
「監督という仕事」 ~アルベルト・ザッケローニ 最終部~
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ペスカドーレ
2011年12月23日 21:10 visibility301
SAMURAI BLUEのアルベルト・ザッケローニ監督が語る「監督とは?」
育成の段階で、あまり結果を重視し過ぎずに、きちんと個としての選手を育て、個人としてサッカーの本質を理解させること。チームとしてのサッカーの本質を理解させながら選手を育てていくこと。特に育成のところでは、勝ったから素晴らしいということではなくて、どれだけ良い選手が輩出できるかが大切になってきます。
現在の日本の育成システムは非常に素晴らしいですし、イタリアから来てみても、かなり前を走っていという印象を受けます。現在のイタリアでは、ユースの監督やジュニアユースの監督でさえも、自分の成功のためにチームを強くして結果を出すことだけを追い過ぎているところがあります。若い選手たちがプレッシングやオフサィドトラップなどを覚えていくわけですが、サッカーとは何なのかが分からないままであったりする。特に足りないところはベースの技術力と、マークをする動き、マークを外す動きです。戦術の話をする中で大切になってくるのが、時間とスペースです。ボールをどのタイミングでどこに入れるかということが非常に大切になってきます。これをベースにして、戦術は何なのかということを自分の頭で考え始めるようにします。
私自身は10歳の指導からキャリアを始めたわけですが、当然10歳の子供に戦術的な細かいことをさせるのではなくて、基本的な、ボールと自分から一番近い味方と相手を見るように、という話をします。中学3年生くらいになるとしっかり教えた方が良いかと思いますが、一番大切なのはベースのところの技術をしっかり創ってあげること。マークをどう外すのか、どうつくのか、を重点的に教えた方がいいかと思います。
ベースの技術をつくるというところでも、あまリスピードに乗らせるということではなく、まずはボールをしっかりと扱えるようにさせます。パスの精度であったり、ショートパス、中距離のパスをやらせます。動きの中でのパス練習もトレーニングに組み込まれてぃると思いますが、その中でもやはリボールを受ける人間は必ず動きながらボールを受ける。ボールを迎えに行く動きをさせる。それくらいの年代であればまだフィジカルのことは言わないで、技術と個での戦い方、個でのマークの仕方、外し方を教えます。目安として15歳くらいになってからはチームとしての戦術にも入っていきます。15歳まではいかにマークにつくか、外すかをしっかりやって欲しいと思います。イタリアは、昔は世界レベルのディフェンスがいると言われていましたが、それも今は育成のところでおろそかにしてしまっているので、今はあまり強くありません。
育成年代の監督もディフェンスライン、チームで守るということはよく教えるのですが、局面での1対1の守り方が身についていないと良い選手は育ってきません。イタリアのセリエAのハイライトを見ても、10得点中7点くらいはクロスボールからの失点で、ディフェンスラインとしての守り方は知っていても、ボールと相手とのいわゆるマンマークになった状況での守り方が身についていないということだと思います。その原因を突き詰めていくと、育成のところでおろそかにしたことが挙げられます。
今の日本の選手は皆、非常に良い育成年代を過ごしてきたと思っています。持っているベースの技術力は非常に高いと思います。チームとしての戦術もある程度理解を持ってプロになってきているという印象があります。育成のところはすごくよくやっているというのが正直な印象です。皆さんもご存知のように、ワールドカップでも良い結果でしたし、なでしこジャパンも優勝しましたし、アジア大会もアベック優勝、アジアカップも優勝しました。ユニバーシアードも優勝しましたし、これは良い選手がどんどん出てきている証拠なのではないでしょぅか。皆さんの仕事が形になってきてぃるのではないかと思います。やはり日本の一番すばらしいところは、日本サッカー全体が、向上心を持っているところだと思います。他の大陸を見ても、アフリカに関しては少し向上心を失ってしまったのかと思いますし、ヨーロッパと南米のビッグに関しては、自分たちが世界ナンバーワンだというプライドでやっていますから、日本がヨーロッパ、南米に対して、どんどん差を縮めてきているのが現実なのではないかと思います。向上心を失わないように、日本は気をつけて欲しいと思います。
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