Pavel Nedved 『英雄の背中を見つめて』

  • uco
    2006年06月25日 08:20 visibility94

 

 

6月23日 25時 (日本時間)

 

 

ネドベドはチームメイトたちと抱き合った。

 

チェコ代表の選手と。

 

ユベントスの選手と。

 

 

 

数分前、チェコ代表の予選敗退と、同時にネドベドのチェコ代表としての最後を告げる

ホイッスルが吹かれた。

 

 

「歳には勝てない」

 

 

32歳のチェコの英雄は、国を背負って戦うことから身を引く。

 

 

 

 

 

チェコの2006年W杯の行く末を決める、大事な一線。

 

v.s.イタリア

 

 

初戦アメリカに圧勝したものの、2戦目でガーナにまさかの敗北。

 

主力選手を欠き、相手がイタリアという苦しい状況に置かれたチェコ代表。

 

 

 

しかし、負けられない。

 

 

 

チームの誰しもが思う。

 

 

 

だから、

ボールを追う。

走る。

守る。

攻める。

 

 

ネドベドは、いつものようにピッチのあちこちに現れた。

 

 

 

まるで自分の存在をそこに焼き付けるためのように。

 

サポーターに自分の姿を誇示するように。

 

チームメイトを導くように。

 

 

 

スペースに、見方にパスを出し、

ドリブルでかわし、敵にプレスをかけ、

そしてミドルからの強烈なシュートを放つ。

 

 

皮肉にもネドベドのゴールを許さなかったのは、

ユベントスでチームメイトのGK、ブッフォンだった。

 

 

チェコの英雄は、代表を決勝トーナメントに導くことは出来なかった。

 

 

しかし、1試合の中で、ゴールを決めなくともあそこまで存在感のあるプレイヤーがいるだろうか。

実況で何回彼の名前が呼ばれただろうか。

何人のサポーターが彼の姿を追っただろうか。

 

 

まさに「背負って」いた。

その責任を彼はどう感じただろう。

 

しかしきっと、彼はサッカーを楽しんでいたから、愛していたから

重荷ではなかっただろう。

 

期待に応えるというよりは、きっとただ自分の誇りたのために、

勝利のために、彼は走り続けたのだ。

 

 

そしてその姿は自然と人々を惹きつけた。

英雄となった。

 

 

 

敗退が決まったとき、つまりは引退を意味するが、

その英雄の目には涙はなかった。

 

 

だた選手たちと抱き合っていた。

 

 

 

「今までありがとう」と伝えるように。

 

 

 

 

あまりにもその姿が大きく見えて、逆にわたしは涙を流してしまった。

 

もっと”チェコ代表”としてのネドベドを見たかった、と。

 

きっと一番悔しいのは彼自身なのに。

 

もっと戦わせてあげてほしかった。

引退を決意した後だからこそ、納得がいくまで、最高の舞台でその必死で全力なプレイを。

 

 

しかし、もう終わってしまった。

チェコの英雄は、その闘志は変わらずに、ユベントスの選手としてまた走る。

 

 

そしてまたその姿に観客は魅了される。

 

 

 

英雄の背中には誇りが背負われ、

それを見つめるわたしたちは、だから彼に惹かれるのだ。

 

 

 

 

 

「お疲れ様。チェコの英雄、Pavel Nedved!」

 

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