フロンターレサポよ、ありがとう。 〜Road To Tenjiku〜 後編

  • ドゥイ
    2006年04月16日 22:20 visibility114

靴ヒモをすばやく結びなおし、前方に見える夫婦ランナーを追う。が、なかなか差は縮まらない。「かなりハヤい」。遮光性に優れるゴーグル、川風を防ぐウィンブレ、機能性の高そうなスパッツ。よく見ると中年というより老年という感じだが、競技者のオーラをまとっている。「こいつはデキる」。“キャプテン”気合を入れなおす。

  

ほどなくして捉える。が、依然ハイペース。まだ8キロ中2キロを過ぎたところ。「ここで無理して抜いても、体力的につらい。ここは追走して勝負どころを待つんだ」。体はホットに、頭はクールに。しかし、敵もさるもの。夫婦で交互に先頭に立ち、風の抵抗による体力の消耗を防いでいる。「くっ、このままじゃヤバい。けれど、かならずチャンスはくるはずだ」。おばさん(おじさん)、おじさん(おばさん)、“キャプテン”。1−1−1の基本フォーメーション。

 

4キロ地点通過。まだ余裕は残っている。「ナイスVAAM」。明治乳業に感謝。と、前方の夫婦がちょっとペースダウン。左に寄り、“キャプテン”に道を譲ろうとしている。「あれ?さすがに疲れたのかな?」。ついに“キャプテン”が先頭に踊り出た。そのままの勢いで突き放しにかかる。「勝った」。

 

「タッ、タッ、タッ、タッ」。背後から忍び寄る軽快なリズム。やつらの足音だ!確実についてきている。「罠だったのか・・・」。追うものの強さ。追われる“キャプテン”おびえる。「今なら、暗い夜道を一人で歩く女性の不安な気持ちがわかる気がします」。前方から来た自転車を避けながら後方をチラ見。「おばさんだ!」。おじさんはいつの間にか脱落している。「もしや、ストーカー?」。額を伝う汗が冷や汗に変わる。「キャー、こわいYO!」。愛の逃避行。プレッシャーをかけられ徐々に消耗していく体力&精神力。

 

6キロ地点。まだおばさんの足取りは軽い。どこまでも続く我慢くらべ。「パトラッシュ、僕、もう疲れたよ・・・」。と、その時、どこからか聞こえる大声援。等々力競技場だ!河川敷から程近い距離にある同競技場では、本日、フロンターレvsアルディージャ戦が行われていた。ホームのフロンターレサポーター「ブルーフレンズ」による空気が揺れるほどの大合唱。「ありがとう、“キャプテン”のために」。声援インターセプト。残り1キロ、ここが勝負どころだ。「舞い降りろ、ジュニーニョ」。フロンターレが誇るスピードスターとバーチャルフュージョン。キュイーンと加速。

 

残り300メートル。さっきの加速で、エンプティーマークに灯りがともった。あとは気力だけ。そこに、聞きなれた足音。「おばさん、僕、もう疲れたよ・・・」。最後の力をふりしぼり、足を動かす。残り100メートル。「学生時代のつらかった練習を思い出せ。自分に負けるな」。必死。アゴ上がる。残り50メートル・・・30・・・10・・・。「勝ったーーー」。心の中で叫びながら切る、見えないゴールテープ。充実感を胸に芝生に倒れこんだ。と、仰ぎ見るは、駆け抜けていくおばさんの後姿。

 

「あなたのゴールは、天竺ですか?」。団塊世代の底力をあらためて感じた団塊Jr“キャプテン”の一日。

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