせることは少ない。普通ならばお勉強に精を出し、一流大学、一流企業へと願うのが兄弟型Aの男のコースである。そんな兄弟型A型が球界に入る場合は、親のホットな「期待が込められているケースが多い。兄弟型Aが生まれた時の父親はまだ若いのだ。兄弟型Aの選手に「親子鷹」と呼ばれる父親の存在が、しばしば見られる由縁である。そして、兄弟型Aは、父親の言うことを本当によく聞く「優等生」なのである。
兄弟型Aの選手はチャンスに弱い
兄弟型Aの選手は根っからのマジメ人間で、責任感がすこぶる強い。野球もプロ入りともなれば遊びではなく「お仕事」と理解して、マジメに取組んでしまう。彼の背は、チームメイトや監督や家族、郷土の応援団、大勢のファンの期待をモロに受けている。大観衆の歓声に「なんとか応えなければ」と肩に力が入り、結果、平凡な内野フライを打ち上げてしまう。俗にいうプレッシャーに弱い、という現象がよく見られるのである。
兄弟型Aの選手は理論派である
長男(第一子)の選手は、優等生で「頭」がいいから、野球もつい「頭」でやってしまう。本来、遊びであるはずの野球に「理論」を持ち込んだり、果ては「野球道」などどいう大層なカンバンを持ち込んで、自分を「よく見せよう」とするのが長男(第一子)の選手の常である。
兄弟型Aの男は投手に向いている
野球における「投手」は、ナインの中でも特別な立場が与えられている。「投手が投げなければ何事も始まらない」「マウンドはナインの誰よりも高い所にある」「投手はゲームの70%を握っている」このようにいわれている投手は誇り高きポジションなのである。しかし、プロ野球選手の選手寿命としては一番短いのが投手であることも事実。肩や肘を壊したら一巻の終わりと言う厳しさ。それでもオレは他の奴らより一段高いマウンドに立ちたいと、「実より名を取る」のが、兄弟型Aの男のプライドである。これが合理的思考の兄弟型C(末っ子)の投手ならば、高校時代までは投手として目立ち、プロ入り後、打者に転向してしまう。
兄弟型Aの打者はアベレージ・ヒッターである
「頭」で野球をしてしまう兄弟型Aの選手は、反射神経がやや鈍い。だから自分のペースで緩急をつけて攻撃をしかける投手にはよいが、「パッときた球をバシっと打つ」打撃の才では、兄弟型C(末っ子)の選手よりも劣りがちである。努力に努力を重ねても、川上哲治がいいところ。つまり兄弟型Aの打者はスーパー・スラッガーではなく。テキサス・ヒットで稼ぐアベレージ・ヒッターにふさわしい。
さらに、兄弟型A-M(男子のみの兄弟の長男)の特徴は次の通り。
兄弟型A-Mの男はエースになりうる
兄弟型A-Mの男が「打撃」に向いていないのは、理論や理屈で野球をやってしまうからだ。それが、兄弟型A-Mになると、この理屈っぽさに権威主義が加わってくるので、ますます遊びとしての野球をプレイしにくい状況になってくる。兄弟型A-Mの男は「人間関係」をタテに見る性癖があり、強いものには徹底して弱く、弱いものには滅法強い、という勝負パターンを身につけている。兄弟型Aの男が「投手」に向いているように、兄弟型A-Mの男も「投手」として大成し、エース級に成長するケースが多いのだが、以上のような理由で、粘り強さに欠けるウラミがある。持ち味を発揮できる時は、徹底的に押さえ込めるのだが、クロスゲーム、ビッグゲームのここぞという時に、完膚なきまでに打ち込まれてしまう。この勝負弱さは、「プレッシャーに対するモロさ」と「油断」の複合構造を持っているので、わかっていてもなかなか直せないのである。
兄弟型A-Mの選手は、無表情である
男兄弟の中でもまれて育ったM(男子のみの兄弟)の男は「男らしさ」が最高だという価値観を持っている。特に、Mの兄弟の中でも兄弟型A-Mの男、つまり長男は、弟たちには死んでも弱い部分を見せまいとして肩に力が入っているものである。だから、喜怒哀楽を顔に出すことがない。現役時代、江川卓投手は夫人に、「あなた、試合に勝ったあとぐらい笑ってみせたら」といわれて頬が張れ上がるほど夫人を殴ったという。これも、夫人の一言が兄弟型A-Mの亭主の痛いところをついていたからにほかならない。
兄弟型A-Mの選手は仕事が大好きだ
日本の男は、おしなべて仕事が好きだが、その中でも兄弟型Aの男は特に仕事が好き。さらに兄弟型A-Mの男となると、赤丸付きの仕事大好き人間になってしまう。要するに根がマジメなのである。モテモテのプロ野球選手の中で、女遊びが異例に少ないのは、兄弟型A-Mの男が幼い時から弟たちの手本になるように堅く育てられたから。つまり、遊びに対するフットワークは鉛の靴をはいたように重い。その分、家に帰るとよきマイホーム・パパになる。
この説は今から20年以上前に書かれた本に依るものなので、現在では少し事情が違ってきている気もしますし、いまだにその通りだと思わせるものもあります。
大きな特徴の1つである「兄弟型Aはあまり打者に向いておらず、なったとしてもアベレージ・ヒッターである」を検証してみると、2002年以降に手元のデータを調べてみた限り、2002年~2009年にドラフト指名を受けて入団した選手のうち兄弟型Aでレギュラー級になったバッターは、村田(横浜)、鳥谷(阪神)、糸井・鶴岡(日ハム)、長野(巨人)、大島(中日)くらいしかいないようです。それどころか、ドラフト上位で指名されながらも未だ目が出てこないでいたり、既に引退してしまった長男の選手は、森岡(中日2002年1位)、白浜(2003年広島1位)、炭谷(西武2005年1位)、平田(中日2005年1位)、田中(中日2005年1位)、上田(ヤクルト2006年3位)、橋本(阪神2006年3位)、伊奈(ソフトバンク2006年3位)、伊藤(オリックス2007年3位)、松本(2008年横浜1位)などがいるのです。成功例が少ない割に失敗例が多く、兄弟型Aはあまり打者向きではないようです。
もう1つの大きな特徴「兄弟型Aは投手に向いている」はどうか?兄弟型Aで戦力になった投手を調べてみると、館山(ヤクルト)、永川(広島)、内海(巨人)、加藤(オリックス)、和田(ダイエー)、押本(日本ハム→ヤクルト)、斎藤悠(広島)、ダルビッシュ(日本ハム)、吉見(中日)、甲藤(ソフトバンク)、田中将(楽天)、大嶺(ロッテ)、前田(広島)、増渕(ヤクルト)、篠田(広島)、平野(西武)、小松(広島)、榊原(日本ハム)、大谷(ロッテ)などがいます。これは正に多士済々、キラ星のごとき陣容です。指名される人数も投手の方が圧倒的に多いので、成功例で投手の方が多いのは確かですが、それを加味しても兄弟型Aの投手の凄いこと!特に、ダルビッシュや田中将、前田健、吉見といったセ・パを代表するエース格の投手が兄弟型Aというのはこの説を裏付けるものかもしれません。
内海は男ばかりの三人兄弟の長男で兄弟型A-Mの投手です。彼を畑田さんの説に当てはめると責任感は確かに強いものの、いざという時に頼りにならないところなんか正にその通りだと思います。どんなに打ち込まれてもマウンドで表情を変えないことなども当たっていると思います。
しかし、村田はアベレージ・ヒッターではなく、典型的なホームランバッターだろうと思う。また、内海と同じく男ばかりの三人兄弟の長男の鳥谷は、この説の通りマイホーム・パパだろうか?夜の三冠王などと言われ、ずいぶん遊んでいるような話を聞きます。何にでも例外はあるあるのでしょうが・・
2005年以降、461名の選手がドラフトで指名を受けていますが(育成ドラフトを除く)、分かる範囲内ではそのうち108名が長男のようです。投手は68名、野手は40名。
次回は兄弟型B、中間子について考えてみたいと思います。
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- 事務局に通報しました。
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