スポーツでの突然死を防ごう④ ~AEDで救われた命~


 これまでに紹介したスポーツ選手や子ども達の失われた命ばかりではなく、救われた命も増えてきています。

 

 

 アメリカでは、2001年に連邦航空局による全旅客機へのAED搭載を皮切りに、連邦政府ビル、空港、カジノ、一般企業、学校、公的施設へのAED配備が進んでいます。シカゴのオヘア国際空港では、通行人がAEDを使用し、2年間に心停止18例のうち、11例の蘇生に成功しました。

 

 初めて日本国内においてAEDで命が救われたのは、2005年に大阪府で行われたマラソン大会です。

 

 

 「第12回泉州国際市民マラソンでランナーがAED使用」

 

 2005年5月20日 大阪府で行われた第12回泉州国際市民マラソンで、スタート地点から1キロ先で、70歳の男性が倒れ、心肺停止状態になりました。男性の近くを走っていた、マラソンの参加ランナーのうち、救急救命士、医師、看護師らがただちに心肺蘇生法を開始し、さらに並走していた救護車のAEDを使用したところ、心拍も呼吸も戻りました。

 蘇生した男性は高齢とはいえ、マラソン歴25年、フルマラソン出場も60回を越すベテランランナーで、原因は心筋梗塞だったそうです。

 

 イベントでもAEDが準備されるのが常識になりつつあります。

 

 

  「愛知万博 “愛・地球博” での蘇生例」

 

 2005年3月、パビリオンの工事中に50代の男性作業員が倒れ、連絡を受けた救急救命士が急行、AEDを使用し、心肺蘇生しました。

 4月、50代の女性の呼吸が停止しました。この時は、救急隊がAEDで心電図を取りながら、救急措置を行い、蘇生しました。

 8月、40代の男性が心肺停止で倒れましたが、近くにいた医学生3人がAEDを使い、蘇生しました。

 3例とも、AED使用後、病院に運ばれ、後遺症もなく社会復帰したそうです。

 

 学校に設置されたAEDで生徒の命が救われた例も増えてきました。

 

 

 「高校野球児が心臓震盪、観戦中の救急救命士が救う」

 

 2007年4月、大阪府の私立高校で、高校野球の試合中に、打球が投手に直撃し、投手が意識を失って倒れました。観戦中の救急救命士がただちに心肺蘇生を行い、学校に設置してあったAEDを使ったところ、心拍も呼吸も戻りました。

 

 上記の例はたまたま医療関係者が現場に居合わせたことも幸いしていますが、東京マラソンでは、一般人でもAEDを使えることを生かしボランティアが活躍しました。

 

 

 「ボランティアが活躍した東京マラソン」

 

 2007年2月18日、約3万人が都内を走った「東京マラソン」では、救急救命士、ボランティアの学生ら約30組がAEDを携帯して、各地点に自転車で待機、急病、事故が発生した時はすぐに駆けつけられる体制を整えていました。その結果、38キロ地点で倒れた59歳の男性はすぐに救護所に搬送され、また、41キロ地点で倒れた男性は、自転車で駆けつけたモバイルAEDが蘇生を行い、それぞれ無事に回復しています。

 

 2009年3月22日に開催された東京マラソンでは、タレントの松村邦洋さん(当時41歳)が急に倒れ、心肺停止となりました。この時、ボランティアで参加していた「AED」を持ったモバイル隊(国士舘大の医療救護スタッフ)が沿道に配置されており、ランナーから「人が倒れている」との通報を受け、自転車で約300メートル離れた現場へ急行し、通報から1分足らずで救命活動を開始できたそうです。

 意識不明の松村さんにAEDによる除細動(電気ショック)を2回、胸骨圧迫~酸素投与などの蘇生措置を施し、松村さんは意識を取り戻し、その後の検査結果でも異常がなく、社会復帰しています。

 

 サッカーでも、医療関係者でもない一般人が助けた事例があっています。

 

 

 「高校生がサッカー試合中に心臓震盪 指導者がAEDで救う」

 

 2010年5月2日、熊本県の県立高校で行われていた高校生のサッカー試合中、選手同士で軽いコンタクトがあった後、一方の選手が急に倒れ、心肺停止となりました。原因は心臓震盪です。

 教員2名が人工呼吸と胸骨圧迫を分担し、心肺蘇生法を行っている間、運営担当者が職員室にある「AED」を取りに走り、3分後には除細動を実施できました。通報から6分後に救急隊が到着した時には、既に心拍も呼吸も再開しており、近隣の病院に搬送する頃には、会話ができるくらいにまで回復していました。その後の検査結果も異常はなく社会復帰し、現在大学受験に臨んでいるそうです。

 

 後日詳しい状況等を確認してみると、ここにはいくつかの幸運が重なっていたことが分かりました。AEDが設置してある学校においてよく考えるべき問題でもあります。

 

①会場責任校のコーチが「AED」の場所を認識していた。

 (いくらAEDが設置されていても場所が分かっていなければ意味ありません‥)

②授業がない週末は、通常鍵がかかっているはずの職員室(AED設置)に、残業中の教員がいた。(鍵がかかっていたらガラスを割って進入‥誰でも躊躇しますよね!?)

③試合に参加していた顧問が心肺蘇生法を知っており、的確に処置が行われていた。

 (AEDだけでは人は救えません。AED到着までに心肺蘇生法で除細動への希望をつなぎ止めることが必要なんです。)

 

 

 突然の心肺停止は、運動中だけでなく、人が集まる場所、駅、学校、イベント会場、オフィスでも、いつ遭遇しても不思議ではありません。AEDの設置が進み、「心肺蘇生法」と「AED」について知る人が増えれば、救われる命がもっと増えるでしょう。あなた自身‥そして皆さんが愛する人々が助かるためにも、広めていって欲しいと願います。

 

 上記で紹介した事故例は、複数の報道、報告を元に作成しましたが、AED設置は日々、増えています。公共施設、駅やビル、イベント開催場所など、AEDを目にすることが多くなっています。急変の際にAEDをすぐに使えることができれば、それだけ多くの命が救われます。

 会社や学校、スポーツ施設、宿泊先などの外出先周辺のどこにAEDが設置されているか気にしてみてください。いざという時、その知識が役に立つこともあるかもしれません。

 

 

 次回は、Jリーグでも進む「AED」と「救命講習」への取り組みについて取り上げてみたいと思います。

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