ウクライナ:親露派行政機能せず「支援物資で生きている」 毎日新聞

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    2015年03月16日 11:00 visibility213
毎日新聞 2015年03月15日 21時51分(最終更新 03月16日 01時42分)

 【ドネツク真野森作】ウクライナ東部で続く政府軍と親ロシア派武装勢力の紛争は、2月の停戦開始から15日で1カ月を迎えた。親露派の拠点都市ドネツクは、戦闘はほぼ収束した。中心部にある国立外科病院。サッカー選手になるのが夢だったデニス・ペニコフさん(14)は3回手術した左脚をじっと見つめ、ぽつりと語った。「戦争が終わったら静かに暮らしたい」

 昨年10月、ドネツク近郊で仲良し7人組で遊んでいて突然、体を吹き飛ばされた。一緒にいた子が拾った小さな不発弾を、そうとは知らずに投げて爆発させた。クラスター爆弾とみられる。2人が死亡し、残る5人も重傷を負った。「悲しくて恐ろしくて……」。それ以上は語らなかった。

 市民の多くはウクライナ政府を「市民を殺すファシスト」と憎んでいた。子供たちも例外ではない。停戦の1週間前、バス停近くへの砲撃で右脚を負傷したミハイル・セメネンコさん(15)は「退院したらウクライナ軍に報復するため戦闘員になる」と、ベッドの上で天井をにらんだ。

 親露派支配地域では、食料や医薬品は入手できるが価格は2倍に跳ね上がった。親露派の行政部門は機能しておらず、高齢者や失業家庭にとっては外部からの人道支援が命綱だ。

 地元のサッカーチーム「シャフタル(鉱山労働者の意味)」のメインスタジアムのグッズ販売店も食料など人道物資の配給所だ。オーナーの富豪アフメトフ氏が私財を投じて支援している。同氏は東部の分離独立に反対しているため親露派ににらまれ、姿を消しているが、親露派は配給を黙認する。配給所の責任者で、チーム職員だったアンドレイ・サニンさん(41)は「状況はそれほど深刻だ。多くの人々が支援物資で生き永らえている」と語った。

 一方、親露派の戦闘員は、下級兵でも、紛争前の市民の平均月収と同じ月300ドルの給料を得ている。市中心部の飲食店では、若い女性らを連れた迷彩服の戦闘員集団が目立つ。

 資金源はどこか。親露派副司令官を名乗るバスリン氏は、「世界中から寄付が来る。兵器はウクライナ軍から奪い、国外の『闇市場』でも入手する」と話し、ロシアの支援を否定した。

 親露派の行政部門幹部で「ドネツク市長」を名乗るマルティノフ氏は「我々には炭鉱や鉄鋼の工業があり、戦争さえ終われば自立できる。ロシアとの関係が最も重要だ」と語った。戦闘員の男性(40)も「お互い殺し合った後で(ウクライナ政府と)一緒にやっていくのは不可能。(南北分断の)朝鮮半島と同じだ」と言い切った。

 親露派を支持しない住民も少数ながらいる。元商店経営者、アンドレイさん(38)は、「普通の人間はここでは生きていけない。2歳の娘と妻が大事なので、脱出を計画している」と声を潜めて打ち明けた。

http://mainichi.jp/select/news/20150316k0000m030078000c.html

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