レビュー:2018:J2:第27節:H:vsカマタマーレ讃岐「嵌れば強いが戦術の幅の狭さが苦戦の理由であると再認識出来た試合」

岡山vs讃岐:3-0
得点者:3後藤 圭太(14上田 康太)、37鄭 充根(PK)、17関戸 健二(18齊藤 和樹)
観客数:10,594人
会場:シティライトスタジアム

1、チーム情報&評点

評価基準

良:1~5:悪

審判

主審:清水 勇人:2.5
副審:竹田 和雄、篠藤 巧:2.5
第4の審判員:堀 格郎

H:岡山

監督

長澤 徹:2.5

スタメン

37鄭 充根(ジョン・チュングン):2.0
24赤嶺 真吾:3.0、7伊藤 大介:3.0
11三村 真:3.5、14上田 康太:2.5、17関戸 健二:2.5、21椋原 健太:3.5
6喜山 康平:2.5、5増田 繁人:2.5、3後藤 圭太:2.0
13金山 隼樹:2.0

リザーブ

GK:22一森 純
DF:なし
MF:2澤口 雅彦、39高橋 壮也、15末吉 隼也、19仲間 隼斗、10大竹 洋平
FW:18齊藤 和樹

途中交代

37鄭 充根(ジョン・チュングン)→18齊藤 和樹:2.5
24赤嶺 真吾→19仲間 隼斗:3.0
7伊藤 大介→15末吉 隼也:3.5

 

A:讃岐

監督

北野 誠:3.5

スタメン

9原 一樹:3.0
10高木 和正:3.0、8渡邉 大剛:3.5、17佐々木 匠:3.0
7永田 亮太:3.5、28田中 英雄:3.0
31アレックス・アントニオ・デ・メロ・サントス(アレックス):3.5、5麻田 将吾:4.0、25岡村 和哉:4.0、4荒堀 謙次:3.0
1清水 健太:3.0

リザーブ

GK:24瀬口 拓弥
DF:3中島 大貴、15市村 篤司、22武田 有祐
MF:14佐々木 渉
FW:13木島 徹也、19重松 健太郎

途中交代

25岡村 和哉→13木島 徹也:3.5
10高木 和正→19重松 健太郎:3.5
4荒堀 謙次→22武田 有祐:3.0

2、得点経過

H:岡山:1-0:前半24分:3後藤 圭太(14上田 康太)

 14上田 康太の右CKを左足で蹴り、身体能力の高い3後藤 圭太が、ニアサイドで1人だけ高く長い跳躍により頭で合わせる。そのヘッディングシュートは、威力と精度共に十分で、ファーサイドに吸い込まれていきサイドネットに揺らして、岡山が先制。

H:岡山:2-0:前半36分:37鄭 充根(PK)

 スローインの流れから24赤嶺 真吾が収めて、7伊藤 大介が繋いで、3後藤 圭太がGKとDFの間を狙ったロングパスを蹴ります。落下点に37鄭 充根(ジョン・チュウグン)と5麻田 将吾が競り合い、37鄭 充根(ジョン・チュウグン)が、フィジカルの強さを活かして前で出る。そこで、5麻田 将吾が、手で引っ張って倒してしまいファール。ペルルティエリア内なので、岡山のPK。
 キッカーは、PKを獲得した37鄭 充根(ジョン・チュウグン)。思い切り右足で、右に強いボールを蹴り、GKの1清水 健太も逆の左に飛んだ事で、岡山が、追加点。37鄭 充根(ジョン・チュウグン)は、岡山への移籍後初ゴール。

H:岡山:3-0:後半27分:17関戸 健二(18齊藤 和樹)

 セカンドボールを7伊藤 大介が回収して、前線に残っていた18齊藤 和樹の前のスペースへロングパスを出す。18齊藤 和樹には、讃岐の残っていた7永田 亮太が寄せて対応する。7永田 亮太の寄せが甘かったので、18齊藤 和樹は、ある程度中の様子を見て、右足で狙いすましたグラウンダーのクロスを入れます。左コーナー付近からのクロスは、後方から走ってきた17関戸 健二へ通ります。17関戸 健二が1タッチした事で、ボールは17関戸 健二の股を緩やかに転がり、セフティゾーンの様に讃岐の選手が手を出せません。その時間で生じた隙を見逃さず、巧くボールをコントロールして、シュートコースを見つけると、迷わず右足を振りぬき、巧くコントロールされたボールは、右隅に決まりました。岡山が、ダメ押しの3点目。

3、数値評

評価基準

良:A~E:悪

H:岡山

攻撃評価:B
守備評価:B
采配評価:B
総合評価:B

A:讃岐

攻撃評価:D
守備評価:E
采配評価:D
総合評価:D

4、文章評

キープレイヤー

「37鄭 充根(ジョン・チュングン)」
活躍度:90%

 戦術「9李 勇載(イ・ヨンジェ)」に匹敵する破壊力を見せつけた。これで戦術「37鄭 充根(ジョン・チュウグン)」として、機能する事を期待できるパフォーマンスであった。ただ、J2下位に甘んじている理由である資金力に起因した個の力の部分で、戦術に頼った讃岐のCB陣に有効であったとして、J2上位で、ある程度勢い、戦術、個の力といった高パフォーマンスが予想されるチームに対してどこまで戦えるか。岡山が、J1昇格に目指す上で、問われるポイントになる事は、間違いない。

 また、9李 勇載(イ・ヨンジェ)の怪我からの復帰が遅れているが、チームに合流することが出来れば、チームの戦術の顔と言える二人が揃えれば、それなりの結果と内容が期待できる。2人が揃った時には、9李 勇載(イ・ヨンジェ)と37鄭 充根(ジョン・チュウグン)、24赤嶺 真吾と18齊藤 和樹の2組をセットになる。前線のもう一枚を状況に応じて起用していく事になる事が予想される。
7伊藤 大介であれば、フリーランとパスで隙を突いて攻める事が出来る。19仲間 隼斗であれば、一見無理そうな所でも強引に打破する力があり、力押ししたい時に有効だ。10大竹 洋平も他の2人の前線の2人の連携が取れれば、技術と視野を活かしたアシストとゴールが期待できる。監督のこの一枚をどうするかが、監督の腕の見せ所となる。最もそういった状況であれであり、復帰した時期に消化試合という状況だけでは避けて頂きたい。

攻撃のキーワード

「シュート意識」
達成度:80%

 北野 誠監督の対策というのは、37鄭 充根(ジョン・チュウグン)の存在により打ち破る事に成功した。岡山対策を上回る圧倒的なフィジカルにより、讃岐の迎撃能力を超えていたことで、讃岐は、交代して下がるまで、安定感がなかった。その結果、岡山は、ゴール前でのシーンを多くつくる事が出来、良い形でシュートを打つことが出来た。仕掛ける隙を生み出し、シュートを積極的に打つ形を作る事に成功した。
 やはり、敵陣深くで、ボールを持つ時間が増えれば、攻守ともに良い効果がある。それを改めて感じる事が出来た試合となった。

 また、長澤 徹体制になって、減っていたカウンターというのを今季初めて、多く見る事が出来た。これは、前半で2得点リード出来た事と、暑さなどのピッチコンディションの悪さが、讃岐の守備に大きな隙を生じさせていた。岡山としては、それがピークとなる75分以上に、1人でもそこを突く選手がいれば良かったが、走る事を放棄して上がりを待つ選手やロングパスを蹴る選手もいた。ピッチコンディションと疲労によるものであるが、チームとして、そういった余力を残せるかどうか。これは、得点を狙えるだけではなく、守備にも効果がある。自陣深くに選手が集まれば必然的に押し込めるが、足が速くまだまだ走れる選手が1人いるだけで、牽制となる。それによって相手にプレッシャーをかけるだけではなく、プレー精度の低下によるミスの誘発が期待できる。この部分の意識の弱さが、75分以降の得点の少なさになっている。
 つまり、普段そういった意識が希薄であるから、そういった辛い状況で、攻める意識を見せて、普段攻めていないから、そういった状況で、自分たちの攻撃が出来ない。加えて、相手の守備も硬くスペースが無く、基本戦術であるスペースへのロングパスが機能しない。よって、セットプレー以外では、正直現状では得点が期待できない状態。
 今からそういったパターンを作る事が難しいので、守備を固めて戦う事は、重要な勝利へのポイントとなる。あくまで、先制逃げ切りのチームだと感じたが、終盤戦に向けて、どうチームを持っていくのか、今季も最後まで見届けたい。

守備のキーワード

「バランスと寄せ」
達成度:75%

 4-2-3-1の布陣を布いてきた北野 誠のサイドを制圧して中へという攻撃の狙い対して、岡山は、シンプルなロングパスが機能したことで、讃岐の攻撃時に、サイドのスペースと中央のスペースを巧く埋める事で対応出来た。それによって最終ラインの選手が、空中戦に競る事があってもリスクを冒して食いついていくというシーンはほぼなかった。つまり、中盤で、スペースを消す事と、寄せがある程度対応出来た事で、完封することができたと言える。
 一方で、サイドが主導権は、讃岐にあり、サイドから攻略される事や形を作られてクロスを許すシーンなどがあった。更にクロスなどに行けなくてもサイドから中に繋いで、キープされることもあった。その結果、シュートを打たれるシーンが多くなってしまった。
 また、これは、プレビュー時の意図とは違うが、ワード的には、終盤の攻守のバランスも課題を残した。守備への比重のバランスがやや傾いたことで、終盤に讃岐の攻撃を受ける時間が長くなった。75分前までは、カウンターを仕掛けるシーンがあったが、それ以降は、ほぼなくなった。チームとして、そういった怖さを残す事で、守備のバランスをも図れるので、その辺りは、シーズンを通して改善して欲しいポイント。

讃岐のキーマン

「北野 誠監督」
対応度:95%

 上記でも少し述べましたが、讃岐は、4-2-3-1というシステムで、サイドの主導権を握るという攻撃の狙いと、運動量と守備力に定評のある28田中 英雄を中盤のフィルターとして機能させるという守備の狙いがありました。
 しかし、岡山は、序盤戦良かった戦術9李 勇載(イ・ヨンジェ)に近い戦術37鄭 充根(ジョン・チュウグン)が、嵌りました。どんな戦術か気になると思いますが、一言でいえば、ロングパスをDFとGKの間に狙って蹴り、37鄭 充根(ジョン・チュウグン)と、競らせてフィジカルを前面で出させて戦うサッカーです。シンプルながら嵌れば非常に強力な戦術と言えます。
 まず、この戦術が嵌るという事は、DFラインの選手が、37鄭 充根(ジョン・チュウグン)のフィジカルに苦しんでいる事を意味し、ロングパスを蹴るだけで、際どいギリギリの守備を差迫られます。この結果、DFの選手は、心身共に消耗しますし、DFラインがずるずる下げざる得ず、攻守ともに手痛い状況です。
 更にロングパスだけで攻められるので、岡山の陣形も乱れず、攻守のバランスが非常に良くなります。守備のキーワードで触れたバランスは、まさにこれによって生まれていました。そして、守備の狙いであった28田中 英雄の守備を省略して、一気にDFラインに迫れるので、ローリスクハイリターン状態で、37鄭 充根(ジョン・チュウグン)が、交代して下がるまでは勿論、18齊藤 和樹が入った後も、ダメージが残っていました。スコアも前半で、2点リードでしたし、カウンターが面白い様に出来る様になっていました。

 岡山の攻撃から守備への比重に大きく傾いた終盤に、北野 誠監督の狙いとするサッカーがで、形を作れるようになっていましたが、時既に遅し。序盤戦の強かった岡山のサッカーは、機能すれば岡山キラーの北野 誠監督を持ってしても対応が難しい。そう感じた試合でした。

総評

 9李 勇載(イ・ヨンジェ)と37鄭 充根(ジョン・チュウグン)が、来季もいるのであれば、来季は面白いシーズンになると思います。ただ、長澤 徹監督体制も長く戦ってきましたが、攻撃は、組織力というよりは、個と運に頼ったロングパスサッカーしかできなかった事、若手の起用の仕方を含めた選手起用の固定。そして、守備に人数を多く割く傾向。
こういった事を考えると、三浦 文丈氏に任せても良いのではないかと思います。1年間長澤 徹監督と一緒に戦う事になるでしょうし、仮に上記の2人が残るなら、そこをベースに、攻守のバランスの改善や選手起用の改善、こういった部分に着手できる来季にするためにも長澤 徹監督には、最後までプレーオフを狙える勝ち点で、最後まで戦って欲しいと思います。
 正直、ライバルの讃岐にホームで3-0という快勝したからと言っても来季も見たいかどうかは、別問題。長澤 徹監督のしたいサッカーが見えた今季は、可能性と限界が見え始めた中盤戦となっています。成長の余地は小さいと思いますし、今季は、色々あり、来季は、資金面など厳しくなると思いますし、変化が必要性は高まっていると思います。

5、試合評

Man Of the Match(MOM):37鄭 充根(岡山)
Most Impressive Player(MIP):13金山 隼樹(岡山)
満足度(10点満点):9点

6、試合後通算対戦成績

J2

H:岡山:4勝(13得点):2分:(10得点)4勝:讃岐:A

会場別(岡山視点)

H:シティライトスタジアム:2勝1分2敗
A:Pikaraスタジアム:2勝1分2敗

4、試合前チーム成績(データ)

勝敗(26/42)(自他共に中止試合複数有)
10勝8分8敗(暫定9位:勝ち点38)

得失点
27得点22失点(+5)

ホームスコア(12試合:5勝6分2敗:18得点10失点)
〇:1-0×2、3-0×2、3-1×1
△:0-0×3、2-2×2、3-3×1
●:0-1×2

アウェースコア(13試合:5勝2分6敗:9得点12失点)
〇:0-1×4、1-3×1
△:1-1×2
●:1-0×4、2-0×1、3-0×1

得点時間帯(27得点:前半×12、後半×15)
1分~15分×3、16分~30分×4、31分~45分×5、前半AT
46分~60分×8、61分~75分×7、76分~90分、後半AT

失点時間帯(22失点:前半×12、後半×10)
1分~15分×3、16分~30分×4、31分×45分×5、前半AT
46分~60分×4、61分~75分×2、76分~90分×2、後半AT×2

ゴール(全27ゴール)
FW(8):18齊藤 和樹×1(PK右足×1)、19仲間 隼斗×4(頭2、右足1、ボレー右足1)、24赤嶺 真吾×2(左足ボレー1、PK右足1)、37鄭 充根×1(PK右足1)
MF(11):7伊藤 大介×2(ダイビングヘッド1、右足ミドル1)、8塚川 孝輝×3(頭1、右足ミドル1、左足ミドル1)、11三村 真×1(左足ボレー1)14上田 康太×3(FK左足3)25武田 将平×1(左足ミドル1)、17関戸 健二×1(右足シュート1)
DF(7):3後藤 圭太×2(頭2)、4濱田 水輝×3(頭3)、6喜山 康平×1(頭1)、33阿部 海人×1(左足1)
GK:なし
その他(1):オウンゴール×1(足1)

アシスト(全18アシスト)
FW(8):9李 勇載×1(右足1)、18齊藤 和樹×3(右足1、右足クロス2)、19仲間 隼斗×1(左足1)、24赤嶺 真吾×3(パス右足2、クロス右足1)
MF(10):8塚川 孝輝×2(頭1、右足1)、14上田 康太×6(CK左足2、FK左足2、クロス左足1、パス左足1)、21椋原 健太×2(右足クロス2)
DF:なし
GK:なし

得点の形(27得点:流れ×11、セットプレー×16)
ボール奪取→ミドルシュート(右足)×1
パス(左足)→ミドルシュート(左足)×1
クロス(右足)→右足×1、クロス(右足)→ダイビングヘッド(頭)×1、クロス(右足)→トラップ→右足シュート×1クロス→左足ボレー×1、クロス→右足ボレー×1、クロス(右足)→頭×1、クロス→頭×1、クロス→オウンゴール×1
速攻→ポストプレー→右足ミドル×1
FK→頭×2、FK→混戦→左足×1
CK→混戦→頭×1、CK→2次クロス→頭×1、右CK→セカンドボール→ダイレクトボレー(左足)×1、右CK(左足)→頭×1、左CK→頭×1、
左足直接FK×3、PK(右足)×3
ロングスロー→混戦→頭×1、ロングスロー→セカンドボール回収バックパス→左足ミドル×1

失点の形(22失点:流れ×17、セットプレー×5)
カウンター(CK)→ロングパス(左足)→ダイレクトシュート(右足)×1、カウンター(CK)→スルーパス(右足)→ループシュート(左足)
左足(フリック)→頭×1、右足(パス)→右足(ミドル)×1、右足(スルーパス)→右足×1、右足(浮き球パス)→右足(ボレーシュート)×1、右足(背面スルーパス)→右足(股抜きシュート)×1
右足(クロスが直接)×1、右足(クロス)→頭×2、右足(クロス)→ブロック→右足(押し込み)×1、左足(クロス)→頭×2
ドリブルからシュート(右足)→セーブ→ダイレクトシュート(右足)×1
毀れ球→ドリブル→シュート(右足)×1
CK→ショートコーナー→右足(ミドル)×1
PK×1、PK(右足)×2
右足×1、右足(ミドル)→オウンゴール×1
ロングスロー→テクニカルな繋ぎ→シュート(左足)×1

岡山から世界へ 
To Be Continued

by 杉野 雅昭(Masaaki Sugino)

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