【オランダ】フィテッセ監督が語る 「ハーフナー・マイクをMFで起用する理由」

  • 李紗
    2012年10月01日 11:11 visibility146

9月16日に行なわれたエールディビジ第5戦のフローニンゲン戦で、ハーフナー・マイクは1ゴール1アシストの活躍を見せた。ゴールは、相手にシャツを引っ張られながらも気にせず、高い打点のヘッドで決めた豪快なもの。そしてアシストは、50メートルもの距離をドリブルで疾走し、味方と目配せしながらラストパスを出したものだった。オランダのスポーツ週刊誌『NUsport』は、ハーフナーを『週間ベストイレブン』の一員に選んだ。

「これだけのインパクトを残せば、次は最初から使ってもらえるかな?」

 ハーフナーはフレット・ルッテン監督をチラリと見ながら笑った。今季のハーフナーはまだスタメン出場がなく、フローニンゲン戦も後半開始からの登場だったからだ。

 しかも、ポジションは左MF。また、厳しい戦いを強いられるアウェイゲーム。さらに前半、味方のディフェンダーが退場し、フィテッセはひとり少ない状況でもあった。チームが劣勢に陥った中、ハーフナーは苦し紛れにボールをクリアするなど、守備にも奔走した。それでもハーフナーはわずかなチャンスで先制ゴールを決め、ダメ押しゴールのアシストも記録し、チームの勝利に大きく貢献したのである。

 フィセッテの地元アーネムでは、ハーフナーのスタメン出場の期待が高まっていった。次節ヘラクレス戦前の練習では、レギュラー組に入ってプレイもしていた。ポジションはトップ下。調子も良かった。しかし9月22日の第6戦・ヘラクレス戦も、ハーフナーはスタメンの座を奪うことはできなかった。

「紅白戦で調子も良かっただけに、ショックでした」

 前半が0-0で終わり、ハーフタイムに入るとハーフナーは、控えの仲間たちとボール回しをしていた。すると、ハーフナーを応援するサポーターたちの声がスタジアム中に響いた。

「嬉しかったです。なんか、ちょっと感動しました」

 この日も左MF、そして後半開始からの出場だった。ルッテン監督の指示はただひと言。「やること、分かっているな」。それに対してハーフナーは、うなずくだけだった。

 ハーフナーは考えた。しっかり守備の意識を持とう。味方のサポートを続けよう。ボールが来たら簡単にさばこう。そしてチームのリズムを作ろう――と。

 結果、ヘラクレス戦は1-1の引き分けに終わった。ハーフナーはフリーでのヘディングを外してしまった。前節のフローニンゲン戦でハーフナーに『9』という高採点をつけた地元紙『デ・ヘルダーランダー』は、ヘラクレス戦では「左サイドでのプレイは責められない。しかし、ゴール正面で決定機を外してしまった」と低評価。採点はわずか『5』だった。

 一方、週刊専門誌『フットボール・インターナショナル』はヘラクレス戦のハーフナーに『7』という、『デ・ヘルダーランダー』紙とは真逆の高評価を与えた。

 ルッテン監督は交代の意図をこう語る。

「前半、左サイドでプレイしていたジョナタン・レイスは誤ったプレイの選択が多く、ヘラクレスの右からのビルドアップを許していた。そこを修正するため、後半、私はレイスをストライカーに回し、ハーフナーを左MFに置いたんだ。それがうまく機能した」

 きっとそこを、『フットボール・インターナショナル』誌は評価した


生粋のストライカー――。そう世間一般に思われているハーフナーに対し、ルッテン監督は明らかに他の者とは違う目で見ている。たった1試合のチャレンジに終わったが、8月2日のヨーロッパカップ予選・アンジ戦で、ハーフナーはボランチとして20分間プレイした。また、9月26日のKNVBカップ2回戦・ヘメルト戦では、トップ下、左ウイング、右ウイングと、2列目の全ポジションをこなした。

「ボランチはもう見切られたと思う(苦笑)。でも監督は、やたら俺をいろんなポジションで試したがるんですよね。『お前は器用だから、どこでもできる』って」

 昨季、ハーフナーがストライカーとしてピッチに入ると、味方は長身の彼をターゲットにどんどんロングボールを蹴った。しかし今季、チームの新監督に就任したルッテン監督は、ハーフナーの足もとの技術と戦術眼を見抜き、複数のポジションを経験させることで、よりたくましいサッカー選手に育てようとしている。

「ハーフナーは今、どんどん強くなってきている。彼の父親はオランダ人だけど、ハーフナー自身のふるまいは日本人。オランダ人は何か言われると『うん、そうだけど』って言い返して来るけれど、彼は決してそんなことを言わない。一緒に仕事をしていて楽しい選手だ。今、我々はハーフナーをより強い選手にするためのプログラムを組んでいる。彼は間もなく、その成果を手にするだろう」(ルッテン監督)

 多くのポジションを経験していることについて、ハーフナーは「プレイの幅が広がっていると言えば、広がっているんじゃないですか。成長はしていると思う。監督も『お前が今、一番成長している』って言ってくれています。じゃ、なぜベンチなの? というのが自分の中ではありますが……」と、苦笑交じりに語っている。

 なぜ、ベンチなのか――。今、ハーフナーはそこを考えながら、確実に自分自身が成長している手ごたえを感じてプレイしている。



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