想日記●お元気ですか?
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イソノカツヲ
2006年07月10日 23:35 visibility47
先日台所で食材を探していたら、ゴロゴロ〜〜と缶が転がった。
2003年にリーグ優勝した際、サンクスで販売されていた
阪神の選手の写真がプリントされた缶コーヒー。
ワタシの一番好きな矢野さんのと、美しいフォームが好きな桧山のもの。
他にも主力選手のものがあったのだろうけど、絵柄を知らない。
発売されていた時、ワタシは入院していたからだ。
ある日入院患者のAさんが、外出許可が出たらしく
「イソノさん、阪神ファンだったよねぇ?
こないださー サンクスで選手の写真が印刷された缶コーヒーがあったよ
どれか買って来るからさ 誰のがいい?」
「わー!そんなの売ってるの?! 矢野さんの!矢野さんのお願いします!」
許可がなければ、みんな勝手に院外へ出てはいけないことになっていた。
ワタシは外出が許可されていなかったので、Aさんが 神 に見えた。
ほどなくしてサンクスの袋を下げたAさんが戻って来て、
矢野さんがマスクとレガースを付けて返球してる写真の缶コーヒーをくれた。
「ありがとう〜〜〜! あ、お金お金!いくらですか?」
「いやぁ、そんなのいいよ 日本一になれるといいよね〜」
いくら何でもタダってワケにはいかないので
外出許可がおりたら、Aさんの好きな物を買って来ることにさせてもらった。
亭主は多忙を極めていたので、とてもじゃないけど頻繁には面会に来られなかったが、
書店を巡って、週刊ベースボールの優勝特集号を探してくれた。
隅から隅まで読みふけった。台の上には矢野さんプリントの缶コーヒー。ワーイ
同室の方たちは、阪神どころか野球には無関心だったし
病に伏してる状態で、よくそんな走り回ってる雑誌を眺められるものだ、と
ワタシを不思議そうな顔で見ていたのだった。
まだワタシが外出できず、お返しもしていない内に
Aさんは、また出るから今度は誰のがいいかと言ってくれた。
「えっ いいですよ! ワタシまだ物々交換させてもらってないし」
「違うんだよ 売り切れちゃうんだよ 早くしないと」
「ゲゲッ! マジですか・・・やっぱ売れるよね・・・じゃ、じゃあ桧山!!」
「おお 桧山ね カッコイイよね じゃあ買って来るから」
ベットの脇にバットを構えたカッコイイ桧山進次郎と矢野さんの缶コーヒーが並んで
何だかとてもワクワクした。
早く退院したいなぁ。日本シリーズは家で観たいなぁ。
やっと外出できることになり、Aさんにお返ししようと思ったら
Aさんは退院することになってしまったのだった。他の患者さんに聞いた記憶がある。
「おめでとうございます〜 ちょっと待っててくださいね 何がいいですか?」
「ありがとうー ウーン・・・そうだなぁ じゃあコーラ」
「コ、コーラ?? そんなんでいいんですか? きちんとお礼したいですよ」
「ううん コーラがいいんだ」
すぐに買いに行きたかったけれど、単独で出てはいけない。
亭主が付き添わなくてはならない。
結局、ホントにコーラしかお返しが出来ないまま、Aさんは退院してしまった。
それもワタシがウトウト眠っているあいだに。お別れの挨拶もしてないのに。
缶コーヒーのおかげで俄然元気が出たから、コーラじゃとても申し訳なかった。
ワクワクして眺めていた缶コーヒーだったのに、急にショボーン。
退院も、日本シリーズのずっと後になる日にちをドクターに告げられ、
ますますショボーン。
それでも、ドクターのお許しをもらってシリーズは見ちゃったけど!
(興味のなかった患者の皆さん、数人でTV独占しちゃってスミマセンでした〜)
退院前日、整理した荷物の一番上に、Aさんのくれた缶コーヒーを詰めた。
家にたどりついてから見ると、病室で眺めていた缶コーヒーと全くの別物に感じた。
今、我が家にはたくさんの阪神グッズがあるけれど、
そのふたつの缶コーヒーだけは、飾らずにしまっている。見たくないのだ。
あの頃の自暴自棄の自分を思い出したくない、そんなところだろう。
だけど元気付けてくれたAさんのことは、有り難くて時折思い出す。
お元気ですか? 阪神もワタシも頑張ってます。
- 事務局に通報しました。
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