全てはマラドーナから始まった

  • DAI
    2012年02月11日 01:26 visibility655

小学校3年生。私はそこで試合にデビューした。定位置を確保したのは小学校4年生。
 もちろん、小学4年生がすぐに活躍できるほど現実は甘くなかった。与えられたポジションは左FW。人の少ない中で、MFとCBに強力なメンバーをおいて何とかカバーしとりあえず運動神経の高そうな奴を失点に直接影響のないFWに置いておこう、そういうポジションだった。もちろん、活躍をあまり期待されていなかった。(体格差も相当あったからね)
 そんときの監督(サッカー素人)はサッカーがよく分からないから、じゃあ参考にワールドカップのビデオを見ようということで、雨の日はワールドカップのビデオを見ることが多かった。そのことにはあまり意味はなかったように思う。だいたい、サッカーを知っている者がいないのにワールドクラスのことなんて理解のしようがない。戦術の説明なども一切、なかったから誰もそんなことは考えなかった。
 そこで出てきたのがアルゼンチンの英雄、ディエゴ・マラドーナであった。スーパープレイの連続に少年たちは沸き立った。そして、真似をし始めた。私もその中にいた。試合でヘディングをせずにジャンピングボレーシュートをかましたり、オーバーヘッドキックをやり始めたりめちゃくちゃだった。
 練習はゲーム中心だったためろくな基礎練習もなく、みんな好き勝手に練習していた。監督がサッカー知らないのでしょうがないし、当時はサッカー情報なんかもあまりなかった。ゲームで勝つには・・・?という命題に答えられる者は誰もいなかった。パスサッカーなんてできるわけがない。そこで、マラドーナである。私はパスがつながらないのでドリブルしたらいいんじゃね?という非常に単純な発想で、マラドーナの真似をしてみた。とにかく切り返せばいいと思った。ビデオのマラドーナはフェイントをしないでするすると突破しているように見えた。ひょいひょいと切り返して切り返してドリブルしてみた。まともなレギュラークラスを一人くらいはすぐかわせるようになった。
 試合ではどうしても守備中心となる。前線に残されたFWは1対2〜3で突破するかパスをつなぐことになるが、ラインは下がっており、パスは絶望的につながらなかった。(キープという発想はなかった)そこで2人抜く工夫を考えることにした。幸いにもマラドーナはDFの間を切り返しながら抜いていった。真似をしてみた。すぐできた。とりあえず後ろから足をひっかけられるまで突破できるようになった。よく考えたらファウルなのだが、審判さえルールがよくわかっていないのだからPKをもらうことは一度もなかった。
 どうしてもペナルティーエリアに入ると足を狙われて転がされやすい。この欠点(?) を克服しない限りは点にならなかった。克服する手段は・・・簡単だった。根性で相手の足ごとぶっとばしてよろけないように突破すればいいのである。
 こうして、ドリブル突破を身につけた頃にはもう小学4年の秋になっていた。それでも6年生がいるのでドリブル突破をするのは気が引けた。
 5年生になると、誰も文句を言える者はいなくなった。当然ながら、試合は私のドリブルから組み立てられることになった・・・が、パスをもらえる奴は誰もいなかった。だいたい1vs3という状況の中、根性で突破をして相手のDFラインを一人でぶち抜くようになった。
 夏が近づくと、私のマークが2人になった。ボールを触らせなければ突破ができないので失点しないという、当然といえば当然の発想だ。そこで私のポジションが変わった。CBである。確かにこれなら必ずボールにさわれる。
 当時、その地域で5年生にして一対一最強をほこった私はCBで突破を許すことはなかった。ところがCBの役割が分からないし、点がとれるとも思わなかった。しょうがないので中央から突破することにした。FWは話にならなかった。MFとDFが勝負であり、5人抜けば1点とれた。体力の限界と石だらけのグラウンド状況もあり、1試合に3点が限度だったが1-2点くらいは結構とれた。芝生の大会に出たことがあったが、並み居る強豪校相手に私のドリブルは無敵をほこった。その頃にはさらに各チームの対応は厳しくなり、ボールは私の近くに来なくなった。
 しょうがないのでパスをもらえるように考えた。CBだったので簡単だった。誰もマークしないし、もともとカバーのポジションなのでどこでも好きなところにもらいに行けた。このあたりになるとやっとサッカーチームっぽくなった。小学6年の時にやっとサッカーというスポーツにたどりついたようだ。

 とても無茶苦茶だったが、誰にもサッカーを教わったこともない私はマラドーナから全てが始まり、実践の中で全てを学んだ。本当にとんでもない時代だった。そのおかげで未だに史上最強のドリブラーとして過去を知る人の記憶には残っているみたいだ。(記憶のなかで誇張されている部分がかなりあると思うけど)

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