2017:J2:1節:A:vs名古屋グランパス「開幕戦から感じた期待と不安」その2

3、戦評

数値評

評価基準

良:A~E:悪

A:岡山

攻撃評価:C
守備評価:C
采配評価:C
総合評価:C

H:名古屋

攻撃評価:B
守備評価:B
采配評価:B
総合評価:B

文章評

プレビューでの岡山のメンバー予想の中で監督が採用されたのは、型重視の布陣でした。昨季もこの拘りがありましたが、今季もこの部分はぶれていないようです。ただ、最終的には、バランス重視の布陣となりました。2澤口 雅彦のCBとしてのスタメン起用に関しては、サイドに厚みを持たせる狙いがあったのだと思います。実際に、右サイド攻撃は、活発だった事がその証明です。しかし、21加地 亮のフィジカル的問題により、クロス回数を抑えていました。加えて、中の人数と高さ共に迫力不足でクロスを躊躇っていた部分も少しはあったと思います。5渡邊 一仁のスタメンに関しては、終盤まで1失点以下に抑える狙いもあったのではないでしょうか。そして、10大竹 洋平や8石毛 秀樹の投入で、攻勢に出て勝利を狙うプランであったと思います。残念ながら24赤嶺 真吾と19片山 瑛一の怪我による欠場が響き、勝ち点こそ獲得できませんでしたが、期待の持てる内容であったと思います。20藤本 佳希に関しては、天皇杯で採用していたカウンター重視の戦術に適正が高い選手です。パスワークやポストプレーが求められる岡山の1トップで自分をどう表現していくのかというのは、今季も課題と言えるでしょう。

さて、敗因はやはりミスであることに関しては、疑いの余地はありません。しかし、20藤本 佳希の試合後のコメントから察すると距離感が重要である選手と感じます。観客席から俯瞰的にピッチを見ているとパスコースが無いわけではなかったと思われます。しかし、ボールを持っている時には、やはり選手によっては視野が狭まります。思い起こせばデビュー戦でもヒールパスを披露するなど、意外とトリッキーなプレーができる創造性がありました。つまり、天皇杯の様にカウンター狙いで3人が近い距離で残っている時に機能したことも納得できます。現状の岡山は、守備時に非常に献身的なので、前線は基本的に孤立しやすい状況にあります。チームとして、20藤本 佳希に近づきパスを呼び込むか、コーチングが出来なかった事の方が問題と言えます。

具体的には、20藤本 佳希が、17朴 亨鎮のトラップが大きくなった所をフォローした後の味方のプレーに問題があったといえます。20藤本 佳希が3櫛引 一紀を背後に受けてターンできない状況に陥っていました。しかし、パスを受ける動きをすべきと考えられる場面で、DHの5渡邊 一仁と16関戸 健二が、ポジションを上げています。この結果この2選手へのパスコースは、消滅しています。また、DFラインに3選手にも名古屋が選手がついており、奪われず寸前までパスコースがありませんでした。以上からこのシーンは、20藤本 佳希以上に、パスの選択肢を減らして、20藤本 佳希のミスを誘発させたDHの2選手の方が問題と言えるでしょう。逆にパスをこのどちらか一方のDHが受ける動きをして、パスを受けた展開によってはチャンスになっていました。何故なら3櫛引 一紀が上がった事でスペースが生まれていて、17朴 亨鎮がそのスペースへ走っていたからです。こういった積み重ねが、敗戦に繋がったと言えるでしょう。

また、TRMでも2澤口 雅彦が、20藤本 佳希と同じ様にボールを奪われて、失点してしまう事がありました。そう考えると、20藤本 佳希だけの責任ではなく、チームとしてクリアすべき課題が隠れていえるでしょう。実際に14喜山 康平、2澤口 雅彦も不味い対応などにより危険な状況を作られていました。21加地 亮に関しても2失点目に繋がるボールロストを犯してしまっています。昨季のJリーグ戦で無得点に終わってしまい、プレーも粗さが目立つとはいえ、彼だけが酷評されるのは、フェアーとは言えないでしょう。しかし、プロである以上、そういった評価を変えるためにも得点量産して、名誉挽回して頂きたいです。

そして、この試合で驚かされたのは13櫛引 政敏のフィード精度です。ゴールキックが、ペナルティエリア付近まで飛ぶキック力と精度の高さ。何より凄かったのが、一度を見せて地を這うライナー性の足元へのフィードです。ハイボール処理も安定感があり、ポジショニングも悪くなく、高いパフォーマンであったと思います。2失点こそしましたが、非常にアピールできた試合で、怪我さえなければ42試合フル出場する可能性は高まったといえます。

14喜山 康平に関しても観客席から見えていても、気付き難いパスコースに、パスを何度も通していました。故にビルトアップの面では非常に頼りなる選手と感じました。しかし、浮いたボールへの対処を誤り、11佐藤 寿人のポストバーに当たる危険なシーンを作ってしまいました。ただ、全体を通してみれば、非常にポジティブに捉える事が出来る内容であったと思います。メンタル面でも20藤本 佳希、失点に繋がるミスを犯して下を向いている時に、しっかりフォローされていました。このシーンからもキャプテンとしても自覚と責任も感じ、今後のチームを上手くまとめてくれるのでは、期待できるものであると思います。実力と精神力共に頼もしくなって帰ってきてくれたというのが、正直な感想で、これからの活躍が楽しみです。

10大竹 洋平は、テクニカルなプレーで、大きな存在感は放っていました。特に小刻みに躍動するドリブルで崩す形は、素晴らしかったです。コンディション面では、万全ではないことを考えると、切り札として今後起用していく形にはなると予想できます。フル稼働は難しいですが、ゴールとアシスト双方で期待できる素晴らしいテクニシャンと感じました。練習では見えなかった献身的な守備も光っていました。途中出場ではあったものの素晴らしい運動量でした。昨季まで2季在籍した矢島 慎也にはなかった泥臭さを備えており、チームのために戦ってくれるそのプレーには、胸を打たれました。怪我のリスクと付き合いながらシーズンにはなりますが、42試合出場を実現し、J1昇格の戦力として活躍してほしい選手です。

8石毛 秀樹の上下運動の多さは大きな武器であると思います。攻守で顔を出し、特にゴール前に入っていくプレーは、攻撃の厚み不足だった岡山の明確な弱点を補える素晴らしいプレーであったと思います。ドリブルから持ち上がる所で、奪われて危ないシーンになりかける軽率なプレーもあった点は課題です。今後は、そういった判断を良くし、攻守で重要なタスクを担う選手になって欲しいと思います。

最後に名古屋にあって、岡山に足りなかった点に関して、述べて締めたいと思います。それは、やはり局面局面の判断の速さであったと思います。失点シーンを取っても名古屋の奪う形が良かったのに対し、岡山はそういった形をなかなか作れなかった。また、ゴール前での思い切りの良さであったり、中への入っていく姿勢。こういった部分で、名古屋に後手を踏んでしまった事が、実力差と同じぐらい大きかった敗因であったと思います。それでも勝利に向かって行く、姿勢は、今季も健在であったのは、嬉しかったです。今後、高さという武器を採用するチームなど、岡山対策をしてくるチームと、名古屋みたいに自分達のスタイルで向かってくるチームに対して、どれだけ戦えるのか注目したいです。

試合評

MOM:38永井 龍(名古屋)
MIP:10大竹 洋平(岡山)
満足度:6点(10点満点)

岡山から世界へ 
To Be Continued

by 杉野 雅昭(masaaki sugino)

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