サッカー王国「ブラジル」に観る決定力のヒント

 

マリーニョ氏は、以下のように答えている。

「サッカーは、コーチが教えるものではなく、急激に決定力が身につく練習なんてない。コーチはアドバイスを与えるだけ、それに対して選手がどう吸収していくかだけです。ブラジルには10代の頃は誰にもサッカーを教わらず、仲間と一緒にひたすらプレーし続けただけという選手も多いんです。」

ブラジルには、学校文化として日本のような『部活動』や『各種大会』がないと聞いたことがある。地元の空き地や路地でのストリートサッカーから上手い選手が、クラブのセレクションで選ばれていき、専門的なトレーニングや知識を学ぶ。

逆に日本では学校での『部活動』や『クラブ』で鍛えている選手がほとんどだろう。

恵まれた日本文化においてはストリートサッカーから引き抜かれるというのは、稀なことだろう。

では、どうしてブラジル人選手の決定力にまだ追いつくことができないのだろうか？

マ）「私たちブラジル人は、小さい頃からとにかくサッカーを楽しむ。空き地に人が集まれば直ぐに試合が始まり、夢中になる。もちろん監督なんかはいません。自分たちで何十点か取った方が勝ちというルールを決めて、点なんか取られても良いからとにかく全員が前に前に走る。スペースも狭い所が多いから自然とボールに触る回数が増える。GKとも1対1になる機会が多い。こういうサッカーが日々延々と行わられているのがブラジルなんです。私は、決定力を磨くには“経験”しかないと考えています。シュートが成功することも多いし、失敗することも多い、その中で自分の得意な形を見つけていくことでしか決定力を身につける方法はないと思います。」

 

冒頭に挙げた選手たちも、もちろん少年時代に遊びの中でゴール前の経験を積んでいる。ゴール前での経験を多く積んでいるからこそ、試合でも様々な発想と技術を駆使しゴールネットを揺らすことができるのである。

つまり、『決定力が身につく特別な練習なんてない。どれだけ成功と失敗から裏打ちされた経験を持っているか？』大事なのは、自分でやり方を考え、ゴールを意識する回数を増やすこと。日本にある『部活動』や『クラブ』というコミュニティーを活かしつつ、日常生活から生まれ変わる必要性があるのかもしれない。

マ）「もう一つは、日本の選手はあまりにも試合を『観る』回数が少ないこと。ブラジル人は、トップリーグだろうが地域のリーグだろうが、とにかくスタジアムで試合を観る。大袈裟かもしれないが、日本人が1試合を見る間にブラジル人は1000回くらい試合を観る。どちらが上手くなるかは一目瞭然です。『試合を観る』ことはとても大切です。ゴール前での色々な場面を観ていなければ、当然イメージもできないですから、練習をするばかりでなく、『観ること』が非常に重要です。」

「日本でのサッカーの考え方だが、サッカーは日本では競技として捉えられていますが、ブラジルではサッカーは“遊び”として自然と始める。トップレベルに進めば専門的な指導を受けて環境も考えも変化してきますが、もともとあった“遊び心”は忘れない。楽しむ気持ちがあるからゴールをする技術のレベルアップが早い。日本の少年時代には、まだ1回負けたら終わりという大会が多い、そのメリットもあるかもしれませんが…10代の頃にストリートサッカーで遊びながらゴール前の経験を豊富に積んだブラジル人と、同じ年代で負けてはいけない、外してはいけない、という気持ちを持ってプレーする日本人とでは、やはり差が出てくるでしょうね。ゴールは楽しいもので、サッカーは面白い“遊び”なんです。」

ここでも、決定力を身につける特効薬はないが、人から与えてもらうだけでなく、自分から考えて工夫し吸収しようとするのが『技術』。“遊び心”があれば心から楽しめ、吸収力も格段とアップするはず…

日本の少年世代にもっともっと“遊び心”を！

『サッカーとは、真剣な“遊び”なのである』