[PPMで考える]巨人軍は誰にチャンスを与えるべきか?

 
 
 

■この記事まとめ
・記事のテーマ:PPM理論のフレームワークを使って巨人軍は誰にチャンスを与えるべきか?の基本的な考え方を整理してみる
・現状の問題点:巨人の打席年齢は30.9歳と12球団ワースト。中日より0.8歳もベテラン偏重打線
・改善策:誰にチャンスを与えるべきか?の基本的な考え方を整理する
・期待される効果:人員計画の指針を立てることで世代交代をスムーズにする


 


■PPMを使って誰にチャンスを与えるべきか考えてみよう!
 PPM理論という経営学のフレームワークを使って、巨人軍はいったい誰にチャンスを与えるべきか?誰にチャンスを与えないべきかの基本的な考え方を整理してみます。

・そもそもPPM理論ってなに?
 正式名はプロダクト・ポートフォリオ・マネジメント。いくつかの事業を持ってる企業にとって、どこに力を入れるべきかを整理するための考え方です。
「この事業部にはもっと予算を投入して、こっちは軽くしていいよね」とか決めるときに使うと便利なフレームワークです。このフレームワークを使って、誰にチャンスを与えるべきか?を整理してみたいと思います。硬く言うと、中長期的なリターン最大化を目指す場合の機会投資法を整理しようという企てです。

 

 

 

・結論からいきましょう!
18-25歳(若手)  「問題児」育成に手がかかり、チャンスを与える必要あり
26-30歳(レギュラー)   「花形」バンバン機会を与え結果として返してくれる
31-(元レギュラー)   「金のなる木」成績は安定し代打の神様枠なども
31-(非レギュラー) 「負け犬」見切りをつける。機会は問題児に与える

レギュラーを獲得できずに31歳を迎えてしまった「負け犬」の機会を減らして、
その機会を、25歳までの「問題児」に投入することで、
働き盛りの26-30歳で「花形」レギュラーとして高いパフォーマンスを発揮できる。
元レギュラーのベテランは「金のなる木」として心身ともにチームを牽引する。

 

※「その区分けだとMECEできてないじゃんw」と思われるかもですが、ここで区分されていないセグメントはクビ・セグメントです(合掌)

 

 


・PPMの理想的な流れ
金のなる木でしっかり勝率を稼いで、問題児にチャンスを投入する。
              ↓
チャンスを投入された問題児たちは、やがて花形へと成長しリターンを生み出す。
              ↓
花形たちはベテランになり、金のなる木としてチームを安定して勝利に導く。
            (以下ループ)
これがPPMの理想的な流れです。
この流れを塞き止める別の流れがあるなら、しっかり修正して理想に近づけましょうというのが運用面での文法。巨人におかしな流れは見当たりますか?


・球団にとって打席を与えることが投資です
 基本的な考え方として、球団にとって打席(守備機会を含めた「チャンス」)を与えることが投資です。ヒットを打つなど、出塁することがリターン。
この投資とリターンを1年単位という短いスパンでなく、3-5年といった中長期的なスパンで考えることで、世代交代をスムーズにしましょうよ。というのがこの記事の狙いです。


■チャンスやれば伸びるわけちゃうやろ!ゲームちゃうねんど!
 たしかに出場数=成長といった単純な成長モデルではないと思います。
より正確には、経験させ→失敗させ→壁にぶち当たり→壁を乗り越えられた者だけが成長できるというモデルだと考えています。失敗する経験が遅くなるほど、壁に気づくチャンスは遅れます。壁に気づいても機会が与えられなければ乗り越えるための試行錯誤はできません。なので
 ✕ 試合に出たら伸びる
 ○ 試合に出なきゃ伸びるきっかけすら気づけない
がより近いのだと考えています。
チャンスを与える投資は必ずリターンを生み出すわけではありませんが、投資なくてはリターンも期待できないわけです。いわばこの投資は、成長ゲームの参加資格みたいなものです。


■そんな若手に切り替える必要あるわけ?いまでも2位だったじゃん!
 はい。切り替える必要ありだと思ってます。
というのは、巨人軍の打席年齢は30.9歳と12球団ワースト。平均すると30.9歳にチャンスを与えてることになるんです。
それがどのぐらいヤバいかっていうと、年寄り打線と揶揄される11位の中日よりも、さらに0.8歳もベテラン偏重な打線を構成してます。

○参考:「12球団で最もベテラン偏重なのに12球団で最も打てない巨人打線!打席年齢・塁打年齢2016年前半 」
http://labola.jp/diary/3771585001
独自のデータ集計から作成してる力作の良記事なので、ぜひ読んでみて下さい。


■でも30.9歳だろうが結果だしてりゃいいじゃん!
 いいえ。野手のパフォーマンスがもっとも高いと期待できる年齢って28歳なんです。(大学の体育の授業で習った記憶なんで、ソースとかあったら加筆するかも)
タイトル獲得年齢など考慮すると、およそ野手のピーク年齢は28歳。
前後の26~30歳が収穫期。チームにメリットをもたらす時期。働き盛りですね。

 

(追記-参考資料)打者の全盛期-Baseball Lab「Archives」
http://archive.baseball-lab.jp/column_detail/&blog_id=7&id=140
打者成績のピークは26~28歳

なので25歳までに経験という投資を意図的に集中させることで、組織的・戦略的に良い26歳を迎えさせてあげることができるわけです。逆に31歳以降の選手はシビアに見切りをつける。起用するチャンスを減らす。


この見切りをつけるところ、シビアに人員整理する作業が巨人軍は苦手なんだと考えています。一方で日ハムはこれが徹底してるから世代交代がスムーズなんだと思います。(当時31歳だった糸井嘉男をあっさりトレードに出したことは衝撃的でした)

 

 

■じゃ、超変革の阪神を真似ろってこと?
 いいえ。勝率を犠牲にするような強引な世代交代はスマートではないと考えています。飛行機が着陸するのにガチャーンと振動させるような方法でなく、フワっと着陸させるような、いわゆるソフトランディングを目指したいと思います。


■ほーん?じゃ具体的にどうすんのさ?
 まず31歳以降でレギュラーを取れなかった人たちを整理します。
すでに今シーズン限りで引退を表明した鈴木尚広などは、本来であれば真っ先に整理の対象となります。他に考えられるのは、

相川 亮二     40歳 【☓】
鈴木 尚広     38歳 【引退】
阿部 慎之助   37歳 【○】
村田 修一     35歳 【○】
實松 一成     35歳 【☓】
加藤 健       35歳 【自由契約】
ギャレット      35歳 【○】
脇谷 亮太     34歳 【☓】
亀井 善行     34歳 【△】
片岡 治大     33歳 【△】
寺内 崇幸     33歳 【☓】
クルーズ       32歳 【○】
松本 哲也     32歳 【☓】
長野 久義     31歳 【○】
堂上 剛裕     31歳 【☓】

○:元花形の31オーバー。いわゆる「金のなる木」
☓:元問題児のまま31歳を超えてしまった。いわゆる「負け犬」
△:個別に判断が必要な選手


 

■でもベテラン頼りになるじゃん!一軍で育成すんなよ!
 上で挙げた選手のレベルであれば若手を使っても誤差の範囲かと思います。
バント成功率が10%ちがったところで、盗塁成功率が5%ちがったところで、大勢に影響ないと割り切るべきです。そこは織り込み済みで采配して下さいよという話です。

いくら使い勝手がいいとしても、彼ら問題児のまま31歳を超えてしまった人たちをシビアにカットしないことには、世代交代は遅々として進まないわけです。これまで彼らベテランに与えていた代打、代走、守備固め、ピンチバンターなどの脇役仕事を25歳以下の選手に割り振ろうというのが基本的な考え方。


「負け犬」などショッキングな用語が出てきますし、ベテラン好きなファンや固有の選手のファンもあるかとは思いますが、ここではあくまで「指針=基本的な考え方」を示すまでとしときますね。


 
■でも実際問題、若手が仕事できないじゃん!
 はい。今現在すぐやれと言ってもできないでしょう。
だからです。だから選手に明確なタスクを与えろと私は言いたいわけです。特に、レギュラーになれず26歳を迎えてしまった選手に対しては、シビアに目標を与えます。

・吉川大幾には
「バント成功率90%に上げろ。無理なら他の人間にチャンスを与える。やり方は任せるから結果を出せ。もし迷ったら打撃コーチに相談しろ。私からも言っておく」

・重信慎之介には
「お前には松本哲也の代わりの守備固めを期待してる。鈴木尚広の後がまとしての代走の切り札でも考えてる。やり方は(以下略)」

・大田泰示には
「ギャレットが交代したあとの守備固めで考えてる。レフトはもちろん、外野の3ポジションで仕事できるように準備しておけ。やり方は(以下略)」

「野球を続けたいなら、このハードルを超えろ」を設定して、コーチらとも目標を共有します。できなければ選手の責任でもあり、担当コーチの責任です。できる人に変わってもらいます。明確な指示すら出せないなら監督もできる人に(以下略)。

○関連記事:「こういう選手になろう」と思ってここまで来た選手じゃない。こうやるしか思いつかなかった。
http://labola.jp/diary/4379715000


■でもやっぱチームの勝利が第一やろお
 単年だけを見た短期的にはそのとおりです。
しかし短期的最適の中長期的誤謬というわけで、単年がいいからその延長線上に中長期的にも成功できるとは限らないというのがこのゲームの難しいところで面白いところでもあるわけです。だからベンチは、若手を使いすぎて今日の試合で失敗するリスクと、ベテラン偏重して焼け畑農業化する長期的リスク。天秤に掛けながら、うまいことバランスを取るという起用が求められるわけですね。

 

ギャンブルでも投資でも、すべての確率ゲームに共通するのは、ドボンしない程度にベッティングを積み増すというスリルが楽しいわけで、由伸監督には、「やりすぎたあ!下手こいた〜」とか「うわっ…私の采配、慎重すぎ…?」を楽しんでもらいたいところ。(できるとは言ってない)

 

 


■やることを決めるのでなく、やらないことを決めるのが戦略だ!
 秋季キャンプの話題として首脳陣は若手に対して複数ポジションを練習するようにオーダーを出しています。はっきり言います。アホかと。

 重信にお試しセカンドやらせてる場合か?
本職の外野守備もおぼつかない。ドラ1で二遊間を補強した。
ならやることは
1)松本哲から守備スペシャリストの枠を奪えるよう外野の特訓
2)鈴木尚が抜けた代走スペシャリストの枠を奪う
これだろうに

仮に外野にFA入団あろうが、外野の守備固め枠は必ず必要になる
レフトのギャレットはいつも早めに交代される。長野、亀井は劣化が著しく離脱の時期も一定程度あると予想される。そこで自分が指名される準備をしておく。それが重信と大田に必要な練習だよ。

岡本に外野守備なんて今更やらせてる場合ですか?
たしかに2016は阿部、村田が予想以上に出場して活躍できた。しかし体調や守備の劣化面を考えると、バックアップの1番手である岡本にお試し外野なんてやらせてる時間ないはずだと思う。阿部の故障時、守備固めでの打席、代打だけで100打席はチャンスあるはずなので個人的には一三塁の守備向上に専念したもらいたい。

 
「あれも大事だ。いやこれも見逃すわけにはいかないねえ」そんなの典型的なアホ経営者のすることです。ただの優柔不断です。良かれと思って盛り込むことが戦略のエッジを奪うんです。なまくら刀のような切れ味になっちゃうんです。

誰にでも1日は24時間。1年は365日。1イニングは3アウトで、1試合は9イニングで終わりです。時間リソースには限りがあるわけで、それを効率的に投資しなければ大きなリターンは期待できないわけで
選択と集中!やらないことを決めるのが戦略だ!
これを強く主張したくて私のプレゼンを終わらせていただきます。
ご清聴ありがとうございました(パトパチ)

 
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