偽りの無い言葉で

なあ、君


暇ならちょっと

話に付き合ってくれないか？


とてもではないが

誰かと話さずにはいられないんだ。



ほら、あの

大学生らしい男はガリガリに痩せている。


私なんかたいして食べて
いないつもりなのに

腹に肉が付いている。


彼のような奴はちゃんと
飯を食べているのだろうか？




この数日、空が晴れないね。


だからって

気分が晴れないのを
空のせいにする気はないよ。




なあ、君


最近私がよく口にする
独り言がなんだか分かるかい？



人に言える類のものでは
ないのは確かだと思うよ。




そんな、


そんな風になったのは
いつからかとか

どこからずれて
しまったのかとか

最初から馴染まない
性質だったのかだとか



なあ、君


考えてみたことが


あるかい？







何かをするときは

いつも終わりを考えてしまうんだ。



楽しい祭りも必ず終わる。


苦しい走り込みも

『あと何本！』

考えてやり切ったものさ。



人との付き合いも
始めた趣味も

いずれ終わらざるを
得なくなる前に


自分から終わらせようという


いやむしろ


始めることすらやめてしまおうと


考えてしまうのを



なあ、君


分かってくれるだろう？







明るい人達を見ると

自分とは異質の存在だと


感じてしまうんだ。




私が大人しくもっともらしい

『善いこと』を

口にする理由が分かるかい？


せめて自分にはその種類の価値が
ある人間だと思わせたいからだよ。


誰をって？


もちろん、自分をだよ。







環境が悪いだとか言う前に


自分の中に

こだわりだとか
情熱だとか


自分を突き動かすものなければ
どうしようもないって



分かるだろう？








極端に言えば

どうでもいいんだ


でも


どうにかしたいんだ。




何もないって


気付いてから


好きなつもりだとか

振りだとか


人並みな人を
装ってみたけれど



長くは続かないものだね。





なぜ生まれてきたかは
考えても仕方がないが



なぜ生き続けるのか
なぜそれをしているのか

納得して生きていると



それくらいは


偽りの無い言葉で
表せるようにしたいと




なあ、君



そう思わないか？