ノルマクリア


ポジティブな意志によって新しい監督を迎えるシーズンは、もう6年も前になる2003年のサミア以来。昨年までの菅野監督は、2006年の後半から成績不振で辞任された上田さんの後を急遽引き継ぎ、ハードワーク、フォアザチーム、リバウンドメンタリティをキーワードにチームとしての基礎を築いてくれました。


その苦難な作業は、確実にチームの血肉となり、次のステージへ上がるための力を発揮する可能性を感じ、信じ、願い、祈り続けた2年半ではありましたが、そこに至るまでには何かが足りませんでした。


何かが足りない、その重要なピースとしてチームが下した判断は、監督というポジション。思い起こせば、2002年から2004年までの3年間で監督5人のタライ回しを経た長〜い、低迷期を反省し、辛抱強い起用を続けてきたポジションでしたが、ついに今年は、直前まで五輪の代表監督を務めていた反町康治氏を迎える決断を下しました。


代表関連人材というと、どうしても2003年の苦い思い出が味覚的に思い出されますし、反町監督自身、直前の五輪でも、グループリーグ全敗という結果で、マスコミのパッシングも酷く、本人も「サッカーの話題に触れるのも辛い時期」だと言っていたそうですから、その直後の就任とはタイミング的にもダイジョブかというのが正直な感想でした。


が、氏はなんといっても、町の小クラブだった新潟を、環境面の整備も含めて奔走し、チームの形を作りながら昇格に導いた実績もあり、指導者としての経験は豊富です。また、人格とその指導法という意味でも、徹底した相手の分析にもとづいて戦術を立てたり、欧州の最先端の戦術研究に事欠かない一方で、試合後には涙をみせながら絶叫することもあるなど、冷静さと情熱を併せ持っているところも「足りない何か」を埋める魅力をもった人材だと思います。


ただ、そのパーソナリティが、現在の湘南ベルマーレというチーム、選手、環境と化学反応を行う時に、どのような方向性の化合物となっていくかは、誰にもわかりません。シーズンオフに行われたトレーニングマッチを数試合観戦した限りでは特に、新しいフォーメーションが有機的な攻撃となるようなシーンはあまり見られませんでした。


従って、新しい監督、指導方針、フォーメーション、選手起用が、長い時間をかけて、これまでチームとして築きあげてきたものを、残しつつ、進化をさせるという意味では、ご多分にもれず、非常に不安な気持ちで開幕の試合を迎えたのでした。


そんな期待と不安がまじりあうレベルが、例年の50%増しくらいで迎えた開幕戦。対戦するは、同じ神奈川の横浜FC。アツやカズなどリーグというか、日本サッカーの顔的な選手が存在しており、山形や大宮で一定の評価を得ていた樋口監督が新任してはいるようですが、客観的に見ても、ここ数年のチーム作りという点では、その差を結果として示さなくてはならない相手です。


さて、その反町監督が選んだ2009年のスターティングメンバーとフォーメーションは、


     田原
 阿部      アジ
  寺川    坂本
     雄三
山口 ジャ 村松 臼井
     野澤







今年のシンボルでもある、4-1-4-1的、4-3-3。サブは、ケイ、翔雅、裕也、亮太、ツット。原竜と菊池が外れる判断は、対戦相手を考えての事か・・。前線の3人は流動的で、アジが1top気味に張ったり、ボランチまで下りたりと流動的なのはこれまでと一緒ですが、逆三角形の二枚が機を見て攻撃参加するため、相手にとっては捕まえ難い、フォーメーションだと思います。


横浜FCは、


   池元 難波
 片山     大志
   アツ 須藤
吉田 戸川 早川 田中
     岩丸






大志との再開も感慨深い、綺麗な4-4-2。サブは、小山、八田、吉本、カズ、西田。


序盤、久しぶりの公式戦からくる固さか、お互いになかなか有機的な攻撃を繰り出すには至らず、リスクを恐れた可能性のない蹴りあいのシーンが多く、落ち着きのないサッカーのまま時間が進んでいきます。


前半の折り返し時間帯に差し掛かった頃には、なんとか徐々に中央のポール支配を高めていくと、それに伴うように、相手DFライン背後を突く可能性のあるボールが供給され始めると、坂本の体を張ったボールキープから抜け出した阿部ちゃんが、もつれあうようにシュートを放ち、これがフリエゴールに突き刺さり、先制点奪取に成功します。


あとからVを見てみると、坂本からボールを奪うようにうけたアジが絶妙のスルーパスを通していたのですネ〜。練習中も、この日もなかなかコンディションが上がらないように見えたアジでしたが、真剣勝負の試合時間が進むにつれ、間接各部のオイルが温まっていったかのように、体の動きがキレるようになっていったのは、今更ながら、流石ブラジル人って感じでした。


先制点後は、全体の動きも滑らかになり、中央左右を問わず、チャンスを築き、脚本キャスト共に「アジの楽しいヒールパスショー〜♪」的な流れになりましたが、追加点を奪うには至らず前半終了。


後半早めの時間にフリエは池元に代えて、御大登場。スタジアムは盛り上がったようですし、神奈川新聞には敵味方関係なくJリーグ最年長出場記録を打ち立てたカズに盛大な拍手が贈られたと書いておりましたが、事実としては、7ゲは大ブーイングでした。あたりまえす。カズ個人は尊敬しておりますが、勝負は別。ただ、池元よりも動きがよく、フリエの選手の中でも一番動いていたのには焦りましたが・・・。


試合展開は、前半先制点後の優位さを維持したまま進み、連続して得たCKでショートコーナーからサインプレーでフリーとなった幸平が、威力のあるミドルシュートを放つと、これはなんとか岩丸が弾いたものの、混戦の中に弾んだボールをアジが放ったカンフーキックシュートを決めて、2点差とします〜♪

ただ、後半8分という早い時間帯での2点差リードということで、まあいわゆるサッカーにおける、古典的2点差リードの怖さ、つまり3点目をとるのか、2点差をよしとして無失点に目標を切り替えるのかについて選手の気持ちが統一されていないうち隙をつかれた失点をすると、精神的優位が一気に崩れていく負のループにはまりそうでした。


実際その流れの中で雄三に黄紙が出されてしまうなど、嫌なムードも漂いましたが、ピンチを招いて気がついたのか、監督からの指示があったのかはわかりませんが、時間経過とともに、3点目をとるのだという姿勢が見られ、ゲームの中で修正できたのはとても良かったと思いました。


しかしながら、そのまま引き下がるわけにはいかないフリエは、残り15分で左SBを切ってFWの新人西田をトップ下気味の位置に投入し、スクランブルフォーメーションをとると、これが功奏。序盤からのハードワークもきつかったのか、中盤を支配されます。たまらず、紘司にかえて、亮太を投入し、正三角形に戻すのかと思いましたが、亮太は点をとるき満々みたいで、最前線まで顔を出します。個人的な結果が欲しい気持ちは解りますが、ちょっと空回り気味。


残り5分では、お疲れ様の田原が拍手に包まれてピッチを後にし、ツットが代わりに入ります。前掛ったフリエの最終ライン裏を使った攻撃は、2-3度あったでしょうか、一度GKとツットが1vs1になりかけましたので、得点を確信しましたが、まだまだ体の重そうなツットは左に開いたアジをチラ見しながらシュートモーションに入ったところでボールをカットされてしまいます。


ロスタイムには、この日はほとんど抑え切っていた大志とヤマのマッチアップで、切り返しを許すと、大志が左足であげたクロスが、西田にドンピシャで合わせられてしまい、失点。これはクロスの入れる位置も、打点も距離があっただけに、今後は対策を立ててほしい失点でしたので、次節以降への教訓としていければと思います。


程なく、野田主審の笛から試合終了を告げる音色が流れると、ガッツポーズでよっしゃぁぁあ〜!!というよりは、とりあえずは勝ててよかったというのが正直な感想。田原に得点があったり、ツットが3点目を決められていれば、もっと楽に喜べたと思うのですが、まあ勝ったからこそ言える贅沢ですな。監督も徐々に右肩上がりにしていくと言っているので、初戦としては上出来だったと思います。


さあ、次節栃木戦に向け、子連れ参戦計画を立てねばなりません。


#や〜、ついにシーズンはじまったぁ〜!

chat コメント 

コメントをもっと見る

通報するとLaBOLA事務局に報告されます。
全ての通報に対応できるとは限りませんので、予めご了承ください。

  • 事務局に通報しました。