100年聖地~夏の選手権

  • 仲本
    2024年08月11日 23:00 visibility297

 

 

 

連打にエラーも重なって初回に先制した大社高校は、しかし、走者を出せなくなってきた。大社の馬庭投手もテンポ良く投げているが、球数が5回終了時点で74球。報徳学園・今朝丸投手の調子が回を追って上がってきたようで、こちらは70球と馬庭投手を下回るようになった。

 

夏の甲子園大会1回戦、5日目の第3試合は興味深い組み合わせとなった。

 

 

 

春の忘れ物を取りに行く。優勝あるのみ、と意気込む地元・報徳学園(写真上)に対するは、島根・大社高校。第1回大会から欠かさず挑戦を続けてきた「皆勤校」の一つである。32年ぶりの夏の甲子園初戦に、アルプススタンドは上段隅まで埋め尽くされた(写真下)。

 

二枚看板の間木投手を引っ張り出せるような展開になれば大社にとって理想的なのだが、馬庭投手がやすやすと投げ切るのを許す報徳打線でもあるまい。

 (逆転待ち、かな)

5回終了後のクーリング・タイムの間、外野スタンド上段から、そんなふうに思っていた。

 

6回裏、報徳の先頭打者が二塁キャンバスよりのゴロ、内野安打コースかと思ったが判定アウト。この回も結局三者凡退。

 

眠っていた大社打線は7回、走塁死もありながら4連打で待望の追加点。アルプスは大いに沸くが、内野・外野席には波及していない様子。報徳はここで間木投手にスイッチ、空振り三振で流れを食い止める。

 

7回裏、報徳は連打で無死1,2塁。有名になった応援スタイル「アゲアゲホイホイ」はようやく本日1回目。バントで送って、代わったばかりの間木投手に代打を送りこむも、真っすぐを振らされて三振に倒れる。この回も報徳、無得点に終わった。

 

8回の1死3塁のピンチを切り抜けた報徳は9回裏二死1塁と追い込まれるが、ヒットでつないで1,3塁。「アゲアゲホイホイ」はレフトスタンドにもちらほら波及。9番に入っていた伊藤投手に代打、三遊間をゴロで破って1点を返す。報徳の応援はライトスタンドにも波及しはじめた。

 

これは大変だ。「聖地」とされる甲子園は、その実、圧倒的に地元の利がある球場なのだ。

 

打順は1番に還る。高いバウンドが三遊間に弾む。この試合、好守を見せていたショートがボールをグラブに当てながらこぼしてしまった。

 

いわんこっちゃない――、しかしショートは次の瞬間、拾い上げたボールを三塁へ転送。二塁から三塁をわずかに回った走者が虚を突かれて立ち往生、タッチアウトであっけない幕切れとなった。

 

 

何が起こったのか。優勝候補の一角・報徳学園、初戦で散る。

 

信じられない、といった観衆をよそに、試合終了の挨拶、校歌演奏が行われる。大社高校の校旗が甲子園の空に翻る。大社高校、夏の勝利は実に63年ぶりとのこと。

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