昨日の試合

  • よし
    2010年05月03日 21:35 visibility83

▼朝起きると、頭がズキズキして、胃がムカムカしていた。
 昨日は三鷹にある友人の家で、昼間っから延々と飲んでいたのだ。
 さらには喉がイガイガと痛み、鼻水がやたらと流れてくる。
 Tシャツにポロシャツを羽織っただけの薄着で、酔っ払って帰れなくなった友人を中野まで送っていったり、終電近い武蔵野線のホームで延々と電車を待ったりしていたので、どうも風邪をひいてしまったらしい。



 でも、テニスに行く。
 ハンドルを握って、息子と一緒に舎人公園での友人主催の練習会に参加する。
 久しぶりに気持ちのいい快晴だ。風もほとんどない。
 のど飴をなめながら、4時間、ラケットを振る。
 体の中に残っていたアルコールが汗と一緒に流れ出していく。
 ああ、やっぱりテニスはいいなあ。楽しいなあ。



 と、ここまでだったら、実に健康的で理想的な休日の過ごし方なのだけれど、今日は夕方からスクールでのシングルスゲームの大会が待っているのだった。
 試合の当日に4時間テニスをしていくというだけで充分にバカなのだけれど、今回はさらに前日の過ごし方に大いに問題があった。
 いくらなんでも、試合の前日に昼間っから終電まで延々と酒を飲み続けて、あげくのはてに風邪をひいてしまうだなんて。



▼夕方の5時半からスクールでのシングルス大会がスタートする。
 エントリーは12名で、4名ずつの3つのブロックで総当たり戦を行ない、各ブロックの上位2名ずつが決勝トーナメントに進む。
 前回は奇跡的に予選を1位抜けして決勝トーナメントで4位に入ることができたが、そうそう奇蹟は望めない。
 しかも、同じブロックになったメンバーの顔ぶれが凄かった。毎回毎回、決勝戦までコマを進めるような強豪ばかりが集まってしまったのである。
 右隣りのブロックならば、うまくすれば2つ勝って決勝トーナメントに進む可能性もあるだろう。左隣りのブロックだって、ひとつはなんとか勝てるかもしれない。
 しかし、このブロックでは無理だ。今日も3敗をくらって帰ることがほぼ確定という顔ぶれだったのである。



▼1試合目は大学3年生のT山くん。息子と同じ年令で、なおかつ息子と同じ大学に通っている。
 T山くんは身体能力がむちゃくちゃ優れていて、コート内のどこにボールが打ち込まれても一瞬で追いついて、しかもこちらが絶対に追いつけないようなものすごく速いボールを厳しいコースに打ち込んで来る。
 以前、彼が絶不調に陥っている時に一度だけ対戦したことがあり、その時には僕が勝たせてもらっている。しかし、その後精進を積み重ねた彼はむちゃくちゃ強くなっていて、まず、僕に勝ち目はない。
 試合の前にコーチに聞いてみる。
「彼を相手に、何かできることはありますか? いったい、どういう闘い方をすればいいですか?」
 腕組みをしたコーチは、じっと遠くを見て、重々しい口調でこういった。
「気合いです」
 それだけ? 戦術のアドバイスは?
「この初戦が、決勝戦のつもりで挑むことです」
 いや、具体的な戦術のアドバイスはないんですか?
 仕方なく、僕も肯く。
「わかりました。全エネルギーをこの初戦に注ぎ込みます」
 全エネルギーといっても、この時点でたいしたエネルギーが残っているわけでもないのだけれど。



 宣言通り、全エネルギーを注ぎ込んで、若者に挑んでいく。
 ガチンコの打ち合いを繰り広げる。
 意外なことに、ガチンコの打ち合いだったら、けっこう勝負になっている。
 しかも、真っ向勝負以外のことをしようとしてこないので、それなりに対応ができるではないか。
 速いボールの真っ正面からの打ち合いは、大好きなのだ。
 しかし、対応に苦慮させられたのが、大きく曲がってくるスライスサーブだ。スピードの乗ったサーブがグインと曲がるので、なかなかタイミングがあわない。
 そのスライスサーブに、時々ドフラットサーブが混じる。
 おかげで、サービスキープの展開が繰り返されることとなる。
 そして、事件が発生!
 T山くんの鬼のようなドフラットサーブが真っ正面から突っ込んで来て、目の前の地面で跳ねて、まったく避ける余裕もなくこちらの大切なところを下から直撃!
 ぐはあっ!
 思わず悶絶してうずくまってしまう。
 よしは死んだ。
 復活の呪文はない。
 駆け寄ったコーチが腰のところをトントンと叩いてくれたけれど、あれって腰を叩いてなんとかなるもんなんですか? 効果があるんですか? 叩いてもらっても、痛いものは痛いんですけど。
 力石徹のアッパーパンチをくらった矢吹ジョーのような状態ではあったが、痛みをこらえてなんとか立ち上がる。えらいぞ、オレ。エイドリアーン!
 しかし、そのラウンドはあっけなく玉砕。いや、玉砕という言葉は、あまりにもストレートすぎてコワイぞ。玉が砕けてたまるか。
 一進一退のゲームが続くが、最初にサービスをとった僕が常にリードをしていて、ついに5−4まで辿り着く。
 最初の一球からすべて全身全霊をこめて対処していたので、この時点で完全に息があがっていたのだけれど、執念で立ち向かっていき、なんと、ついにサービスをブレイクして6−4で勝ってしまったではありませんか。
 あり得ない事態にまわりもびっくりしていたが、いちばんびっくりしていたのはこの僕だったろう。
 コーチのアドバイスは間違っていなかった。「気合いです」「この初戦が、決勝戦のつもりで挑むことです」。その通りでした。技術も戦略も、関係なかったです。



▼隣りのコートでは、息子の幼馴染みのO内くんが試合をしている。
 先日のさいたま市のシングルス大会で僕と同じブロックになって、僕が負けた相手をあっさり倒して優勝してしまった男の子だ。
 1試合目は老練なテクニックを持つハッシーに負けてしまったが、2試合目は順調にポイントを稼いでいる。
 ところが、その途中でパシッといい音をさせてガットを切ってしまう。
 おいおい、そのガットって、先月張り替えたばかりのプロハリケーンツアーじゃないかよ。1ヶ月もたたずにポリガットを切るって、いったいどんだけガットに負担をかけてるんだ!
 このO内くんは、明日の朝いちでうちの息子と組んでさいたま市のダブルス大会に参戦することになっているので、大急ぎでコーチにガット張りを頼むが、スクールにはプロハリケーンはもとより、ポリガットが1本もないという。
 どうすんだよ。
 このO内くんはラケットを1本しか持っていないので、とりあえず少しでもプロハリケーンに近い感触のガットを張ってもらうことにして(って、無理だよな)、あとはスクールにある試打ラケットを借りて試合を続けることに。
 頼むから、予備のラケットぐらい買ってくれよ。



 結局、このO内くんは、2試合目は勝つが、3試合目で対戦したシコラーキングのI井ちゃんに負けて、決勝トーナメント進出は逃したのだった。
 そっちのブロックはな、こっちのブロックよりよっぽど楽なブロックだったんだぞ。きっちり勝てよな。



▼1試合分の休みが入ってから、Bさんを相手の2戦目が始まる。
 このBさんのプレイは、これといって際立った特徴はないのだけれど、対戦した相手はかたはしから負けていってしまう。要するに、とってもうまい人なのだ。
 こちらのサービスから始まり、まずはなんとかサービスキープ。
 そして、リターンとなるのだけれど、なんの変哲もなさそうなファーストサーブにまったく対処することができず、あっと言う間に1−1と追いつかれてしまう。
 続くサービスもなんとかキープして2−1。
 そして、再びBさんのファーストサーブを受けるのだけれど、どうもうまくタイミングがあわない。
 どうもこのファーストサービス、見た目よりも速いようなのだ。そして、バウンドしてから伸びてくるようなのだ。それで振り遅れて、ちゃんとリターンできないようなのだ。
 試しに、それまでよりも3歩ほども後ろに下がって受けてみると、そこでちょうどタイミングがあうということが判明。
 そんなに後ろから思いっ切り打ったところであまり効果はないだろうけれど、グリグリのドライブスピンをかけて強引に攻撃を仕掛け、そこから前まで詰めてみたりする。距離がありすぎて無理かと思ったのだけれど、けっこう甘いボールが返ってきたりして、それを空中で捉えて打ち込んだりもできる。
 だけど、これって、むちゃくちゃ体力を消耗するような気がするんですけど。
 試合が始まる前は、おそらく一方的にやられておしまいとなるのだろうと予想していたのだけれど、なんとなんと、必死にくらいついて、まったくゲーム差が生じない展開となっていく。
 次の試合のことなんか考えずに、とにかく必死に走り回ってボールを追いかけ(技術をカバーするこの必死さしか、僕のとりえはないのですから)、食らいついて食らいついて、ついに5−5まで辿り着くが、ついに力及ばず5−6で負けてしまう。
 負けたけれど、いままでは雲の上のプレイヤーであったBさんにここまで食らいつくことができたのなら充分です。満足です。
 でも、死ぬほど疲れた。



▼疲労困憊して死にそうになっているというのに、休みなく3戦目がスタート。
 相手は、先月の大会で3−3まではいい勝負をしたけれど、そこで体力が尽きて3−6で負けてしまったI井さんだ(シコラーキングとは別の人)。
 先月も疲れ果てた直後に休みなしで対戦したのだけれど、今月もまったく同じ展開ではありませんか。
 でも、今回の疲れ方は、先月とは比べ物にならないぞ。完全に息があがってしまって、もう、まるっきり動きたくないもん。
 だけど、そこで頑張るのが僕のとりえなのだ。ここであっさり音を上げてしまっては、僕のとりえがなくなってしまうということなのだ。
 無理だとは思うけれど、頑張るぞ。



 無理でした。
 やっぱり無理でした。
 脳内の酸素が欠乏して、朦朧として、足元もおぼつかないような状況で、勝てるわけがありません。
 やはり、試合の前日に飲みすぎるのはやめましょう。寒い夜道を薄着でうろつきまわって風邪をひくのにも気をつけましょう。のど風邪をひくと、スポーツドリンクがやたらと喉に沁みて、ゲホゲホになります。そして、そんな状態で、試合の前に4時間も練習するのは無謀であるということをいい加減に覚えましょう。
 なんとか1ゲームはとったものの、あとはどのプレイもどのプレイもあと一歩が及ばず、次々とゲームを落としていき、ついにあとひとつ落とせば負けというところまで追い込まれ、「ゲームカウント、ワン・トゥ・ファイブ」とコールをすると…
「よしさん、よしさん、カウントが違ってますよ。まだ、ワン・トゥ・スリーですよ」
 I井さんに訂正されてしまう。
 えっ、まだそれだけしかやってないの。もう、随分と戦ったような気がしていたのだけれど。死にそうなくらい長いこと試合をやっていたような気がするのだけれど。あとひとつ負ければ、それでようやく楽になれると思っていたのに。
 いったい、どれだけ朦朧としたままゲームをやっていたのやら。
 ここで一度気合いを入れ直して、攻撃に転じる。
 思いっ切りのスライスサーブ、スピンサーブ、フラットサーブを打ち込んで、甘く返ってきたところに駆け寄ってアドサイドにスマッシュを打ち込んでポイントをゲットするという展開を3連発で決めて、ゲームカウント2−3とする。
 おおっ、まだまだゲーム差が開いてないじゃん。まだまだひっくり返せるぞ……というほど、世の中甘くはない。
 結局、2−6で負け。
 でも、試合が終わったあとで、I井さんから「怖いねえ」という言葉を引き出せた。
「完全に体力がなくなったと思ったところから、きっちりいいサービスを入れてくるからねえ。それに、以前は短いボールで前に引っ張り出せば、そこから無理に攻撃をしてミスっていたりしたけれど、スライスボールをうまく使うようになってポイントをとったり、つなぐところはきっちりつなぐというプレイもうまくなっているし。対戦するのがだんだん怖くなってきたよね」
 おお、そうなんだ。
 確かに、以前と比べて一方的に負けることがなくなって、試合を楽しめるようになってきているとは思ったけれど、上の人間から見てそういう評価を貰えるようになってきているんだ。



▼というわけで、本日は1勝2敗で予選敗退となったのですが、最初にメンバーを見たときの「一瞬で3連敗をくらって泣きながら帰るしかないんだろうな」という予想は大きくはずれて、けっこう善戦することができたのでした。
 よし、来月も頑張るぞ。
 そして、来月はもう少し反省して、せめて前日はおとなしく過ごすことにするぞ。

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