巨人の2軍ウォッチャー必読!「若い力を伸ばす読売巨人軍の補強と育成力」(大森剛)-その2

 この本の後半は,大森さんの肩書きである「育成部ディレクター」の仕事の説明です.本を読んでいて,二軍指導者の統括・スカウトも含めたフロント(背広組)と二軍指導者との連携・一軍と二軍との連携の3つが大きな役割のように思えました.

1.二軍指導者の統括
 育成の全体方針から個々の選手の情報まで,二軍の指導者全体で共有しようということのようです.以前は,二軍監督の仕事だったと思いますが,1軍に常時登録される十数名位を除くそれ以外の選手すべて(巨人なら育成も含めると70名前後)を監督が把握するというのは不可能なので,大森さんが抜擢されたということでしょう.また,フロント(背広組)の育成の考えを現場の二軍指導者全員に伝えるということも大きな仕事のように思えました.
  育成の方針の1つの例として,高卒1年目の投手は,1年目の6月~7月までは一切試合では投げさせないということが宮國を例として紹介されました.このような方針が存在することについては,舎人さんが豊富な観戦経験を元に日記で指摘されています.

2.スカウトも含めたフロント(背広組)と二軍指導者との連携
 上の話とも関係しますが,ある選手を獲得したときのスカウトも含めたフロントの意図が現場指導者に伝わらないがために,育成がうまく行かないというようなことを無くすのが目的のようです.「その1」で述べたように,性格も含めた選手の能力のすべてが数値化されているといったスカウティングの近代化も,きちんと育成の現場に伝わらなければ意味がないからでしょう.

3.一軍と二軍との連携
 一軍から「この選手を上げたい」という希望があっても,育成の途中段階であるということで
断るケースがあることが,今年の公文を例に述べられています.このあたりは,茶柱さんの公文の評価と一致していますね.2軍で左のセットアッパーとしてシーズン当初から活躍していた公文が1軍に上がったのはシーズン終盤でした
  このようなやりとりが常時行われているのなら,1軍と2軍が対等な立場になっていることを示し,画期的だと思います.

 以上の3つの他,興味を持ったポイントをいくつか紹介します.

・選手の評価
 「社会人としての自覚と責任ある行動と人間性の向上なくしては技術の向上などあり得ません.」などと大森さんは書いていますが,これについては,同意しかねます.過去の一流選手で,社会人として変な人は一杯いるからです.ただ,毎年,多数の新人選手が巨人に入ってきますが,その中で,プロ野球で長年食っていける人はわずかで,それ以外の多数の人は,普通に社会に出て第2の人生を歩まなくてはならない訳ですから,そういう人達の為には,大森さんの言うことは重要だと思います.


・選手を奮起させるための起用法
 自分で自分を戦力外と決め込んで伸び悩んでいた田中太を,イースタンの最終戦で先発させて復活させた例が紹介されています.この様子は,舎人さんがレポートしていて,田中太先発の意図を推し測っています.
 

・キャッチャーの育成について
 河野と鬼屋敷の話が出てきます.二人とも,阿部ではなく,実松や加藤に追いつこうとしている所があって,それが大森さんには不満のようです.その姿勢が2人の成長を妨げて,結果として,今年,小林をドラ1で取ることになったというニュアンスでした.しかし,「阿部を蹴落としてでものし上がる」気持ちをもってほしいという大森さんの気持ちはわかるけど,阿部は目標としては高すぎるよなあ・・

・原監督の持ち上げ
 「原監督だからできる巨人の育成術」という章があって,2軍から上げた選手を,原監督がすぐ使ってくれるのでありがたい等と,原監督を持ち上げまくっています.大森さんは,清武前GMと密接に関わって仕事をしてきた筈なので,(ある意味,清武さんをクビにした張本人の)原監督への配慮を感じます.

「原監督の持ち上げ」を除いて,全編,巨人を強くしたいという熱い思いと,選手への愛情が
感じられる本でした.大森さんが今の役職に居つづけてくれたら,巨人の育成については,希望が持てると思います.また,舎人さんや茶柱さんの詳細な2軍レポートを知っているだけに,この本は面白かったです.

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