戦力均衡を考える。

オフシーズンでドラフトも終わったので、「戦力均衡」について少し考えて見ます。元ネタの多くはDIMEさんの日記なので、きちんとした論評を読みたい方はそちらへどうぞ。 

 

1.日本球界が閉じた状況の場合。
 簡単に日本のプロ野球をA,Bの2チームと考えます。これは戦力が拮抗しているほうがやるほうも見ている方も面白いに決まっている。ただし、AとBでA の方が同じ結果でも給料がよいとする。同じことをやって給料が違えば、能力のある人ならAを目指しますね。でも、それを認めるとAのチームが強くな りすぎて、AとBの試合が面白くなくなり、客が来なくなってビジネスが成り立たなくなって最終的には 共倒れする。だから、新人選手は、自分の意思でチームは選べず、前シーズンで弱かったほうのチームが優先的に選手を選べる。これがドラフトの(特にウエー バー制の)理屈です。ドラフトにはさらに経営者側にうまみがあって、新人獲得に競争がない分、新人獲得の費用を抑えることができます。結果と して、全体の長期の繁栄のために、個人の選択の自由とより多くの収入を得る権利が失われているということです。AかBを選ぶというのは、「給与体系が同じ 会社の中の部署を選ぶのと同じ」というのは欺 瞞で、「同じ職種の会社で給料のよい方を選ぶ」というのが本当です。これは、資本主義社会において 普通の人がやっていることですが、ドラフトは全体の繁栄のために、個人の選択を規制しているのですね。でも、日本球界が閉じている限りは、これは、やむを えないシステムといえるでしょう。

 ただし、いまや日本球界は「閉じていない」ので、もはやこの理屈は通用しません。

 

2.日本球界が開いている状況の場合。

  さて、AとBでなかよくやってきた日本のプロ野球ですが、海外のチーム(MLB)に選手が いけるようになりました(とりあえず、韓国・台湾のことは考えないことにします)。MLBの方がレベルが高く給料も高い。既存の選手はもちろん、新人選手 もMLBを目指そうとします。そこで、ウエーバー制のドラトをそのまま入れたらどうなりますか?好きな球団にもいけず、収入も限られるわけですから、有能 な新人選手はMLBを目指すでしょう。ドラフトの自由枠がなくなって2年目に田沢選手の例がでてきたのは、ある意味必然でした。
 それでどうしましょう。このままの状況ならば、有望な新人選手はすべてMLBに行ってしまって、日本の野球は面白くなくなって、A,Bチームは共倒れで す。たとえ泥縄といわれようとも、MLBへ行く敷居を高くしました。すなわち、ドラフトを拒否して MLBに直接行った場合は、一定期間日本のプロ野球ではやれないようにしました。このやり方は一部で批判を浴びていますが、「全体の繁栄のために個人を犠 牲にする」というもので趣旨としてはドラフト制度と同じです。

 さて、ここで質問です。新人選手にとって、好きな球団も選べないし、収入も抑えられてしまう今のシステムをそのまま続けるなら、能力のある選手ほど MLBに行くでしょう。それでよいのですか? もちろん、だから「自由競争にしよう」というつもりも私 にはありません。現状では、MLBの経済力に日本の球団はたちうちできませんし、日本の中で一部の球団に選手が集中しても、やはりNPBの魅力が薄れて共 倒れになるからです。したがって、「ウエーバー制ドラフト」と「自由競争」の間に回答があるはずです。ただひたすら「ウエーバー制ドラフト」を礼賛し、 「ドラフトで何らかの自由枠を残そうとするのは巨人の陰謀だ」と言っているだけでは問題は解決しないのです。

 

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