僕だけの思い出

仕事中の事

 

お暇な時間を少し頂いた 

 

上野に足を運び

 

いつも気になっていたラコステの白い靴を買いました

 

凄く欲しかった白い靴

 

気になって眠れなかったあの靴

 

何度も何度も夢にでたあの靴

 

値段はかなり高かったけど思い切って買いました

 

会社帰りの夕暮れ

 

近くの公園のベンチに腰をかけ

 

箱から新しい靴を取り出し履いてみた

 

日暮れの公園では子供達がサッカーをしていました

 

なんて幸せな時間なんだろう

 

新品の白い靴がとても眩しい

 

沈む夕日が僕の靴をより一層輝かせた

 

暫くベンチで履いた靴を眺めていると

 

子供たちのボールが足元に転がってきた

 

子供達は僕に『ボールを蹴り返してくださーい』元気一杯だ

 

ボールは泥だらけ

 

恐らく随分長いことボールと遊んでいたのだろう

 

僕にとって足元に転がってきたボールを手で掴み投げ返す事は容易な選択なはず

 

しかし僕はボールを蹴って子供達に返した

 

お気に入りの白い靴の右足側面が茶色の泥まみれに

 

子供達の『ありがとうございまーす』の声に僕はにっこりと微笑みを返した

 

暫くすると、子供達の母親が我が子供を迎えに

 

『夕飯の支度できたから帰るよ──』

 

『帰ったらお風呂わいてるからねぇ──』

 

子供達が一人、また一人帰宅の途につく

 

そんな光景になぜか切なくもあり、寂しくもあり

 

そして懐かしい感じがしました

 

僕にもそんな時代があった事をしみじみと感慨深く思います

 

日が沈む頃

 

僕も一人でお気に入りの靴を履いて帰りました

 

両足が泥だらけになっている事も気付かずに──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後日、友人に買ったばかりの白い靴がなぜ汚れているのか聞かれたのですが

 

その時の事は僕だけの秘密です

 

 

 

 

 

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