8割フィクション

  • ひかる
    2011年03月07日 22:06 visibility128

「もうやめて。

もうやめてよ。

なんでわたしだけ?

よりによってなんでわたしが・・・。

あの6人さえいなければ。

あの6人さえいなければ、わたしは毎日学校に行けるのに。

あの6人さえいなければ・・・。」





「もうやめて。

もうやめてよ。

なんで私だけ?

よりによってなんで私が・・・。

アンタさえいなければ。

アンタさえいなければ、私は毎日普通に生活できたのに。

アンタさえいなければ・・・。」





「嘘・・・。

なんで・・・。

よりによってTちゃんが・・・。

嘘。信じられない。

どうか無事で帰ってきて・・・。」






「え。

嘘。

信じられない・・・。

Tさんが・・・。

・・・良かった。

1日でも早く居なくなれと毎日願った。わたしの勝ちだ。

もう死んでるでしょ。

フフフ・・・わたしの勝ちだ。」




「ねぇ、

このニュースに出てる子って近所の子じゃない?

どこ行ったんだろうねー。」










中学校の思い出?

なんで今日会ったばかりのあなたに身の上話しなきゃいけないの。

名刺ならさっき見ました!名前と電話番号しか書いてないじゃない。

中学校の思い出・・・。


ん〜、もう10年以上前のことだから・・・。

え?

わたしなら覚えてるはず?なんでそんなこと言えるの。

あー。

わざわざわたしを訪ねて来たのは、その事?

よくこんな田舎まで(笑)

バカ?それか、よっぽど暇人なの?

仕事?

こんな20代半ばの女掴まえて仕事って。何の仕事よ。

ってか!

よく平気で醜い記憶を掘り出す事できますね!

だからこうして好きな物食わせてるって?

頼む分際で恩着せがましく言わないでよ。

・・・いーわよ。

話すから、もっとおごってくれる?

ありがとー♪


わたしの腕見て!

傷だらけでしょ?

・・・。

この傷は中学生の頃からずっとあるの。

増えることはあっても減ることはない。

消えないの・・・。

薄くなることはあってもね。

薄くなるからって記憶が薄れることはない。

記憶だけはわたしの体内にクッキリと傷として残ってる。

10年以上経っても傷も残ってる。記憶も残ってるの。

何から話そうかな。

・・・。

中学生の頃のわたしはイジメられてた。

クラスでもいるでしょ。

ませガキってか、目立つ子。

そいつらにイジメられたの。

人数?

6人。

「キモい」だの

「ブス」だの

「死ね」だの

言ってきて、いつもわたしを見てはクスクス笑ってる。

トイレに入れば、外からペーパーが投げ込まれたり

扉を蹴られたりする。

[死ね]って書いた紙が机に入ってたり、落書きされてたり・・・

下駄箱には

[学校来んなよキモいから]

って入ってたこともあった。

朝学校に来たらわたしの机が倒され、中身がブチまかれてたことなんて何十回もある。

知らないオッサンから電話がかかってきては、「○万で。」とか言われ。電話番号晒されたり。


毎日

毎日

何か傷つけられる。

クラスのある女の子に嫌な時は嫌だと言わなきゃだめだよ。

と言われ

勇気を出して「やめてよ!」って言った時

あいつらは無視を決め込んできた。

まるでわたしを空気のように・・・扱うんだわ・・・・。

悔しい。

次の日登校すると、わたしに助言した女の子は欠席し、女の子とわたしの机にはカッターの跡が・・・。

その日からイジメは更に酷くなった。

助言してくれた子も学校に来なくなった。

いや、来れなくなった。


人と話すのが怖くなり、

学校に行くのが嫌になり

わたしは不登校になった。

家にいてもイジメられたことが頭から離れない。

なんでわたしが・・・。

わたしは生きる価値があるのか・・・。

死にたい・・・。

あいつらが憎い。

あいつらさえいなければ。

いろんな事が頭をグルグル回って、

気づいたら手にカッターを握り

腕を切りつけていた。

ハッと我に返ると腕と周りは血だらけ。

初めてみる血の量に痛みより驚きで気を失ったわ。ハハ。

気づくと病院のベッド。

母が見つけて救急車呼んだんだって。

泣き崩れる母。

何に対して怒ってイイのかわからず憤る父。

わたし生きてる。

って思った。

同時にあれでは死なないとも分かった。

それ以来身体を傷つける身体に。

何かがおかしくなっちゃったの。

長い間イジメによって傷つけられた心の傷。

カッターで切りつけた傷。

どっちが痛いか天秤にかけて

まだ心の痛みの方が大きい・・・。

まだ・・・まだ・・・。


そして

繰り返し傷つける。

結果がこれ。

あいつらなんかいなくなればイイ。

あいつらなんか!

毎日毎日呪うように思い続けた。

卒業式。

卒業式くらいはしっかり参加しようと担任と両親に言われ、渋々登校。

「あ、まだ生きてた」

わたしを見るなり楽しそうに言うやつら。

ま、卒業式終わったら帰るし、無視と思って卒業式に参加。

両親と一緒に帰る時に校門で加害者のTが母親といたんだ。

無視して通りすぎようとしたら

「あ、待って!」

両親も当然Tに注目する。
「同じクラスではいろいろお世話になったね。ありがとう。元気でね♪」

ニコッてしてた。

なんでニコッとできる?

下向いて背を向けると

母親が何で何も言わないの!失礼じゃない。なんて言う。

何もしらないくせに。





高校生になって

わたしをイジメたグループとも離れ離れになった。

しばらくすると

友達が

「○高校のTって子が行方不明なんだって。○○中学って一緒でしょ?知ってる?」

「どーせ家出か何かでしょ。」

思い出したくもない。

「ちがうの!もう何ヶ月も帰って来なくて、誘拐の線で警察も動いてるんだって!」


驚いた。

ホントに驚いた。

願ったことが叶った。

いなくなったんだ。

願い続けたわたしの勝ちだ。

いっそ死んで発見されればイイのに。

って思ったね。

え?

誘拐されてたらTは何て思うだろうかって?

知らないわよ。

何で私だけ。私に限って。

って言うんじゃない?

死んでたら?

さあ。

何で私だけ。私に限って。

って言うんじゃない?
あ、でも死んでたら言えないよね。

死人に口無しってこの事かーハハハ。


はぁ。

もう思い出したくないと思ってるのに。

事件じゃなくて、イジメの記憶。

たまに夢に出てきてはうなされるんだから。

ごちそうさまでした。

じゃあ。




これはある未解決事件の記事に対してコメントしたある人をモデルにした話。

コメントに対して

「不謹慎」

「お前はゴミだ」

「お前が行方不明になればイイのに。」

「イジメられたなら持って当たり前の感情ではないか?」

「素直な文体に興味深いものがある」

「ここで死ねとか言うやつらも頭可笑しいんじゃね?」

「あらら〜」


など反響は様々。


毎日報道される様々なニュース。

悲惨だな。

可哀想だ。

と思う人はたくさんいると思う。

知らない人だから

可哀想。

無事でありますように。

早く見つかって。

犯人が許せない。

で終わってしまう。

時間が経てば忘れる事件って多いでしょ?

久々に聞いて

あ〜、そんな事件もあったね。

と思い出す。


それが人間の悲しい性であり、救いでもあると思う。

毎日悲しんで忘れない日が続き、更に悲報が届き重なる。では人は病気になるか死んでしまう。


実際加害者、被害者を取り巻く環境にいたらどうなるだろうか。

そこは計り知れない部分ではあるけれど、いま書いたのは

被害者Tによる被害者ってケース。

事件に1番近い所で苦しんでる両親もいるだろうし。

仲良しは絶望が襲うと思われる。

ただ全員が全員悲しむと言えば嘘になってしまう。

モデルのように何とも思わない。むしろもっと早くいなくなれば良かった。

と思う人もいる。

[死]に関して人は敏感に反応するけど、その反応も様々だと改めて実感した。

死人が出る事件=知った全員が悲しむ

と少し偏見を持っていた自分にとっては正直ショックかつ勉強になった。

当たり前と言えば当たり前なんだけど。

毎日の行いが死んだ後も、何かしら自分を評価すると思うと恐ろしいと思うのは僕だけでしょうか。

もしこれを最後まで読んだ人がいたら、どう思うか1人の人間の意見として感じたことを聞いてみたい。

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