広島大会~勝利の女神などいない

  • 仲本
    2017年07月16日 12:58 visibility938

三連休の初日を狙ってどこか遠くへ行けないかと各地の組み合わせを見ていたところ、広島のコカ・コーラウエスト(広島県営)球場第二試合で、尾道商と広島国泰寺の勝者が試合をすることが分かった。どちらに転んでも一部マニアも納得の古豪、球場は広島市内なので交通の便も比較的よく、大阪を普通に朝出発しても十分間に合う。ここしかない。

 

結局、広島国泰寺を大差で下した尾道商が上がってきた。尾道商は昨年の秋に中国大会まで駒を進め、この夏の大会もシードされている。順当な結果といえるだろう。

 

対するは広島国際学院。県内では近年しばしば上位に進出している。今はやりで聞きなれない校名だが、旧・広島電機大付属とのこと。ユニフォームは胸に大きく「Kokusai」、左下に「GAKUIN」と二段書き。一足先に甲子園出場を果たした新興勢力・神戸国際大付属に似ている。系列校というわけではないだろうが。

 

国際学院は野球部員もさることながら、ブラスバンド部員をたくさん引き連れてやってきた。近頃甲子園のブラスバンドを再現したCDなども売られているが、スタンドから聞こえてくる音色がそれにそっくり。そういう楽譜なのだろう。いずれにせよ、学校あげて力を入れていることがこういうところからも見てとれる。

 

尾道商業はブラスバンドにチアリーダー、大きな旗もあってさすがに往年の甲子園出場校といったところ。

一部しか見えないが旗には「闘魂ありて勝利あり」と染め抜かれている。野球部の部訓なのかと思ったらこれは校歌の一節で、校歌に「闘魂」が出てくる学校もなかなか珍しいのではなかろうか。商業高校ながら野球部員も多く、全体的にスタンドは元気にやっている。なんというか、「高校生らしさ」を求めるオールドファンにはぜひおすすめしたい(苦笑)。

 

立ち上がりは尾道商業ペース。1回、2回と1点ずつをとって2-0とリードした。

両校は春の大会でも3回戦で対戦しており、2-1で尾道商が接戦をものにしている。夏の組み合わせが決まると、ここでの再戦は計算のうちに入っていたかもしれない。

 

同じチームに二度も負けられない国際学院は、エースの土取投手がここから立ち直ってきた。中盤に入ると尾道商の打者は凡フライを打たされることが目に見えて多くなった。グラウンド整備後の6回表、国際学院は二死走者なしから連打と死球で満塁のチャンス。フルカウントまで粘ったがここは三振。しかし、試合の流れは確実に尾道商から国際学院へ傾いているように見えた。

 

尾道商は8回頭から継投に入った。エース高杉投手から長島投手へ。テイクバックが小さくサイド気味に投げ込んでくる。しかしこの回先頭の打者にヒットを許すと、局面は進んで二死1,2塁から、打球はレフト頭上を襲った。

 

これが同点のタイムリーツーベースになって国際学院はついに流れを引き寄せた。

 

尾道商は9回裏、二死からレフトへの大飛球。フェンスにショートバウンドでぶち当てるも、クッションをうまく処理したため打者走者はシングルどまり。後続が打ち取られて延長戦に入る。

 

あの当たりがもうひと伸びしていれば…、と気持ちを残しながらの延長10回、国際学院の先頭打者は打っても3番のエース土取から。センター後方へのライナーは風に流されながらも左中間のフェンスを越え、勝ち越しのソロホームランとなった。

 

1点ならまだわからない。尾道商としては、しっかり後続を断ちたいところだったが。

4番・5番へのファーストストライクが魅入られたように甘く入る。振り抜いた打球はいずれもレフト頭上をはるかに越えるホームラン。あっという間のクリーンアップ三連発で点差は3点に開いた。

 

10回裏、尾道商は1番打者に代打。追い込まれながら外の球をうまく流してヒットで起用に応えた。

打つしかない尾道商は2番打者が引っ張って三遊間寄りの鋭いゴロ、回り込んだショートのグラブをはじく。二塁は無理と見て一塁へ遠投。これも間に合わず内野安打。この試合二塁打2本と当たっている3番・沼田の前にチャンスを作った。

 

3B-1のカウントから狙い打った打球は左中間へのライナー。長打警戒で下がっていたはずのセンター・レフトがなおも背走する。芝生席へと飛び込む起死回生の同点3ランとなった。

 

 

(スコアボードの旗はライトからレフトへとなびく)

ノーアウトランナーなしから10回裏の攻撃は続いた。結末は前回の日記に示したとおり。

 

▽第99回選手権広島大会3回戦

国際学院000 000 020 3_/5

尾道商業110 000 000 4x/6

 

全体的な印象では、尾道商から国際学院に徐々に流れが移り、10回表で一気に流れが傾いたように思えた。もしも勝利の女神がいるのなら、彼女は自分で張った伏線を次の瞬間片っ端から忘れていることになる。でなければこんな展開になるはずがない。たぶんこの日は留守にしていたのだろう。

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