カゲロボ

”カゲロボ” 木皿泉著 新潮社

<野ブタをプロデュース>の夫婦脚本家さんの作品。

本作は、この世には「カゲロボ」というものがいるらしい、

 そんな噂話から始まるSF短編集。

各短編の内容はどれも不条理に満ちたいじめ、震災、

 子供の傷害事件など明るいとは言えない話ばかりだが、

 筆者の手にかかると救いようの無い話でも

 最後はそれほど暗い気持ちにはならない。

<カゲロボ>改め<はだ>で先ずGの存在が出てくる。

次いで<あし>ではチカダの指示に従い猫の足を切ってしまった賢と、

 その後おかしくなったチカダが女子の脚に

 カッターで切りつけ、両者の微妙な連帯感を感じさせる。

最終話の<きず>のように何の取り柄もないごく普通の人間だと

 思っていても、どこかで誰かが見続けてくれている。

 そう思うと前を向いて歩いていける気がする。

結局「カゲロボ」とは心に傷を持つ人に寄り添う

 守り神みたいなものだったのだろうか?

 

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