
冷たい左手
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ヤスオ
2011年11月20日 22:33 visibility34
このまま急行電車に
乗っていていいのか
不安だった
目的地に向かうものなのか
自信がなかったからだ
以前に一度だけ
行ったことがある場所
電車の乗り継ぎなど
覚えていなかった
『扉が閉まります』
アナウンスが鳴った
扉が閉まる直前に
電車から飛び降りた
間違えて違う場所に
行ってしまいたくなかった
急行が出てから
落ち着いて確認してみると
間違えてなどいなかった
確かに目的地に向かう急行は
行ってしまった
次に来るのは『各停』
目的地までは
少し時間が掛かる
頭の中でため息をつき
(実際についたかもしれない)
バックの中に手を突っ込んで
読みかけの小説を取り出した
『そうやって、たくさんのチャンスを逃してきたんだろう?』
振り払うように
文字を追った
右手首を掴んだ左手が
冷たかった
- favorite6 visibility34
- 事務局に通報しました。
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