【考えて走る】についての一考察


ここんとこ、おさらいが続いてます。
W杯の間からずっと書いてきたことではありますが。

今回のキーワードは、「変化」、「スペース」、「リスク」の3つ。

ゴールするためには、「変化」が必要であり、それはすなわち、
リズムや緩急の変化であったり、ダイレクトプレイであったり、
数的優位を作ることであると解いてきた。
要は、相手の予測の裏や逆をついたり、相手の間に合わない「スピード」で、
ボールを決定的な場所へ運ぶ、ということである。

それが「チャンス」を作り出すということであり、
「決定機」とも呼ばれるものになる。

試合が始まったらタイムアウトもなく、交代も3人しか認められないサッカーは、
プレイの切れ間もなく連続性のある攻守一体のスポーツという意味でも、
監督ではなく選手自身が判断していく比重が極めて高いスポーツだと言われる。
それがオシムの言う「考えて走れ」にも通ずるところだ。

敢えて言えば、チャンスを作り出すところまでは、
普段のトレーニングの積み重ねから、
監督が出来る仕事の範囲であると言っていい。
(作った後の決め方の問題(メンタル・技術)が今の日本代表の最弱と言われる部分になる)
守備に関して言えば、チャンスを作らせない防御システムを築くことは、
監督の必須の仕事でもある。

さて、「変化」について具体的なイメージを簡単に挙げれば、
ゾーンプレスをかいくぐるための1発のサイドチェンジは、
相手が狭いスペースの中で押さえ込もうとする「逆」を突くということになるし、
今も昔も単純で最も効果的なダイレクトプレイであるワンツー(壁パス)も、
一旦、相手の目線をパスの先に送らせることでリターンを受ける間を作って「裏」をかく、
ということになるだろう。
数的優位な状況であれば、ドリブルかパスかの選択肢、その組み合わせにより、
相手の判断や動き出しよりも先んじてボールを動かすことが出来る。
サイドでボールを持ったFWの外をサイドバックがクロスオーバーで上がっていく、
そんな場面であれば、パスを出すか囮に使って内へドリブルで切れ込むか、
予測できても相手の間に合わない「スピード」でプレイを選択することが出来る。
(分かっていても2人は追えない、間に合わない、という単純だが効果的なプレイのこと)

基本的には、ゴールへ結びつく決定機を作り出すためには、
「スペース」(=裏・逆)を突く、ということになる。
突くということは、「スペース」を作る、ということである。
作るということは、相手の守備バランスを崩す、ということになる。
(⇒数的優位な場面が出来ることになる)

数的優位な場面を作るには、ボール保持者を追い越すなど、
ダイナミズムのある動きがないと、そうは相手の陣形が崩れない。
人を一人、あるいはボールを追い越すほどの走り込みがあってはじめて、
相手の守備者へ選択肢に対しての予測の遅れを生じさせることが出来、
相手より早い「スピード」でボールを決定的な場所に近づけることが出来る。
これが「リスク」である。

なぜリスクかと言えば考え方は単純で、11人と11人で対峙している以上、
数的優位な場面を作り出そうとすれば、自軍の何処かで、
相手の数的優位が出来ているハズ、になるからである。
実際にはポジションの流動性や個人の運動量でそれらをカバーし均衡を保つワケだが、
本来自分が埋めるべき「スペース」を捨てて相手の「スペース」へ切り込むことが、
新たな決定的な「スペース」を作り出していくことになる。

ウィンブルドンに学ぶ、の回を読み返してもらうとよく分かると思うが、
テニスでは、ウィニングショットを決めるためには角度をつけて打ち込むことになる。
そのためには、正面から打ち合うままでは「変化」は起こせない。
相手を走らせるボールを打つと、相手からも角度のついたボールが返ってくる。
自分の側にもオープンスペースが生じているのだ。
しかしその「リスク」を負わないことには、勝負には勝てない。

というワケで、「考えて走る」というオシムJapanの標語は、
1.相手を崩すためにスペースへ走り込み、
2.そのリスクを負うタイミングを見計らう
ということになる。

「考えて走る」、という意味は、言い換えれば、
「走るべきは何処かを考える」、ということである。
相手の守備を崩すためにリスクを負ってでも走り込むべき場所やタイミングを考えて動く、
そういうことだろう。

その中で、自分にも相手にもミスが出る。
ミスは必ず出る。
マラダーナでも、出る。
そこで相手のミスにはつけ込む、あるいはミスを誘発するよう仕掛けたり、
味方のミスはカバーする、ということなのである。

至極当たり前のことだが、それの繰り返しがサッカーなのだ。

















































































 

From 【Road to PK BAR】

http://wearecrazy.exblog.jp/

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