☆幻の甲子園(再)









 夏の選手権大会を主催している朝日新聞社の記録では、昭和16年から昭和20年までの間は大会が中止となっている。これはいうまでもなく、戦争のためであったが、実は昭和17年だけ甲子園にて大会が開かれていた。


 この大会は戦時下のもと、戦意高揚を目的とし、文部省および大日本学徒体育振興会が主催となり開催された大会であった。参加校は、これまでの23校から16校に縮小され、地区割りも少々変更された。スコアボードの左上には、「勝って兜の緒を締めよ」、右上には、「戦ひ抜かう大東亜戦」と書かれたボードが掲げられた。選手のことを「選土」と呼び、打者は投手の投球をよけてはならない、さらに、原則は選手交代も認められないという異例のルールが適用された。そんな戦時色の強い大会であったが、甲子園に立つ夢を叶えることのできた球児たちの胸は喜びに満ちていた。








この大会に出場した16校は以下の通りである。


北海中学(北海道代表・現北海)
仙台一中(東北代表・現仙台一)
水戸商業(北関東代表・現水戸商)
京王商業(南関東代表・現専大付属)
敦賀商業(北陸代表・現敦賀)
松本商業(中部代表・現松商学園)
一宮中学(東海代表・現一宮)
平安中学(京滋代表・現龍谷大平安)
市岡中学(大阪代表・現市岡)
海草中学(近畿代表・現向陽)
滝川中学(東中国代表・現滝川)
広島商業(西中国代表・現広島商)
徳島商業(四国代表・現徳島商)
福岡工業(北九州代表・現福岡工)
大分商業(南九州代表・現大分商)
台北工業(台湾代表・現台北技術大)








大会の結果は以下の通りである。


1回戦
徳島商 2x - 1 京王商(延長14回)
水戸商 9 - 3 滝川中
海草中 3x - 2 台北工(延長10回)
福岡工 11 - 3 敦賀商
平安中 3 - 0 市岡中
一宮中 7 - 2 松本商
広島商 10 - 2 北海中
仙台一中 3 - 2 大分商


























































2回戦
徳島商 1 - 0 水戸商
海草中 5 - 2 福岡工
平安中 2 - 0 一宮中
広島商 28 - 10 仙台一中


準決勝
徳島商 1 - 0 海草中
平安中 8 - 4 広島商













決勝
徳島商 8x - 7 平安中(延長11回)








 徳島商は、全ての試合を1点差で勝利し、創部以来32年目にして初の全国制覇であった。それはまた、徳島県勢悲願の初優勝でもあった。しかし、この優勝も大会記録には残っておらず、徳島県勢の夏初優勝は昭和57年の池田高校まで待たなければならない。この大会が終わると、多くの球児たちはユニフォームから軍服に着替え、投げるものをボールから手榴弾に持ち替え、中国へ、フィリピンへ、予科練へ、海兵団へ、特殊潜航艇の基地へと向かった。


 その後昭和52年、これまで公式記録上、徳島商の優勝は抹殺されてきたが、当時の海部俊樹文部大臣が徳島県を訪れたさい、昭和17年大会の存在と優勝を証明するものとして、同校に賞状と盾が贈られた。









 リニューアルされた甲子園球場の外壁が以前のように蔦で覆われるであろう2017年、夏の選手権大会もいよいよ99回目を迎える。
その大会は、本当は100回目の夏である。






















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幻の甲子園出場校ぶらり散策日記











おわり。
































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