なぜ軟式テニスのバックハンドは…
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よし
2010年04月22日 21:43 visibility14013
さなぎさんの日記に「なんで、軟式テニスのバックハンドは、フォアハンドと同じ側の面で打つのでしょう」という疑問が出ていたので、こちらに少し書いておきます。
上前淳一郎の『やわらかなボール』というノンフィクションの中に、日本テニスの黎明期のエピソードがいろいろと出てきます。
日本にテニスが入ってきたのは1870年前後で、横浜居留地のイギリス人を通じて入ってきたとあります。
その後、海外でテニスを覚えた人たちが日本にテニス用具を持ち帰り、日本でもするようになるのだけれど、テニスボールを扱う業者は日本に一ヶ所だけで、うな重が30銭で食べられる時代に、テニスボール1個が1円したそうです。
テニスをしたい人は増えていっても、ボールが貴重品すぎて、なかなか思うようにテニスができない。
そこで、日本で工夫して作ったのが軟式のゴムボール。三田土ゴム会社の作った赤いMの字のプリントされた通称赤M球は、1個20銭ということで、これがきっかけとなって日本では軟式テニスが普及していきます。
当時、軟式テニスのラケットの握り方にちゃんとした理論があったわけではありませんでした。
しかし、どうやら剣道の要領をテニスに持ち込んでいたようです。サーブは「オメン」、フォアハンドは「ドウ」、ボレーは「コテ」。
なるほど、僕のボレーは、いまだに軟式テニス風の体の真ん前でボールをとらえるボレーなのですが、よくよく考えてみると、これって剣道の「コテ」です。
ここからは、その描写をベースにした僕の推測なのですが、軟式テニスのバックハンドのラケットの向きが硬式テニスと逆になったのも、どうやら、このあたりに原因がありそうです。
剣道で抜き胴を打つときのことを考えれば、なるほど、軟式テニスのバックハンドと同じではありませんか。
手の甲を前にして、剣を振る剣士はいないでしょう。手のひらの方が、相手に向いているはずです。
つまり、剣道の延長線上としてラケットを振っていたので、軟式テニスのバックハンドは、硬式テニスとは逆の面を使うようになったということなのでしょう。
また、軽くて柔らかい軟式テニスのボールを打つには、より力の入る打ち方が必要で、そのことからも手の甲ではなく、手のひらで打つようなスタイルが定着していったのでしょう。
上前淳一郎の『やわらかなボール』は、すでに絶版ではありますが、大正時代に日本のテニスプレイヤーが世界に進出して活躍する様子が活き活きと描かれている、素晴らしいノンフィクションです。
もし、機会があれば、ぜひご一読をオススメします。
- 事務局に通報しました。
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