【連載】ジェッツ始動!!(#1)


──20世紀初頭、アホアホ軍団により結成された草野球チームがあった。

その名も「博多ジェットカウボーイズ」(通称:JETS)

ここでは、2年間という短い活動期間ながら、

ごく一部草野球界では伝説として語り継がれている

ジェッツの栄光と挫折の歴史を紹介しよう。

(※ほぼノンフィクション&一部脚色)

  

  

草野球チーム博多ジェッツは幼なじみ同士のカンとタクミによって作られた。


カンは高校硬式野球の経験者だが、のほほんとした風体はあまりそれを感じさせない。

それもそのはずというか、野球マンガと野球ゲームの知識はオタクレベルだという。

なにをするにも格好から入る傾向にあり、なにかと影響されやすいようだ。

高校から始めた野球も、野茂のトルネード投法をやってみたかったからで、

右投げ左打ちにしたのも、ミスタータイガース掛布雅之の影響だという。

  

タクミは運動神経はあるが努力するのが大嫌いで、

学生の頃にやっていた部活動はどれも中途半端に終わっている。

ひょうきん者な反面、意外とプライドが高く扱いづらい面ももっている。

人付き合いを面倒臭がるタイプだが、幼なじみのカンには割と心を開いているようだ。

ちなみに左投げ左打ち、正真正銘のサウスポーである。

 

  

この時のふたりは、いい歳こいて時間を持て余しており、

どちらから言い出すわけでもなく、広場でのキャッチボールが日課となっていた。

もちろんいきなり速い球が放れるはずなどないので、

ふたりの興味が変化球に注がれるまでに時間はかからなかった。


星野カーブ、高速スライダー、ナックル、パーム、

エセフォーク、パワーカーブ、シンカー、シュート、etc…

  

ときにプロ野球投手の投法のモノマネをしながら、

互いがあらゆる変化球を試し、マスターした気分になった。

さらに気分が乗ってくると、近くのバッティングセンターまで足を運んだ。

ヴァーチャル動画の工藤公康が半速球の棒球を投げてくる。

ふたりは、ただただひたすら打ちまくった。

ひと汗かいたあとは、隣接するスロット店で日銭を稼いだあと、

その足で行きつけの居酒屋で日付が変わるまで飲んだ。

  

  

話題は決まって野球談義。よくもまぁ、飽きもせず続くものだが、

昔からのタイガース党で、パ・リーグは義理で地元のダイエーホークス。

いくら阪神の暗黒時代が続こうが、ダイエーファンに寝返ることはないのだと。

これもこのふたりに共通する点であり、長続きの秘訣なのかもしれない。

  

  

こんなアホみたいな生活をしばらく繰り返していくうちに、いつしか

グラウンドに立って野球をしたいという欲求が生まれてきた。

居酒屋での話題は「プロ野球」から「草野球」にすっかり替わってしまっていて、

最初は遊び半分だった話が、どんどんエスカレートしていき、

メンバーは誰にするか、誰にどこを守らせるかなどで大盛り上がりとなった。

   

ここまできたらもう後にはひけない!!

その席でヒマそうな人間に片っ端から連絡しメンバーの確約を得たのだった。

ノドをつく生ビールの感触とマルボロの香りが、

数年経った今でもこの頃を思い出させるのだという。

  

(つづく)




【JETS名鑑-その1-】 

ミスタージェッツ

カン(右投左打・二塁手/投捕外)

JETS主将。高校硬式経験者。走攻守と平凡ながらミートには非凡さを見せる。野球知識はかなりのもので司令塔の役割もこなす。


【JETS名鑑-その2-】 

自称エース

タクミ(左投左打・投手/一外)

センスまかせのサウスポー。球速はないが、大きく曲がるカーブが武器。コントロールと立ち上がりに不安を残す。





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