野球漫画推薦図書 第四話
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やきゅうとかげ
2011年10月25日 08:16 visibility98
野球漫画推薦図書
(ときどき非推薦図書)
第四話
がんばれドリンカーズ(水島新司)
野球漫画といえばこの人、水島新司...だろうに、ここではあえて取り上げてきませんでした。
というのも、「どうせみんな読んでるだろう」と思ってのこと。今さらドカベン面白いですよ!...なんて言っても新鮮味がありませんよね。
そのドカベンですが、ウチの奥さんに読ませてみたところ、文庫版の3巻あたりまで読んだところで飽きてしまいました。山田、まだ柔道やってるよ...、野球漫画始まってないよ...。
話が逸れました。
というわけで今回は野球漫画の第一人者・水島新司のドカベ...ではなく、「がんばれドリンカーズ」をご紹介します。
プロ野球や高校野球を舞台にした数々の傑作を世に送り出してきた水島新司の、変化球とも言える草野球漫画ですよ。意外と少ないんだ、水島新司の草野球漫画って。
*以下、本編ラストシーンを含むネタバレが多数ある...かも知れませんので、未読の方はご注意ください
--あらすじ--
西荻窪駅のガード下にある居酒屋「のみすけ」。
カメラマンである緒方六左エ門を中心とした野球好きの常連客は、草野球チーム「ドリンカーズ」を結成する。
投手、捕手、内外野とオールラウンドにこなす六左エ門、のみすけの看板娘・ちーちゃん、のみすけでバイトしている浪人生・広、その他にも個性的な面々...。
物語前半は試合と居酒屋のシーンを行ったり来たりして、悲喜交々の人間模様が描かれる。
後半には入院中のちーちゃんの父親(のみすけの店主)が病状悪化することによって、ちーちゃんをめぐる恋模様が激化...!
そんな中で、やはりちーちゃんに想いを寄せる広のもとに、プロのスカウトがあらわれて...!?
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さて、水島新司作品は全編通して漂うローカル臭が味わうべきポイントの一つだと思っています。
今作の舞台は杉並区、JR西荻窪駅にある居酒屋とその周辺。僕も以前、10年近くこの街に住んでいましたが、都心が近い割に静かで、昔ながらの情緒を残した暮らしやすいところでした。
この西荻窪の風景と、作家の描く人間味あふれる人物達がマッチングして、現実の西荻窪のそこいらの路地から、六左エ門が顔を出しそうな気になります。こういうの描かせたら本当にうまいね水島新司。
「ドリンカーズ」は草野球チームが舞台ということで、「草野球あるある」的な描写が沢山出てきます。
試合なのにチームのメンバーが足りなくて助っ人を呼んだり(あるある)、
逆に他のチームに呼ばれたり(あるある)、
そもそものチーム立ち上げの際にはチーム名やユニフォームをどうするかでメンバーと口論になったり(あるある...!)、
そして試合後に呑むビールの旨さだったり...(あるあるすぎる!)!
逆に、共感できない部分もちらほらあったり。
例えば...主人公六左エ門が、相手チームのとある選手を活躍させるために「わざとエラーしたり」、「わざとスローボールを投げたり」してしまうシーン。
もちろん作中でも、この行為を全肯定しているわけではないんですが、そういう場面を「人情あふれる・ちょっといい話」みたいに描かれてしまうんですね。ぶっちゃけ納得いかない、気持ち悪い。水島新司的には「アリ」なのかなあ...。
「納得いかない」といえばもうひとつ。
チームの主軸になる広、野球の名門校でショートを守っていたんですが、草野球でキャッチャーを初体験。
なんとその様子を見た千葉ロッテのスカウトが広に注目し、ロッテは広をドラフトで9位指名します。
まじか。
いいのかそれで。
草野球で試合してるところを何試合か見ただけだろ!まあ、、、このスカウト、博打的なスカウティングが味の人物設定ではあるけれど...。
悩んだ末に、ロッテに入団する広。そしてまんまと正捕手になってしまう広。
...まじか。
...いいのかそれで。
いいんだろうなあ、多分。
この漫画には(というか..水島漫画は概ねそうだと思うけれど)、野球人のファンタジーという要素が多く含まれている気がします。
前述した、街の雰囲気なんかがやけに現実的なのでリアルと錯覚してしまうけれど、これはやっぱりファンタジーなんです。
だって草野球やってるところをプロのスカウトに見初められて、挙げ句に並みいる先輩選手を差し置いて正ポジションゲットとか、
夢じゃん!
夢だよ!
でも、ありえねえけど、楽しい夢ですよね。
この「あるある!」と「ありえねえ!」が同居しているところが、水島新司の魅力なんでしょうね。特にこの「がんばれドリンカーズ」の様な短編(コミックス2巻で完結)はその魅力が凝縮されています。ドカベン今から読むには長過ぎるよ!という人にもオススメしておきましょう。
*文中敬称は略させていただきました
- 事務局に通報しました。
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