野球漫画推薦図書 第二話
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やきゅうとかげ
2011年10月18日 20:46 visibility1395
野球漫画推薦図書
(ときどき非推薦図書)
第二話
クロカン(三田紀房)
現在、週刊ヤングマガジンで「砂の栄冠」という野球漫画を連載している三田紀房。
絵の下手さを(…失礼)感じさせない魅力的なストーリー展開が持ち味の漫画家です。
主演の阿部寛はじめ長谷川京子、山下智久、長澤まさみ、新垣結衣、サエコ...という今にして思えば無闇に豪華なキャスティングでドラマ化された
「ドラゴン桜」
…が有名で、この作品のヒット後には、商業的な理由からなのか自己啓発的な内容の漫画が多くなってしまった印象がありますが、
審判視点の短編集や、スカウトを主人公とした作品など、実にシブい野球漫画をいろいろと描いている人です。
そしてこの「クロカン」は、高校野球の監督を描いた作品。
*以下、本編ラストシーンを含むネタバレが多数ありますので未読の方はご注意ください
--あらすじ--
桐野高校野球部の監督、黒木竜次(通称「クロカン」)は弱小チームを指導して5年目にはついに甲子園への出場を果たすが、その粗暴な言動の数々や、学校・OB会・後援会との確執によって甲子園での指揮を執ることなく桐野を去る。
以後、実家の豆腐屋を手伝いつつ暮らしていた黒木のもとに、桐野と同じ県内である鷲ノ森高校の野球部が訪ねてきた。
毎年、地区大会一回戦でコールド負けを喫している鷲ノ森を、なんとか一勝でもできるチームに鍛え直して欲しい...!
黒木は鷲ノ森野球部の声に応え、クロカン流の指導を開始した。
山間の静かな村、鷲ノ森。
グラウンドも雑草や石ころだらけ。道具もぼろぼろ。
思った以上の鷲ノ森の惨状に当初は頭を抱えた黒木だったが、ひとり突出した身体能力をもつ坂本を中心としてチームを立て直し、夏の甲子園予選では快進撃。
めまぐるしく変わる状況に即時対応できる黒木の采配もキレをみせ、県大会決勝では桐野高校を破って甲子園への切符を手に入れた。
ますます冴えるクロカン野球と、投打共に超高校級の坂本の活躍でこの勢いのまま優勝旗を手にするかと思われたが、準決勝では試合終了間際にまさかのエラーが重なりサヨナラ負け。
サヨナラエラーをした1年生・備前大介の心に傷を残しつつ、甲子園を去ることになった。
怪物・坂本、キャプテン浅井ら主軸がチームを去り、新チーム体制となった鷲ノ森。
しかし核となる選手がいない新生鷲ノ森は甲子園ベスト4とは思えぬ苦戦の連続となる。
全員野球で勝利を目指す鷲ノ森。彼らを待ち受けるのは更なる苦難の連続だった。
県大会前日に、老朽化した校舎が漏電により出火、全焼。
もともと生徒数が減少の一途にあった鷲ノ森高校は、校舎がなくなったことにより廃校の計画が前倒しになった。
高校も、野球部の未来もなくなることを知った部員の中には、他の強豪校への転校を考える者も出てくる。
去る者、残る者...。黒木は残った2年生と1年生あわせて16人で再び甲子園を目指す。
黒木の、時に非情とも見える様な厳しい指導により、部員たちは 大きく成長した。
エラーのトラウマを克服して新キャプテンとなった備前を中心に、精神的にもタフさを身につけた鷲ノ森野球部は果たして悲願の甲子園優勝を遂げることができるのかー。
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終始一貫して、黒木監督を追いかけたこの漫画。
高校野球ということもあって技術面・メンタル面ともに未熟な選手が多いのですが、その未熟さも把握した上で采配をとる監督が実に頼もしい。
人間的には粗野で下品なところもあり、教育関係者からはすこぶる評判が悪かったりするんですが...。
上辺だけ飾ったお仕着せのテクニックでは、勝ち進むことはできない、芯の強さを身につけろというクロカンの気概のあらわれの様です。
そして監督以外にも魅力的な登場人物がたくさん。
選手はもちろんですが、各校の監督の描写にそれぞれの指導方針が明らかに見えていて面白い。
残念なくらいに絵がヘタな作者なのにその言動がいきいきとしているから、だんだん絵が気にならなくなってきます。
漫画は絵のウマいヘタでは計れないよホント。
うん、ホント。
ホントにヘタだけど。
黒木の指導は、ひとつひとつここでは紹介しませんが、思考の軸になっている部分を少しだけ。
クロカンは言い、選手は理解します。
「考えろ。考えて、決めろ。決めたら、迷うな」
...至言だなあ。
*文中敬称は略させていただきました
- 事務局に通報しました。
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