全米中で話題騒然。ミゲル・カブレラ、三冠王なるか?

  • 2012年09月30日 04:38 visibility553
レギュラーシーズンも終盤となり、現地アメリカでは「誰がMVPとなるのか?」という話題で持ちきりです。昔のメジャーは個人成績重視でMVPが選ばれていました。しかし近年では、日本プロ野球と同じくチーム成績重視になっています。いかに地区優勝、もしくはプレイオフ進出に貢献したかが、MVPに選ばれる重要な要素となっているのです。

 しかし今年はひさびさに、抜きん出た個人成績でMVPを受賞するプレイヤーが誕生するかもしれません。なぜならば今、アメリカで最も話題となっているのが、「メジャー史上45年ぶりの三冠王誕生なるか」だからです。

 その注目の的となっているのが、デトロイト・タイガースのミゲル・カブレラです。現在、カブレラの成績は、打率.329(1位)・42本塁打(2位)・133打点(1位)。9月22日に42号ホームランを打ったときは、ジョシュ・ハミルトン(テキサス・レンジャーズ)に並んで3冠部門すべてでトップとなりました。

●ア・リーグ三冠ベスト3●
[打率]
1位 ミゲル・カブレラ(デトロイト・タイガース) .329
2位 ジョー・マウアー(ミネソタ・ツインズ) .326
3 マイク・トラウト(ロサンゼルス・エンゼルス) .324

[本塁打]
1位 ジョシュ・ハミルトン(テキサス・レンジャーズ) 43本
2位 ミゲル・カブレラ(デトロイト・タイガース) 42本
3位 アダム・ダン(シカゴ・ホワイトソックス) 41本
3位 エドウィン・エンカーナシオン(トロント・ブルージェイズ) 41本

[打点]
1位 ミゲル・カブレラ(デトロイト・タイガース) 133点
2位 ジョシュ・ハミルトン(テキサス・レンジャーズ) 124点
3位 ジョシュ・ウィリンガム(ミネソタ・ツインズ) 110点

 1900年の近代野球以降において、三冠王となったのはメジャーで11人、延べ13人しかいません。しかも1967年にカール・ヤストレムスキー(ボストン・レッドソックス)が達成して以来、実に45年も誕生していない偉業なのです。それを今年、もしかしたらカブレラが塗り替えるかもしれないのですから、全米中が大騒ぎになるのも当たり前でしょう。

 なんと言っても驚きなのは、強打者の揃っているア・リーグで『三冠王』という金字塔を立てようとしている点です。今年はナ・リーグから「3冠王に最も近い男」と称されるアルバート・プホルスがナ・リーグのセントルイス・カージナルスからロサンゼルス・エンゼルスに、そして『史上初の親子本塁打王』に輝いたプリンス・フィルダー(タイガース)もミルウォーキー・ブルワーズからア・リーグへと移籍してきました。そんな屈強のライバルのなかで3冠部門のトップに躍り出るという事実が、いかにすごいことか。本当に信じられません。

 また、今シーズンのカブレラの成績を見てみると、すべての部門で驚異的な数字を残しているのです。9月20日時点の成績をもとに、そのままのペースで最終戦までいくと計算すると、打率.333・44本塁打・142打点・208安打となります。これは、なんと1937年のジョー・ディマジオ(ニューヨーク・ヤンキース)以来最高の成績なのです。現在、タイガースは中地区1位タイでシカゴ・ホワイトソックスと争っていますが、もし地区優勝できなくても、MVPに輝くのではないでしょうか。

 ただ、その一方で、「チームへの貢献度も含めると、この選手のほうが上」という声も挙がっています。それがエンゼルスの新人、マイク・トラウトです。

 今年のエンゼルスは、開幕20試合で6勝14敗という最悪のスタートを切りました。しかし4月28日、20歳(当時)のトラウトがマイナーから昇格して1番センターに定着するやいなや、チームの快進撃の立役者となったのです。トラウトが昇格してから前半戦までのチーム成績は、メジャートップの42勝24敗。エンゼルスはそれまでの借金を一気に返し、一躍、優勝争いに絡むことになりました。

 現在、トラウトの成績は、打率.324(3位)・28本塁打・78打点・47盗塁(1位)。俊足巧打の活躍は非の打ちどころがないのですが、その中でも強調したいデータが、『WRA』という値です。これは、セイバーメトリクスによる野球選手の総合評価を示すものですが、簡単に説明すると、「各ポジションの平均選手と比べ、その選手がどのぐらいチームの勝利数を上積みしたか」という指標なのです。

 平均的なレギュラー野手は、『WRA=2.0』と言われています。しかし今シーズンのトラウトの値は、なんと『10.4』。リーグ2位のミゲル・カブレラが『6.7』なので、トラウトの数値は、まさに断トツです。過去、野手でそれに相当する数値を記録したのは、14人しかいません。そのうち、13人が殿堂入りしています(唯一、殿堂入りしていないのがバリー・ボンズ)。近年で10以上を記録したセンターは、1964年のウィリー・メイズ(当時サンフランシスコ・ジャイアンツ)です。この数値こそチームへの貢献度を示すものなので、トラウトをMVPに推す声が非常に多いのも頷(うなず)けます。

 もし、トラウトがMVPを受賞すれば、新人王は確実なので、1975年のフレッド・リン(当時レッドソックス)、2001年のイチロー選手(当時シアトル・マリナーズ)に次ぐ、史上3人目の『新人王&MVPのダブル受賞』となります。MVPを獲るのはカブレラか、トラウトか――。現地アメリカでは、意見が真っ二つに割れています。

 対するナ・リーグのMVP争いは、バスター・ポージー(ジャイアンツ)とライアン・ブラウン(ブルワーズ)の一騎打ち、という様相です。

 2010年、ポージーがナ・リーグ新人王に輝いた年に、ジャイアンツは56年ぶりの世界一となりました。そして昨年5月、本塁上での相手選手との激突で重傷を負い、シーズンを棒に振った年は2位。しかし今年復活すると、4番キャッチャーとして攻守に活躍し、地区優勝へと導きました。いかに彼の存在がチームにとって大きいかが分かります。

 さらに8月15日、3番のメルキー・カブレラが薬物違反で50試合の出場停止になるも、ポージーはその穴を埋めようとさらに大爆発。結果、メルキー・カブレラ不在から地区優勝した9月22日まで、なんと25勝9敗でチームを牽引したのです。現在、ポージーの成績は、打率.333(3位)・23本塁打・99打点(5位タイ)。本拠地AT&Tパークでポージーが打席に立つと、『MVPコール』が沸き起こっています。

 キャッチャーでMVP受賞となると、ナ・リーグでは1972年のジョニー・ベンチ(シンシナティ・レッズ)以来。さらに、現在打率1位のミルキー・カブレラが首位打者の権利を辞退したので、もしポージーが首位打者になると、ナ・リーグのキャッチャーとしては1942年のアーニー・ロンバルディ(当時ボストン・ブレーブス)以来、70年ぶりの快挙となります。

 一方、昨年MVPのブラウンは、つらい開幕スタートでした。昨年、ブルワーズを29年ぶりの地区優勝に導いたものの、10月にドーピング検査で陽性反応を示し、禁止薬物使用の疑いで50試合の出場停止処分に問われたのです。その後、異議申し立てが認められて処分は回避できたものの、ブラウンのイメージは地に落ちました。

 ところがブラウンは、周囲の批判を自らの打棒で払拭したのです。昨年の33本塁打や長打率.597など、パワー面で強調される数値をさらに上回り、現在、打率.317(5位)・40本塁打(1位)・108打点(1位)・長打率.598(1位)をマーク。「薬物のおかげで活躍できたのではない」ということを証明したのです。

 ア・リーグ、ナ・リーグともに、シーズン終盤に向けてMVP争いはさらに激化してきました。ミゲル・カブレラ対マイク・トラウト、バスター・ポージー対ライアン・ブラウン――。はたして、どちらがMVPの栄誉を掴み取ることができるのか。そして、カブレラは45年ぶりの三冠王に輝くことができるのか。残り数試合、『MVP』と『三冠王』の行方に、ぜひとも注目

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