Jリーグが始まったころ
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waya
2006年07月26日 21:08 visibility34
このサイトでみんなの文章を読んでいたら、Jリーグがスタートする直前の、ある夜のことを思い出した。
僕は仕事で、六本木に居た。打ち合わせが長引き、夜も遅くなった。
どこかで食事でもしましょうかと、六本木の表通りから少し入った小さな店に入った。
その店は中央に、みんなで囲むような大きなテーブルがあり、そこには数人の先客が居たけれど、僕らが座るのに十分な空席はあった。「とりあえずビール」と、いくつかの肴を頼み、スタッフと雑談をしていると、その頃どこに行っても語られている話題が聞こえてきた。
野球かサッカーか
今となっては笑い話だけれど、その頃の日本は、毎夜のごとくこの議論が繰り返されていた。それは、「野球だ」という保守的な中高年のおじさん達と「サッカーだ」という若者達の、ある種の代理戦争的な議論に見て取れないこともなかった。
ああまたその話かと思った。僕は以前サッカープレーヤーだった。地元じゃあちょっとしたもんだった(笑)。だけど、僕自身は紛れもない西武ファン。でも浦和の赤いチームは応援するに決まっている。なぜならその当時僕は埼玉に住んでいたから。
僕は、彼らがなんで野球かサッカーかという二者択一で議論しているかが不思議だった。少なくとも僕はどちらも好きだ。少し(いや、だいぶ)サッカーの方を愛しているけれど、どちらか「だけ」を選ぶという考えは僕の中には無かった。僕らの隣で議論をしていたいたオジサンと若者の二人は、突然僕の方を見て、聞いた。
「あなたはどう思う?」
僕は答えた。「僕は西武ファンなんですよ」オジサンが嬉しそうな顔をする。「でも、サッカーはプレーヤーでした」と言うと、今度は若者が嬉しそう。
「で、どっちなの?」とオジサンが聞いてきたときに、その隣に座っていたオジサンが突如参加してきた、「おれは野球だよ」。
六本木でも家庭的な店はこういうことが少なくない。夜も更けてみんなが酔ってくると「みんなともだち」になってくる。そして隣の話題にも普通に参加してくる。
それまで連れのオジサンと1対1の戦いをしていた若者は、突然不利になった。敵がいきなり倍になったことと、後から参加してきたオジサンがかなり酔っていたことで。
「助けてください」という目をして若者は僕の方を見たけれど、面白そうだから放っておいたら、酔った方のオジサンは、敵の旗色が悪いと見てどんどん調子に乗ってきた。
そろそろ助けてあげようなかぁと思ったとき、ガラリと店のドアが開き、大柄な若者が数人入ってきた。
ん?見たことあるぞ。ん?黄色?
後から入ってきた若者達はその大きなテーブルの空席に座った。さっきのオジサンは、ますますエスカレートし、野球を礼讃し、サッカーを罵倒し始めた。
そのとき、後から入ってきた黄色い服を着た若者が、そのオジサンに向かって「ちょっといいですか」と、声をかけた。彼は多分酔ったオジサンの罵倒に耐えられなかったのだと思う。
まだビールも飲んでいないのに、その若者はいきなり熱く語り出した。
僕はそのときやっと思い出した。「日立の連中だ」。
後から入ってきた若者は、当時はまだ日立製作所サッカー部、今は柏レイソルというチームのプレイヤーだった。
このあと、どうなったかはナイショ。
誰がこれを読むか分からないから(笑)。
でも、ヒントをひとつだけ。
僕は、この夜のことを生涯忘れないと思う。
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- 事務局に通報しました。
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