北海道放浪記~史上最高の夏
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仲本
2014年07月26日 14:20 visibility860
試合開始直前に球場に到着してみると、スタンドはかなり埋まっていて、座席を確保するには先客の中を割って入らないといけなかった。一塁側寄りになんとか落ち着いた。南北海道大会は準決勝、そろそろ「もしかして甲子園?」と見るほうが意識しはじめるころだ。前日観戦した北北海道大会は準々決勝だったのでまだのんびりしていたが…。
一塁側に浦河、三塁側に小樽潮陵。どちらも全校応援だそうで、ブラスバンドも来ている。
三塁側はオレンジ色のTシャツ、メガホンで埋め尽くされてものすごい声量だ。
一塁側も負けてはいない。生徒の数は少ないが、地元の人も結構来ている様子。
~♪~
1回表、浦河の攻撃前にブラスバンドが奏でたのは、G1ファンファーレ(東京版)。浦河は馬産地として有名な町だが、高校野球のスタンドで聞くことになるとは…、スタンドやんやの喝采で、試合が始まった。盛り上がるねえ、この曲。
(浦河・菊地悠投手。足を高く上げるのが特徴的な二年生エース)
(小樽潮陵・原田投手。中学時代はシニアリーグで全国大会までいったそうだ)
両チームともここまで打線は好調。この試合も序盤から活発な打撃戦となったが、中盤以降は潮陵が得点を重ね、8-4で最終回まできた。
「もうこの試合は決まりかねえ」「いやあ、まだまだわからないですよ?」
こんな会話が聞こえてきた。会話の主は後ろに座っている年配の野球ファンの男性と、札幌近郊の大学生で、どうもその場で偶然居合わせたようだ。学生のほうは胆振(室蘭とか苫小牧とかあのあたり)の出身で、道南の浦河ががんばってここまでやってきたので見に来たという。そう、野球は最後までわからない。ではあるが。
9回の表、再びファンファーレに送られて、浦河は3番からの攻撃だ。あえてテキスト速報風に書いてみるとこうなる。
3番 死球。無死1塁。
4番 四球。無死1、2塁。
5番 ゆるい当たりのセカンドゴロ。二塁封殺で一死1,3塁。
6番 強い当たりのショートゴロを後逸。記録はエラー。三塁走者生還【得点 5-8】。一死1,3塁。
7番 代打。三遊間へのゴロ。ショート捕って二塁送球も足が離れる。三塁走者生還【得点 6-8】。一死1,2塁。
8番 高いバウンドのサード前ゴロ。送球がワンバウンドとなり、一塁手後逸。二塁走者生還【得点 7-8】。一死2,3塁。
9番 センター左へのフライ。タッチアップから三塁走者生還【得点 8-8】。二死2塁。
1番 レフト線への二塁打。二塁走者生還【得点 9-8】。二死2塁。
2番 セカンドゴロ。スリーアウトチェンジ。
潮陵はエラーばかりじゃないか、と思われるかもしれないが、この回はどれもこれもコースや当たりが「いやな感じ」の打球ばかりだった。5番の当たりはセカンドが一度こぼして何とかベースタッチ、6番の打球はショートがちょっと逆をつかれる形。7番、8番は内野安打コース。クリーンヒットと言えば1番の逆転タイムリーだけ、これがKOパンチとなる痛打だったはずだが。
9回裏、潮陵の攻撃。
9番 ショートゴロ。一死。
1番 レフトフライ。二死。
2番 ライト前ヒット。二死1塁。
3番 センター前ヒット。二死1,2塁。
4番 センターオーバー二塁打。二者生還【得点 10-9】。小樽潮陵、逆転サヨナラ。
9回表の浦河がノーアウトから連続四死球といかにもなにかが起こりそうだったのに比べ、潮陵は二者凡退。2番がしぶとく一、二塁間を抜いたが、まあよくつないだよ、という雰囲気だった。3番は詰まりながらも内野の頭を越す。「執念のヒット」というやつだ。最後の場面、ほぼ定位置を守っていたセンターが打球をみて背走。これは追いつかない。となれば…、
「野球は最後までわからんなあ」。スタンドでうーん、とうなった一戦だった。
(9回裏、逆転サヨナラの走者がホームに滑り込む。写っていませんが(汗))
▽札幌円山
浦_河 003 000 105 / 9
潮_陵 103 112 002x/10
あらためて考えてみると、浦河は1年生5人を含めて部員は17人(南北海道大会は18人までベンチ入りが可能)の小規模校。道大会までやってきたのは60年ぶり、もちろん4強は今回が初めて。対する小樽潮陵は創立112年を誇る地域一の伝統校、道大会はなかなかの常連ではあるが甲子園への壁は高く、いまだ出場はない。いかにもマニア好みの対戦カードだった。
ご存じのとおり、翌日の決勝で小樽潮陵は東海大四に0-1で惜敗。浦河、潮陵ともに「野球部史上最高の夏」。甲子園には手が届かなかったが、君たちの戦いはしっかりマニアが見ていたぞ(苦笑)。
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