ピッチャーゴロ、エレジー(温品 浩)

ピッチャーゴロ、エレジー(温品 浩の回想)

1987年(昭和62年)第69回夏の甲子園。

 

山口県代表は意外にも大会を僅差で勝ち上がっていた。

 

そして、ベスト8進出で王者宇部商業と対戦していた。

 

どう負けるべきだと思い3年生は前日「明日が終われば海や!、何処の海水浴場へ行くか?」と楽しそうに語らっていた。

 

良く、何処にでも有るチームであった。

 

それが宇部商業に6回まで何故か?0-0と互角の戦い。7回にエラー絡みで2点を先制されると、此処から奇跡が始まる。

 

その裏控えの福島が場外にホームランを放ち同点に追い付いてしまうのだ。

 

そして9回裏その福島がサヨナラ3ベースを放ち王者宇部商業をうっちゃるのだ。こうなると、勢いは止まらない準決勝の岩陽高校はエース温品のコントロールが定まらず、1-5と8回まで4点リードされてしまう。奇跡は二度起きないと思ったが9回裏追い付き、10回裏にサヨナラ勝ちをしてしまう。

 

決勝戦は古豪の下関商業

 

何故か打線が好調で序盤で7をリード、しかし先発靏本浩司が捕まり、リリーフの温品もパットしなかったが最後は8-7で逃げ切ったのだ。

 

無心のポジティブである。

 

ここに春夏初めて山口県立徳山高校が甲子園出場を決めた。

 

甲子園では8月9日の大会2日目の第一試合で山形県代表の東海大山形と対戦した。

 

先発はエース温品

 

初回、4回、5回とヒットは打たれるが無難な投球で東海大山形を0に封じて行く。

 

徳山は7回裏に靏本に待望のホームランが出て1点を先行する。

 

既に回も進み9回表

 

東海大山形の奧山を三振、宝角には右中間に三塁打を打たれたが、畑地をセカンドゴロに押さえて2アウト、あと一人で勝利の校歌が歌える。

 

次は4番の渋谷

 

最後の打者、いや最後の打者になる筈だった。

 

いい感じて弾き返された、しかし、温品のグラフの中にボールは収まっていた。「よーしゃ!、これで勝ちや!」と思って一塁へ投げた瞬間、ボールが高く浮いた、一塁手がジャンプしても取れない、目の前の勝利が手の中からスルリとこぼれ落ちた。

 

温品の心は乱れに乱れて居た。「まだ同点だ!」ではなく「もう負けた!」と思ったのかも知れない。

 

案の定、次打者の赤木に鋭くセンター前に運ばれてしまった。

 

9回裏1点を徳山高校に返す力は残っていなかった。

 

一瞬の気の緩みが『痛恨』と言う二文字の言葉を生んでしまう。

 

それを学んだ、夏の日の1日だったような気がする。

 

☆高校野球 熱闘の世紀Ⅱ(ベースボールマガジン社)より写真引用。

 

 

 

 

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