空前にして絶後

  • 仲本
    2009年03月20日 23:50 visibility151

WBCの裏でひそかに明日から選抜高校野球が開幕。
NHKが番宣のつもりか、関西地区で「伝説の左腕・嶋清一」という番組(再放送)を流していた。計ったように、WBCが終了した2時過ぎからだったのではしごしてみた。

夏の甲子園で1大会に2度、ノーヒット・ノーランを達成した唯一の投手である。
しかも組み合わせに恵まれた1回戦、2回戦の話ではない。準決勝・決勝の2試合連続という、信じがたい記録。だがいかんせん、今から70年も前の話であり、本人は大学に進んだ途端、先の大戦で兵隊にとられて戦死。映像もほとんど残っていない。長らく高校野球記録マニアのみぞ知る、活字の上の幻の大投手だった。

にわかに脚光を浴びたのは、横浜高校・松坂投手が夏の甲子園決勝でノーヒット・ノーランを記録したからだ。誰もが「こりゃ前代未聞の快挙だろう」と思ったが、大会記録をあたってみんな仰天した。おかげで幻の少年投手が、野球殿堂入りするまでになった。

番組はこの投手にまつわる記録と証言を追いかけ、本としてまとめた人をキーにして構成されていた。この人の書いた本と、もう一冊似たような本があったのでそちらも読んでみたことがある。

投げる球は超一級品、しかし心根の優しい人だったらしい。ちょっとしたことで制球を乱して手痛い敗退が続いたという。中等学校最後の夏こそが、奇跡の1シーズンだった。大学に進んでからも先輩後輩のタテ社会で苦労したことが彼を知る人の証言からうかがえる。生意気だったのではない。むしろその逆だったようだ。「もし沢村・嶋が戦争で失われなければ、日本野球史は様相を変えていただろう」とも言われるが、嶋投手はプロの世界になじめただろうか。

番組では彼の母校の後身にあたる高校の野球部も訪ねていた。部室には「整理整頓」の文字。単に道具を大切にしなさいよ、と言うばかりでなく、不世出の大投手がいかに「心の整理」に苦心したかを伝えるのだという。ほんとかどうかは知らないが。

旧制・海草中学、現在の和歌山県立向陽高校は猫の駅長で有名になった和歌山電鉄に乗れば行けるようである。天気のいい日に放浪してみっか…。

参考: 「嶋清一〜戦火に散った伝説の左腕」山本 暢俊
     ↑番組で紹介されてたのはこちら
     「嶋清一の真実〜松坂大輔をしのぐ伝説左腕の軌跡」富永 俊治




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