らんぼうもの

  • waya
    2006年08月27日 20:18 visibility56

僕がサッカーを始めたのは中学のときだった。子供の頃から剣道をやっていた僕にとって、チームプレーは衝撃的で、ものすごく楽しかった。戦っているときに仲間がいることが嬉しかった。
剣道は勝っても負けても自分のせいだけど、サッカーは自分のためだけじゃない。仲間を信じていなければ走ることはできない。そして、勝ったときの仲間の笑顔が、僕にはたまらなく魅力的だった。

 

中学の剣道部を辞めるとき、部室に呼び出され、先輩に理由を聞かれた。サッカーをやると答えたら「部」も無いのにどうやってやるんだと殴られた。お前は小学生の頃からやっていた剣道を捨てるのかと、また殴られた。その他いろいろと理由をつけては殴られた。さんざん殴られて、顔を腫らした僕が部室を出ると、さっきまで僕を殴っていた先輩達が「頑張れよ」と言ってくれた。それまで堪えていたものが溢れ出した。

 

放課後の校庭は野球部に占領されていた。グラウンドが無いという理由でサッカー部を作れなかった。同好会という形でやっていたので人数もいる、生徒会も職員会も「部にしたい」と言ってくれている。だが、サッカー部を作ったところで練習するグラウンドがない。「部」になってしまったら、いままでのように空き地で適当にやるというわけにはいかない。毎日無料で使えるグラウンド。そんな都合の良い場所があるとは思えなかった。

絶望的な気分で、空き地で練習を続けていたある日、僕は突然思いついた。

 

翌日の放課後、道を挟んで向かいにある小学校の校長室に、アポも取らずにいきなり押しかけた。

「向かいの中学の2年です、お願いがあります」校長先生に理由を説明し、放課後のグラウンドを貸して欲しいと願い出た。
今から思えば恐ろしく乱暴なことをしたものだ。断られて当然だ。
だけど、校長先生はニコニコと僕の話しを聞いてくれた。そしてひとこと。
「いいですよ、使って下さい」
校長先生も乱暴者だった。

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